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新世紀ユニオン発行のニュース

新世紀ユニオン組合費等請求事件 控訴審判決文

平成23年2月25日判決言渡 同日判決原本交付 裁判所書記官
平成22年(ネ)第3070号 組合費等請求控訴事件
 (原審 大阪地方裁判所平成21年(ワ)第7921号)

             判     決
           控訴人   ○○ ○○
           被控訴人  新世紀ユニオン


             主     文
      1 本件控訴を棄却する。            
      2 控訴費用は、控訴人の負担とする。


             事実及び理由

第1 控訴の趣旨

 1 原判決主文1項中、控訴人に71万円及びこれに対する平成21年6月18
  日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を命じた部分を取り消す。
 2 被控訴人の上記請求を棄却する。

第2 事案の概要

1 事案の要旨

  (1)被控訴人の原審での請求

    被控訴人の原審での請求は、労働組合である被控訴人が、被控訴人の組合
   員であった控訴人に対し、ア 組合規約に基づき、(ア)平成20年9月から
   平成21年1月分までの組合費1万5000円(1か月3000円の5か月
   分)、(イ)労働争議の解決に伴う拠出金71万円、(ウ)これらに対する本件
   訴状送達の日の翌日である平成21年6月18日から支払済みまで民法所定
   の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、イ 控訴人が組合費及び拠
  出金を支払わずに逃亡したことにより30万円(控訴人の転居先調査費用5
  万円、組合活動上の障害が生じた損失25万円)の損害を被ったと主張して、
  同額及びこれに対する前同様の遅延損害金の支払を求めた事案である。

(2)原審の判断

   原審は、平成20年9月分から同年11月分までの組合費9000円及び
  拠出金71万円並びにこれらに対する本件訴状送達の日の翌日である平成2
  1年6月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金
  の支払を求める限度で被控訴人の請求を認容し、その余の請求を棄却した。

(3)控訴人の不服

   上記に対し、控訴人は、原判決中、拠出金71万円及びこれに対する平成
  21年6月18日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を命じた
 部分を不服として、控訴を提起した。
   したがって、当審での審理の対象は、前記(1)ア(イ)(ウ)の請求の当否である。

2 前提事実

(1)当事者間に争いがないか、証拠により容易に認定することができる事実は、
  原判決の「事実及び理由」の第2の1(原判決2頁2行目から3頁5行目ま
  で)のとおりであるから、これを引用する(事実認定に供した証拠は引用文
  中の括弧内に記載)。

(2)ただし、原判決2頁25、末行の「弁論の前趣旨」を「弁論の全趣旨」と
  改める。

3 争点

  当審における争点は、被控訴人が、控訴人に対し、本件規約(甲3)に基づ
 き、労働争議の解決に伴う拠出金71万円の支払を求めることができるか否か
 であり、具体的には以下のとおりである。

(1)控訴人が別件訴訟の和解(甲4)で得た710万円の解決金は、本件規約
  6条7項にいう労働争議により勝ち取った慰謝料及び未払い賃金・和解金・
  解決金等に該当するか

 (2)控訴人が被控訴人(組合)に加入する旨の意思表示は、控訴人の動機の錯
  誤若しくは被控訴人の詐欺に基づくものであるか

 (3)10%の拠出金(本件規約6条7項)の相当性

 (4)控訴人が相殺において主張する自働債権(控訴人の被控訴人に対する不法
  行為による1194万円の損害賠償債権)の存否

4 争点に対する当事者の主張

(1)争点(1)(別件訴訟の解決金の性格)について
   上記に対する当事者の主張は、原判決の「事実及び理由」の2(2ド(原判
  決3頁21行目から同4頁19行目まで)のとおりであるから、これを引用
  する。
(2)争点(2)(動機の錯誤及び詐欺)について
   上記に対する当事者の主張は、動機の錯誤に関しては、原判決の「事実及
  び理由」の2(4)の(原判決5頁6行目から同18行目まで)、詐欺に関し
  ては、同(5)(原判決5頁21行目から同6頁5行目まで)のとおりである
  から、これらを引用する。

(3)争点(3)(10%の拠出金の相当性)について

 (控訴人の主張)
  ア 被控訴人が拠出金(本件規約6条7項)として請求する金額は弁護士の
   成功報酬にほぼ相当するものであり、弁護士を控訴人に紹介しただけでこ
   のような金額を請求することは、社会常識を大きく逸脱するものである。

  イ 別件訴訟の控訴審において、控訴人は、被控訴人から助言等の指導を受
   けたことは一度もなく、むしろ裁判の進行を妨害された。

  ウ 別件訴訟の第1審において控訴人は全面敗訴したが、被控訴人は、この
   とき控訴人が56万円(第1審の弁護士費用等)の支出をしても知らん顔
   をして、安易に控訴を提起するよう強く指示した。仮に、被控訴人に71
    万円の請求権があるのなら、71万円から上記金員を控除するのが当然で
    ある。

   (被控訴人の主張)
    争う。

 (4)争点(4)(控訴人がした相殺の自働債権の存否)について

   ア 上記に対する当事者の主張は、原判決の「事実及び理由」の2(6)(原
    判決6頁7行目から同21行目まで)のとおりであるから、これを引用す
    る。

   イ ただし、原判決6頁12行目の「これにより被告が被った損害は」を
     「よって、控訴人は、被控訴人に対し、不法行為に基づく損害賠償請求
    権を有している。その金額は、」と改める。

第3 当裁判所の判断

 1 争点(1)(別件訴訟の解決金の性格)の検討

 (1)控訴人の主張

   控訴人は、被控訴人の組合規約(甲3、本件規約)の6条7項(以下「本
  件条項」という。)にいう労働争議は、労働組合と使用者との間の集団的労
  働関係において発生する争議を意味し、一労働者個人と使用者との紛争ない
  し裁判は含まれないから、控訴人個人の別件訴訟は組合規約にいう労働争議
  には含まれず、したがって、別件訴訟の和解(甲4)で受領した710万円
  の解決金は、本件条項にいう労働争議により勝ち取った慰謝料及び未払い賃
  金・和解金・解決金等に当たらないと主張する。

 (2)検討

   しかし、本件規約中には、労働争議の意義を控訴人の主張のように制限す
  る規定は見あたらないばかりか、本件条項において拠出金の支払義務の主体
  は組合員個人とされていること、拠出金の支払の原因となる組合員の慰謝料、
  未払い賃金・和解金・解決金等は、むしろ組合員個人が使用者との紛争の解
  決に伴い受領することになるのが通常であると考えられること等に照らせば、
  本件条項にいう労働争議とは、集団的、個別的のいかんを問わず、広く労働
  者と使用者との間の紛争をいうと解するのが相当であり、これが集団的労働
  関係にかかる争議に限られるものとは解し難い。

   確かに、本件規約9条2項は「争議」と「法廷闘争」の語を使い分けてい
  るが、このことが、本件条項中の「労働争議」を上記のとおり解することの
  妨げとなるものではない。また、控訴人は、弁護士が代理した訴訟について
  組合が実質的に成功報酬あるいは紹介料を請求することは一種の非弁活動に
  該当するとも主張するが、本件条項が定める拠出金が、弁護士が代理した訴
  訟についての実質的な成功報酬あるいは紹介料であることを認めるに足りる
  証拠はないから、控訴人の上記主張も採用できない。

(3)小括

   以上のとおりであるから、控訴人の上記(1)の主張を採用することはでき
  ず、控訴人が別件訴訟で受領した710万円の解決金は、本件条項にいう労
  働争議により勝ち取った慰謝料及び未払い賃金・和解金・解決金等に当たる
  というべきである。

2 争点(2)(動機の錯誤及び詐欺)の検討

(1)判断の大要(原判決の引用)
   当裁判所も、原審と同様、控訴人の被控訴人に加入の意思表示に要素の錯
  誤があったとは認めるに足らず、仮に錯誤があったとしても、その錯誤は動
  機の錯誤であり、当該動機が表示されたとは認めるに足りないので、錯誤の
  主張は理由がなく、被控訴人が控訴人の加入時に控訴人を欺罔したとも認め
  られないので、詐欺の主張も理由がないと判断する。
   その理由は、錯誤に関しては、次の(2)に当裁判所の判断を付加するほか
  は、原判決の「事実及び理由」の第3の4(原判決8頁7行目から同末行ま
  で)、詐欺に関しては、同5(原判決9頁2行目から同5行目まで)のとお
  りであるから、これを引用する。

(2)当裁判所の判断(錯誤に関する付加)
   控訴人は、当審においても、被控訴人に加入することとしたのは、被控訴
  人が大阪で会社との団体交渉を行うことを約束したためである等と縷々主張
  する。
   しかし、証拠(甲1、2、6、8、乙3、14)及び弁論の全趣旨によれ
  ば、控訴人は、被控訴人に加入後、当初は内容証明郵便等により、懲戒解雇
  を受けた後は被控訴人から紹介を受けた弁護士を代理人として従業員の地位
  確認請求訴訟(別件訴訟)を提起して、会社と争ったと認められるが、甲6
  (控訴人の被控訴人代表者宛書面)には、別件訴訟の第1審敗訴判決を受け
  た当時の控訴人の心境として、「3年間組合の指示通りに闘ったのになぜ負
  けたのか」との思いが記載されていることが認められ、これに照らせば、控
  訴人が被控訴人加入後に被控訴人から受けた指導等が、控訴人の当初の被控
  訴人への加入の動機と齟齬(そご=くいちがうこと)していたとは認め難い。
   したがって/控訴人の動機の錯誤の主張は、上記観点からしても採用する
  ことができない。

3 争点(3)(10%の拠出金の相当性)の検討(1)控訴人の主張
   控訴人は、当審において、前記第2の4(3)のとおり主張するが、これは、
  控訴人が同所で指摘する事実にかんがみると、被控訴人が本件規約中の本件
  条項に基づき別件訴訟の和解金の10%の拠出金の支払を求めることは、信
  義則に反して許されないことをいうものと解される。
   そこで、以下、検討する。

(2)認定事実

   証拠(括弧内に引用)及び弁論の全趣旨によれば、本件の経過は、以下の
  とおりと認められる。

ア 会社入社、会社との紛争、懲戒解雇等

 (ア) 控訴人は、平成16年4月、東京に本社のある○○○○株式会
  社に入社し、大阪支店に勤務していたが、平成17年2月以降、会社の
  仕事を家に持ち帰らざるを得なくなり、また4月には降格・減給処分を
  受けたことから、労働組合に加入して団体交渉を行うことを決意した(
  乙29、30)。

 (イ)控訴人は、当初、「○○○ユニオン・関西」に加入し、会社との団体
  交渉を行おうとしたが、団体交渉の場所が東京に設定され、交渉費用が
  高額になることが分かったので、同組合を脱退し、平成17年4月、被
  控訴人に加入した(甲1、乙29、30)。

 (ウ)その後、控訴人は、被控訴人の助言の下で、面談あるいは書面により
 会社との交渉を行っていたが、平成17年9月7日付をもって、会社か
  ら懲戒解雇処分を受けた(甲2、乙3、14、23)。

イ 訴訟提起、1審実質敗訴判決、2審での実質勝訴の和解成立等

 (ア) 控訴人は、平成17年9月、被控訴人から、○○○○弁護士の紹介を
  受け、同弁護士を代理人として、会社を被告として、大阪地方裁判所に、
  従業員としての地位確認、時間外手当の支払等を求める訴えを提起した。
  裁判の進行に当たり、控訴人は、○○弁護士とのやりとりや法廷に提出
  した書類については全て被控訴人に報告し、また、被控訴人代表者は、
  ○○弁護士との重要な打合せに際して控訴人に同行するなどして、控訴
  人に対する助言を与えていた(甲6、乙27の1)。

 (イ)大阪地方裁判所は、平成20年3月7日、控訴人が提起した上記の訴
  えにつき、時間外手当の請求の一部を認め、その余の請求を棄却する判
  決を言い渡した。

   そこで、控訴人は、被控訴人から、○○○○弁護士の紹介を受け、同
  弁護士を代理人として、上記判決に対する控訴を申し立てた。控訴審に
  おいても、控訴人は、○○弁護士に渡す資料等を自ら作成し、これを被
  控訴人に送付するなどしていた(甲6)。

   平成20年7月22日の控訴審第4回弁論準備手続において、上記裁
  判についての訴訟上の和解が成立した。同和解において、会社は控訴人
  にした懲戒解雇処分を撤回し、控訴人と会社は、控訴人が平成17年9
  月7日付で会社を合意退職したことを相互に確認し、会社は控訴人に対
  し、710万円の解決金を支払うものとされ、控訴人は、後日、同解決
  金を受領した(甲4)。

 (ウ) 上記裁判の遂行に当たり、控訴人は、1審訴訟手続を依頼した○○弁
  護士に対し、着手金及び諸費用として合計55万6850円を、控訴審
  訴訟手続を依頼した○○弁護士に対し、着手金、報酬及び諸費用として
  合計123万1000円を支払った(乙27の1ないし3、31の1な
  いし3)。

ウ 拠出金を巡る交渉、組合脱退等

 (ア) 被控訴人は、平成20年9月3日付で、控訴人に対し、解決金710
  万円の10%に当たる71万円を支払うよう求める書面を送付した(甲5)。

   被控訴人代表者と△△○○(以下「△△」という。同人と控訴人の関
  係の詳細は不明であるが、乙29、30によれば両名は事実上の夫婦の
  関係にあると推認される。)は、平成20年9月9日、控訴人が支払う
  べき組合拠出金について話し合いをした。このとき、△△は、控訴審で
  の解決金620万円(解決金の額は前記のとおり710万円であるが、
  △△はこれから控訴審の報酬90万円[乙31の3]を控除した額を考
  えていたと思われる。)から1審に要した諸費用を差し引いた額を支払
  いたいと申し出た。これに対し、被控訴人代表者は1審で敗訴したこと
  から、解決金710万円から1審の弁護士に支払った着手金と控訴審の
   弁護士に支払った成功報酬を控除した額の10%を支払うよう譲歩した
  ものの、最終的な合意には至らなかった。

   被控訴人代表者においては、上記話し合いで、控訴人が被控訴人代表
  者の譲歩案を了承したと認識していたにもかかわらず、その後も控訴人
  が拠出金の支払をしなかったので、同年10月3日付で、控訴人に対し、
  同月末日までに拠出金71万円を支払うことを求める書面を送付した。
  (以上につき、甲5、6)

 (イ)控訴人は、平成20年11月に被控訴人から脱退したが、平成20年
    9月から同年11月までの組合費の支払をしていなかった。

(3)検討

 ア 解決金の10%に相当する拠出金は社会常識を大きく逸脱するか
   控訴人は、被控訴人が弁護士を控訴人に紹介しただけで解決金の10%
  に相当する拠出金を請求することは、社会常識を大きく逸脱すると主張す
  る。

   しかし、控訴人は、拠出金の支払義務を定めた本件規約を了承して被控
  訴人に加入したと認められるばかりか、甲3(本件規約)及び弁論の全趣
  旨によれば、本件規約が定める拠出金は、被控訴人に加入した組合員の労
  働争議(裁判を含む)に被控訴人が援助、助言を与えることを前提に、被
  控訴人組織の維持のため、組合員の得た利益の一部を組合員が拠出するこ
  とを義務付けたものと認められ、単に弁護士を紹介したことのみをもって
  その拠出が義務付けられていると認めることはできない。
  それゆえ、控訴人の上記主張は採用することができない。

 イ 被控訴人の援助、助言が不十分であり、むしろ裁判の進行を妨害したか
   控訴人は、裁判手続を含む会社との紛争の過程において、被控訴人の援
  助、助言が不十分であり、特に、控訴審手続においては被控訴人の援助、
  助言を受けたことはなく、むしろ裁判の進行を妨害されたとまで主張する。

  しかし、被控訴人の控訴人に対する援助、助言は、裁判手続についての
  み行われるものではなく、現に、控訴人は、裁判提起の以前においても、
  被控訴人の助言の下で会社との面談、交渉を行っていたと認められること
  は、前記(2)ア(ウ)で認定したとおりである。そして、紛争が裁判の場に持
  ち込まれた以後は、弁護士が主体となってその手続を遂行すると考えられ
  るものの、被控訴人がこの段階に至っても控訴人に対する助言、指導を継
  続していたことも、前記(2)イ(ア)(イ)で認定したどおりである。

  もっとも、証拠(乙8ないし11)によれば、被控訴人代表者が控訴人
  に送付したメールには、弁護士に対する控訴人の不審を誘発しかねない、
  相当性の疑わしい文言が含まれることは事実であるが、これをもって、被
  控訴人が、控訴審において、裁判の進行を妨害したとまで認めることはで
  きず、他にこのことを認めるに足りる証拠はない。

  控訴人は、本訴において、被控訴人の助言、指導に対する不満を縷々主
  張し、甲6にはこれに沿う記載も存在するが、控訴人は会社との紛争が控
  訴審で実質勝訴の和解により終結し、披控訴人から拠出金の請求を受けた
  平成20年9月の前月までは、被控訴人に対する組合費を継続して支払っ
  ていた(前記(2)イ(イ)、同ウ(イ))と認められ、これに照らせば、
  がしていた助言、指導に対しても、それなりの価値を認めていたのではな
  被控訴人いかと推認される。
  したがって、控訴人の上記主張も、直ちに採用できない。

ウ まとめ

   以上によれば、被控訴人は、控訴人が被控訴人に加入して会社との労働
  紛争を継続する過程で、控訴人に対し、労働組合としての援助、助言を与
  えてきたと認められるから、被控訴人が本件規約に基づいて拠出金の支払
  を求めることが信義則に反して許されないとはいえない。
  そして、被控訴人が拠出金の請求をするに当たっては、予め控訴人に通
  知した上、△△との交渉を経ていることは、前記(2)ウ(ア)で認定したとお
  りであり、このことからすれば、拠出金の請求の過程においても、被控訴
  人に信義則に反する点があったと認めることはできない。

 (4)小括
   以上によれば、控訴人が被控訴人の拠出金の請求が信義則に反するとして
  上げる点はいずれも理由がなく、本件全証拠を検討しても、被控訴人の同請
  求が信義則に反するとする点は見出し難い。また、他に本件規約が定める拠
  出金の相当性を疑うべき事情も見あたらない。、
  よって、争点(3)についての控訴人の主張は、採用することができない。

 4 争点(4)(控訴人がした相殺の自働債権の存否)の検討

 (1)当裁判所も、原審と同様、控訴人が相殺の自働債権として主張する不法行
  為に基づく損害賠償請求権は、その存在を認めるに足りないと判断する。
 (2)その理由は、原判決の「事実及び理由」の第3の6(原判決9頁7行目か
  ら同12行目まで)のとおりであるから、これを引用する。

 5 結論

 (1)以上によれば、控訴人は、被控訴人に対し、本件条項の定めに従い、会社
  との和解により得た710万円の解決金の10%に相当する71万円の拠出
  金の支払義務を負うと認められる。

 (2)そうすると、被控訴人の請求のうち拠出金71万円及びこれに対する本件
  訴状の送達の日の翌日である平成21年6月18日かち支払済みまで年5分
  の割合による遅延損害金の支払を求める部分は理由があるから認容すべきで
  あり、これと同旨の原判決は相当である。

 (3)よって、本件控訴は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決
  する。

(平成23年1月14日口頭弁論終結)
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本日の拠出金裁判の高裁判決について!

2011年2月25日の「委員長のブログ」から

本日午後1時15分より、大阪高裁第73号法廷で拠出金裁判の判決言い渡しがありました。

主文は以下の通り
 1、本件控訴を棄却する。
 2、控訴費用は控訴人の負担とする。

 以上のとおり、当ユニオンが全面勝利しました。ご支援ありがとうございました。
 当ユニオンは過日の裁判官の和解提案(53万円での和解)について組合員の意見集約を行いましたが、約70%の組合員が和解に反対であったので、これを受け執行委員会で和解拒否を決定し、本日の判決となったものです。
 高裁判決は、ほぼ地裁判決を支持しています(当ホームページのニュースのページに、大阪地裁判決の重要部分を公開中)ので詳しくはこれをご覧ください。
この拠出金裁判の判決は、全国のユニオンの財政基盤としての、組合費と裁判の解決金・和解金・未払い賃金等 から10パーセントの拠出金徴集の正当性を、今回高裁が認めたものであり、画期的で意義ある判決と言えます。
 組合員・サポーターの皆さんのご支援に感謝致します。
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新世紀ユニオン拠出金等請求裁判の地裁判決文

新世紀ユニオン拠出金等請求裁判の地裁判決文の重要部分

 昨年9月10日に当ユニオン勝訴の判決が出ましたが、その後、被告が控訴し、現在大阪高裁で係争中です。判決文のうち、以下の部分を公開します。

第3 当裁判所の判断
1 争点1について
 被告が原告を脱退した時期について、原告は、被告の組合費未納を理由に被告からの脱退は認められず、原告からの除名処分があって初めて脱退の効果が生じる旨主張する。
 しかし、そもそも本件規約第8条は、組合員の脱退について、「この組合から脱退しようとする者は所定の脱退届に、理由を明記し支部長を通じて執行委員長宛届ける」と定めるのみで、組合員の脱退についてその他の要件を規程していないし、労働組合は、あくまで自発的な結合に基づく結社であるから、その脱退を組合の承認等に係らせることは認められない。
 以上によれば、前提事実(6)記載のとおり、被告が原告に脱退届けを提出した平成20年11月末までに被告は原告を脱退したと認められる。したがって、被告は原告に対し、平成20年9月から同年11月分までの3か月分の組合費合計9000円を支払う義務がある。
2 争点2について
 原告は、本件規約第6条7項に基づき、被告が別件訴訟で取得した解決金の10%の支払を求めるものであるが、前提事実及び証拠(甲6、乙4から12、17から20)によれば、被告は原告に加入後、別件訴訟を提起していること、別件訴訟が控訴審で和解により終了し、被告は同訴訟において解決全として710万円を取得したこと、被告が原告を脱退したのは別件訴訟が和解により終了した後の平成20年11月であること、別件訴訟に関し、原告は被告に対し助言をするなどの関与をしていることが認められる。以上によれば、被告は原告に対し、本件規約第6条7項に基づき、別件訴訟で取得した解決金710万円の10パーセントである71万円を支払う義務があると認められる。
 この点被告は、本件規約第6条7項の「労働争議」には裁判は含まれない旨主張するが、同条項の内容や本件規約全体の趣旨からすれば、同条項が訴訟における和解全をも対象としていることは明らかである。また、組合による組合員の裁判への支援内容が弁護士による訴訟行為と同視されない限り、組合による支援が直ちに非弁活動に当たるとは認められないところ、本件においては、原告の行為が非弁活動に該当すると認めるに足りる証拠はない。
 以上によれば、被告のこの点の主張は採用できない。
3 争点3について
 原告は、被告が組合費と拠出金を支払わずに逃亡したため、少なくとも合計30万円の損害を被った旨主張するが、本件全証拠によっても原告主張の損害の存在を認めることはできない。
 したがって、原告の上記主張は採用できない。
4 争点4について
 被告は、原告に加入する際、①被告が社会的に認知されている組合であること、大阪での団体交渉が実現すること、②交渉が不調となった場合には組合として大阪府労働委員会の調整を依頼することが可能なこと、③過去に労働委員会の資格審査を受けたことがあり、④労働争議の調整依頼の実績もあることが加入の絶対条件であり、このことは原告にも確認しているにもかかわらず、実際には上記条件は満たされていなかったとして動機の錯誤を主張する。
 しかしながら、資格審査とは、労働組合が労働組合法に規程する手続きに参与する場合、すなわち、労働委員会の労働者委員の推薦、不当労働行為の救済申し立てなどを行う場合、労働委員会が労働組合に対し労組法に規定する救済すなわち不当労働行為の救済を与える場合、労働組合が法人登記をしようとする場合などの限られた場合に労働委員会に証拠を提出して労働組合の定義及び規約の必要記載事項の規定に適合することを立証する手続きであり、労働組合がその活動の前提として資格審査を得ている必要はなく、本件において原告が被告を組合員として支援するに際し、資格審査を得ていることが必要不可欠であったとも認められないから、仮に被告に上記①から④の内容に錯誤があった
としても、その内容は要素の錯誤に当たるとは認められない。
 また、被告の主張する錯誤は、動機の錯誤であるため動機が表示される必要があるところ、上記動機が表示されたことを認めるに足りる的確な証拠はない
 したがって、被告の上記主張は、上記いずれの点からも採用することができない。
5 争点5について
 被告は、原告が「自分の組合は、大阪労働委員会の資格審査を受けたことがあり、労働争議の調整依頼の実績もある」と偽りの回答をした旨主張するが、同事実の存在を認めるに足りる的確な証拠はない。
 したがって、被告の上記主張は採用することができない。
6 争点6について
 被告は、原告の不適切な指導等により望んでもいなかった裁判闘争に強引に導かれ、正規の雇用を失い逸失利益等の損害を被った旨主張するが、本件全証拠を総合しても、被告が解雇された経緯や別件訴訟について原告の被告に対する違法行為、被告が勤務していた会社を解雇されたことと原告の行為との間の因果関係の各存在を認めることはできない。
 以上によれば、被告の上記主張は採用することができない。
7 結論
 以上によれば、本訴請求は、未払の組合費9000円と本件規約第6条7項に基づく拠出金71万円の合計71万9000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由がある。
   大阪地方裁判所第5民事部
裁判官
○ ○ ○ ○
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組合費・拠出金請求事件 その4

 当ユニオンでの組合費・拠出金請求事件についてお知らせしていますが、その後さらに審理が進み、新たに原告(当ユニオン)が準備書面(5)を提出しましたので、以下に公開します。

原告準備書面(5)
平成21年(ワ)第○○号 組合費等請求事件
原 告 新世紀ユニオン
被 告 N
2010年6月○日
原告 新世紀ユニオン 
  執行委員長 角 野  守

大阪地方裁判所 第○民事部第○係 御中

原告準備書面(5)

第1 被告の無知について
 被告準備書面(8)は原告の指導が「不法行為」であると主張する。
 被告が当ユニオン加入時には○○○○と○○○ユニオン関西との間での東京での団体交渉を合意していたのをホゴにしており、団交は難しいので書面で降格・減給と出勤停止処分の撤回を求めるほかなかったのであり、それは被告も合意していたことである。
 被告の解雇は○○○○がおこなったものであり、それがなぜ当ユニオンの不法行為となるのか理解できない。
 被告は大阪高裁における7月22日付の和解(甲第4号証)が不法行為なので和解金を返却するとでも言うのであろうか?被告は自分が合意した和解調書を忘れたのであろうか?
 被告は当ユニオンを「不法行為」と批難しながら、それによる和解金を占有して当ユニオンに拠出金を払わず逃亡したことは触れていない。利益を受けた側が損害を受けた側に「損害賠償請求権を有する」と主張しているのであるから支離滅裂で、難ぐせと言うほかない。

第2 被告の加入の経緯
 被告の当ユニオンへの加入の経緯は「このままでは解雇になるのは確実なのでお金をたくさん取って欲しい」という主旨で加入したものである。その要望にしたがって当ユニオンが誠実に書面による交渉を指導したから被告は和解金710万円を手にできたのである。
 この金額は労働裁判では決して低い金額ではない。もはや会社では働く気はないし、準看護士の資格があるので仕事はある。お金をできるだけたくさん取ってくれ、というのが被告の一貫した主張であった。
 この点については当時当ユニオンは条件の許す限り2人で被告らと対応しているので間違いない。

第3 一審敗訴の原因
 一審敗訴の原因は内容証明の内容が原因ではない。当ユニオンは降格減給について裁判所は人事権として認めるので争わないことを主張したが、被告は顧客である製薬会社の接待を「プライベートの食事会」と強弁し、訴訟の中心的対立点とした。
 ところが被告自身が部下に社内メールで、会社に隠れてスルスル退社し、こそっと接待に参加をうながしたメール(以下スルスルメール)を出していたため敗訴となったのである。一審判決文は以下のように指摘している〈原告が平成17年1月13日の接待について、A製薬会社の側で「使途不明金扱い」で費用を捻出せざるを得ないような会食であったにも関わらず、「私たちもプライベートですので皆様重々宜しくです。楽しい事は楽しいままに思い出にしたいと思います。」「噂が噂を呼ばない様、こそっとスルスル退社宜しくです。」などと記載した電子メールを部下に送信して「プライベート」であると口裏を合わせるような働きかけたことが認められる。〉
 二審直前の打ち合わせで、原告の紹介した弁護士から「接待を被告会社が公認していた事実から接待と認めたらどうか」と提案があり、控訴審では一審の「プライベートな食事会」から「接待であり、被告会社では日常的に認められていた」との主張に変更したのである。
 つまり一審敗訴の主要な原因は被告が社内メールで送った「スルスルメール」を隠していたことだと断言できる。

第4 被告の損害額
 被告は弁護士の着手金が55万6850円だと主張する。着手金が増えたのは被告が残業代の請求を後から追加したため増えたのであり、原告とは関係がない。被告はこの訴訟の拡張で数ヵ月も裁判を引き延ばし、裁判官に未払い賃金増額の狙いを見透かされ、心証を悪くしたことも一審敗因の1つと言える。
 被告は和解金710万円を手に入れ、原告への拠出金を払わず逃亡したことには触れず、弁護士着手金を大幅に上回る解決金を得ながら、また和解調書(甲第4号証)で訴訟費用は「各自の負担とする」と認めながら「損害額」と主張する被告の思考は、原告には理解できないのである。

第5 被告の「損害賠償請求権」について
 被告は会社側(○○○○○○)から平成17年9月に解雇され、平成20年7月の和解までの間の賃金額1194万円を、当ユニオンに対し請求権を有していると主張している。ところが被告が平成20年7月22日に和解した大阪高裁の和解調書(甲第4号証)の和解条項は以下のようになっている。
1.被控訴人は、控訴人に対する本件懲戒解雇処分を撤回する。
2.控訴人と被控訴人は、控訴人が平成17年9月7日付で被控訴人を合意退職したことを相互に確認する。
3.被控訴人は控訴人に対し、本件解決金として710万円の支払い義務のあることを認め、これを平成20年8月22日限り、控訴人代理人指定の下記銀行口座に振り込んで支払う。ただし、振込費用は被控訴人の負担とする。
(4~7は略)
8.訴訟費用は第一、二審とも各自の負担とする。
つまり被告自身が合意して解雇は撤回され、合意退職し、見返りに解決金が払われている。被告は一方で解雇は無かったことを認めているのに、雇用主でもない原告に解雇された期間の賃金約1194万円を請求することは理解できない事である。
 つまり被告は発生していない「未払い賃金」を原告に請求しているのである、したがって被告の「相殺の抗弁」はまったく根拠のない主張なのである。
 当ユニオンの組合規約に定められている拠出金の「支払い義務はない」という被告の主張は、大阪高裁の和解調書を基礎にしているのであるが、被告の当ユニオンへの未払い賃金約1194万円の請求は、自らの立脚点である和解調書を否定することになる。このような請求の根拠のない主張を原告は認めることはできない。
 また被告は解雇中もずっと働いていたので、当ユニオンへの月2500円の組合費を納入している。当ユニオンの組合費は収入の1%と定められている(甲第3号証)。
 自分で解雇中も収入のあったことを証明しているのに「無収入であった」などとウソの主張をしている。収入が無いと主張するなら所得証明書を添付するべきであろう。

第6 被告準備書面(7)とその証拠について
 被告は原告からのメールを証拠として多く出しているが、本事案とは関係が無いだけでなく、これらのメールは被告に送ったものではない。「TN」なる人物とやり取りしたメールの内、誘導して利用できそうな内容を保存していたものであろう。
 この証拠提出によって、なぜ氏名不詳の人物が「TN」名で当ユニオンに潜入したのか、その狙いはメールを被告の証拠として活用するためであったことが理解できるのである。
 「2ヶ月もたつのに訴状が提出されない」とメールが送られてくれば弁護士が買収される可能性を忠告するメールを送るのは当然であり、一般論として「弁護士が裏切った場合どうしたらよいのか?」とメールで質問してくれば、「大阪弁護士会の相談窓口に相談する」ことを教えるのは当然である。
 「TN」の誘導的質問に回答したメールが、なぜ別人の被告の証拠として出てくるのか?不思議である。
 被告にはいくらメールを送っても「ありがとうございます」との返信ばかりで、その内回答も無くなったので被告にはメールを送信しなくなっていたのである。
 原告は被告と、その「夫」と称する人物がこのような詐欺的な手法に熟達していることから、このコンビが労働訴訟を生業としていたのではないか?との疑念を持たざるを得ないのである。例えば、「TN」から「出勤停止中に半分ぐらいの同僚が退職に追い込まれていた」とリストを見せられた件で、原告が「会社はひそかにリストラを進めていたのではないか」と「TN」にメールを送ると、そのメールを証拠として出し「事実でもないことを立証できるはずもない事から、このようなデッチアゲで裁判を進めろという」(被告準備書面7)などと主張する道具立てに使うのである。
 被告の言う和解時の「嘘の指導」とは、この「TN」が「○○○さんの和解のことを教えてほしい」とメールで聞いてきたので知っている事を教えただけである。そのメールが保存され、しかも「嘘の指導をした」として別人である被告の証拠として、メールのやり取りの一部分が証拠として出されている。正に詐欺としか思えない。
 「TN」あるいは「○○○○」と被告とが夫婦であるとの証拠はない。なぜ偽名で当ユニオンに潜入したのかの説明もない。被告の提出している証拠はすべて「TN」の収集、もしくはねつ造したものであり信用性はない。しかもこの男の本名が○○○○であるかどうかの証拠も出されていない。
 なぜ戸籍謄本を提出しないのか理解しがたいことである。
 乙第28号証によれば、被告の月収は33万5150円であった。ところが被告が当ユニオンに申告した月収は25万円であり、組合費は月々2500円を納入していた。被告は加入の初めから原告を欺いていたことになる。

(まとめ)
 被告の主張はその多くが難ぐせと言えるものであり、拠出金や組合費の支払い請求とは関係のない主張がほとんどである。
 原告は被告らとの面談、打ち合わせの際にはできるだけ組合員の立会人を置いて誠実に対応した。したがって被告と当ユニオンの間に何の対立もなかったことの証人がいるのである。だからこそ被告は別人に送られたメールを自分に送られたメールとして証拠提出するという詐欺的手法を取るハメになったのである。
 被告は当ユニオンに加入し、当初は降格減給と出勤停止処分の撤回を求め、その後解雇になり地位確認の裁判を闘うようになった。
 しかし一審では降格理由となった接待を「プライベートな食事会」と強弁し、当ユニオンの地位確認だけを争うという指導に従わなかったため、また決定的証拠の「スルスルメール」が会社側証拠として出されたことで敗訴した。
 高裁では当ユニオンの紹介した弁護士の手腕で和解に持ち込み、被告は710万円の解決金を手にし、当ユニオンに拠出金71万円と組合費を払わず逃亡したのである。
 当ユニオンの組合規約(甲第3号証)の定める拠出金は10%であり、被告が以前加入していた○○○ユニオン関西は20%である。
 被告は、加入時にその支払いを約束し、加入書に署名・捺印したのである。(甲第1号証)
 被告にとっての誤算は、逃亡先の住所を探し出されたことである。逃亡が失敗した腹いせに、被告は嘘で固めた難ぐせの数々を並べ当ユニオンに悪罵をあびせた。
 詐欺だとか横領だと主張し、ホームページにまで難ぐせをつけた。そのあげく当ユニオンが「不法行為」をしているかの様に主張する。
 被告に対する解雇は、和解調書(甲第4号証)によってすでに撤回され、合意退職となっているのに当ユニオンに法的根拠のない金員1194万円もの請求権を主張し「その対等額において相殺する」(被告準備書面8)などと道理のない主張をしている。
 被告の欺瞞は、自分の名前で出した内容証明郵便やメールでさえ当ユニオンに責任をなすりつけていることである。しかも、これらの証拠があったから控訴審で和解できたことは都合よく忘れている。
 被告の主張の内、拠出金をめぐる主張だけは一貫している。それは「裁判は争議ではない」という詭弁で貫かれている。裁判が労働争議の戦術の1つであることは常識であり、被告の主張は詭弁である。このような詭弁で拠出金の支払いが逃れられるなら、当ユニオンのような新しい労働組合は存続できないであろう。
 判決しだいで新世紀ユニオンは解散を免れないことを原告は深刻に受け止めている。組合員の無私の精神で支えられた新世紀ユニオンが、被告の強欲から存続できないなら、多くの組合員は路頭に迷うことになる。
 新世紀ユニオンの専従は、結成時から現在に至るまで無給であり、被告の悪口雑言は自己の強欲を物差しにしたゆえの的外れと言うしかない。
 新世紀ユニオンは、年間100件以上の無料労働相談を受け、この10年間で多くの労働者を支援できたことを誇りに思っている。当ユニオンは被告の拠出金と組合費の不払いで現在組合活動を部分的に中断(現在電話相談のみとし、メール相談を中止している)せざるを得ないほどの危機的状況に陥っている。宣伝活動もこの2年間資金不足から中断している。
 ユニオンの社会的役割の重要性を考慮の上、公平な判決を切望するものである。
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組合費・拠出金請求事件 その2

 110号で組合費・拠出金請求事件についてお知らせしましたが、その後さらに審理が進み、新たに原告(当ユニオン)が準備書面(3)を提出しましたので、以下に公開します。
また、合わせて請求内容の拡張を行っていますのでこれについても公開します。

準備書面(3)全文
平成21年(ワ)第○○号 組合費等請求事件
原 告 新世紀ユニオン
被 告 N
2010年2月○日
原告 新世紀ユニオン 
   執行委員長 角 野   守

大阪地方裁判所 第○民事部第○係 御中

原告準備書面(3)

第1 はじめに
 被告準備面の(3)は、相変わらず「労働争議には裁判は含まない」などという詭弁を並べたてており被告の常識のなさを証明している。また地方労働委員会(以下地労委)の資格審査のことを被告は「資格認定」と呼び、あたかも新世紀ユニオンが労働組合法2条の要件に適合していないかのように誤った認識を表明している。しかも新世紀ユニオンが地労委の救済を受けられない労働組合であるかのようにデタラメをのべている。滑稽なことに、この「資格認定」を根拠に「動機の錯誤」であるとか「詐欺による意思表示」であるとか、根拠のない主張をなし、「組合加入を取り消す」(被告準備書面4)と主張している。
 以下に被告の主張の誤りを明らかにする。

第2 労働争議をめぐる被告の詭弁
 当ユニオンは個人加入の労働組合であり、したがって加入してくる組合員は、退職強要・解雇・減給・懲戒処分などの問題を抱えている。一般的に労働者と使用者との間に発生する争いを労働争議と呼ぶのである。個々の労働者が新世紀ユニオンに加入・団結することで個別の紛争であっても争議になるのである。
 被告主張の「一労働者個人の問題で使用者と紛争が生じても労働争議とは呼ばない」との論は完全な誤りである。近年の個別労働紛争は被告の主張ではすべて労働争議ではないことになる。もしそれが事実と仮定すると新世紀ユニオンの規約6条7項は適用対象のない規定をわざわざ定めているという辻褄の合わない事になる。実際には各個人が新世紀ユニオンに加入することで、個人の紛争が労働組合と使用者との争議になるのである。とは言え日本の裁判では形式上個人が原告となるので個別紛争としての争議が裁判闘争の戦術をとる場合、個人の裁判と現象するにすぎない。
 ストライキ闘争とか法廷闘争とは争議の中の闘争戦術を表現したものであり、これらを包括的に労働争議と呼ぶのである。したがって「法廷闘争」と「争議」を使い分けしているからと「労働争議には裁判は含まない」などという主張にはならない。被告の主張はまさしく中国、戦国時代の公孫竜の「白馬は馬に非ず」という主張と同じ詭弁なのである。
 被告は、当ユニオン入会時に「労働委員会での解決を望んだ」かのように主張している。労働委員会(地労委)は労働組合の不当労働行為に関する救済行政機関である。もし被告が言うように個別紛争が労働争議でないとすると、被告は地労委での救済資格がないことになる。つまり被告は個別労働紛争を一方では労働争議であることを認め、他方では、労働争議ではないと主張していることになる。これを世間では「自己矛盾」と呼ぶのである。

第3 被告のごまかしについて
 被告は「拠出金」を「報酬」と決めつけている。当ユニオンの組合規約(甲三号証)6条7項は組合の「活動資金」として未払い賃金・和解金・解決金等の10%を拠出する義務を定めている。「報酬」などとは規約には一切書いていないのである。組合員の義務を「報酬」であるかのように言い替えるごまかしをしているのである。

第4 「動機の錯誤」の誤りについて
 被告からも、被告の「夫」と称する氏名不詳の人物からも、入会時に「大阪労働委員会に解決を委ねる」との説明を受けたことはない。
 そもそも個別紛争が労働争議ではないと主張する者が地労委に解決を委ねるわけがない。また「お金を多く取りたい」と主張する者が地労委に解決をゆだねるわけがないのである。代理権を有する「管○○ユニオン・○○」が東京での団交で合意しているのだから不当労働行為事案ではないのである。地労委は現状回復主義であるので不当労働行為が立証できれば、それを止めることはできる。被告がなぜこのような嘘をつくのか? 地労委に対する無知ゆえの嘘なのであろう。
 被告が大阪地労委の「資格認定」を誤って理解しているので書くことにするが、管○○ユニオン・○○のように会社の役職者を組合員としている労働組合は本来労働組合法上の労働組合では無い(憲法の団結権による組合)ので資格認定が重大な意味を持つのである。
被告は以前加入していた管○○ユニオン・○○での聞きかじりの知識か、もしくは記憶違いかで誤った解釈をしているのである。
 新世紀ユニオンのように管理職を組合員の対象とはしていない(労働組合法上の労働組合の)場合、大阪地労委の資格審査は、不当労働行為についての審査が終了したあとで手続きが行われる(神戸地労委も同じ)もし資格審査に不備があれば補正を命じられるため、実際には資格審査が問題となることはないのである。つまり被告の言う「資格認定」を受けていなくても通常の労働組合は、いつでも地労委に申し立てできるのである。
 被告は当ユニオンのホームページの「セクハラ・いじめにあった時」の「あっせん、調停と表示」していることを「資格認定」とからめて「偽りの表示をして組合に加入させ」「虚偽の表示」などとデタラメな主張をしている。
 これは被告の明確な間違いであり、セクハラ問題のあっせん・調停の窓口は、各都道府県の労働省婦人少年室が相談窓口となっており、被告は無知から地労委がセクハラの相談窓口と認識している。つまり二重に錯誤し、「虚偽の表示」をしているのは被告の方なのである。

第5 「許欺」よばわりは難癖
 原告準備書は、被告が不当労働行為の意味も地労委のことも理解しないまま、当ユニオンが地労委を利用できないかのように誤認して「大阪労働委員会に手続き関与が出来る」と言ったと嘘を言っている。不当労働行為事案でもないのに言うわけがないのである。
 しかし不当労働行為があった時は当ユニオンは地労委をいつでも利用できるし、地労委の救済を受けることはできる。したがって被告の主張する「欺網行為たる虚偽の表示」など一切なく「組合加入が取り消せる」かのような主張は間違いである。
 被告の主張は解決金710万円の10%の拠出金を払いたくないため原告に難癖を付けているにすぎない。

第6 被告の結語の誤りについて
 被告準備書(3)の結語の、ありもしない「組合費の流用」は、何らの根拠も示すことなく、被告が一方的に主張していることである。したがって立証義務は被告にある。
 被告の主張のすべては無知ゆえの難癖であり、労働運動関係者なら噴飯ものの主張なのである。しかも誤った論拠で人を詐欺呼ばわりし、詭弁を並べる被告の意図は理解できない事である。我々は被告の裏に隠れている組織=政党(セクト)名については必ず明らかにするであろう。
 当ユニオンは被告に一貫して誠実に対応し、結果被告は710万円の解決金を手に入れ、そして拠出金や組合費を不払いのまま逃走した。この事実は逃れようがない。
 本訴訟の訴状が当初の住所地に送達されなかった事実で、すでに逃亡は証明されている。やむを得ず原告は被告の転居先を探すはめになった。
 新世紀ユニオンは昨年一年間で100件以上の無料労働相談を受けそれに回答し、一定の社会的役割を果たしている無党派のユニオンである。当ユニオンは結成以来約10年で合計7件の労働裁判を経験している。被告の言う安易に裁判をしているわけではない。平均年間1件に達しないのであるからユニオンの中では少ない方である。
 被告が何を持って「独裁」と言うのか書かれていないので分からない・民主的でない理由も示されていない。「動機の錯誤」とか「許欺」だとか「虚偽の表示」だとかは、被告の間違った認識であり、ただの難癖なのはすでに明らかにしたとおりである。
 被告は拠出金と組合費の踏み倒しが失敗した腹いせをし、なんとか支払いを逃れようとしているにすぎない。

第7 まとめ
 以上のように自己の無知を論拠にした被告の主張はすべて明白な誤りであり、本事案は本来証人を必要としないほど明々白々なことである。当ユニオンに偽名で潜入していた人物の証言など証拠能力は持たないのであり、その上被告の詭弁に満ちた主張と嘘は完全に論破されており、裁判官におかれましてはすみやかに結審をされるよう願うものである。
以 上

請求の趣旨拡張の申立書
平成21年(ワ)第○○号 組合費等請求事件
原 告 新世紀ユニオン
被 告 N
2010年2月○日
原告 新世紀ユニオン 
   執行委員長 角 野   守

大阪地方裁判所 第○民事部第○係 御中

請求の趣旨拡張の申立書

拡張後の請求の趣旨
1.被告は原告に対し金72万5000円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで年5%の割合による金員を支払え
2.被告は原告に対し金30万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みに至るまで年5%の割合による金員を支払え
3.訴訟費用は被告の負担とする

請求の趣旨拡張の原因
1.被告が答弁書で毎月3000円の組合費を支払っていたと主張しているので、それを受け入れることとする。
2.被告は当ユニオンの組合員として支払い義務のある組合費及び拠出金を支払わずに逃亡した。当ユニオンはそのため内容証明郵便費用と手間を要した。
 被告の転居先住所は郵便局に届けられておらず、当ユニオンは転居先を突き止めるため組合員と手分けして捜索した。原告は組合員の協力を得て何回も奈良に足を運ぶこととなった。現地までの交通費と少なくない時間を費やした。
 また転居先を突き止めたことで確認のため新住居地へ確認調査をしなければならなかった。これらの諸費用は5万円を下らない。
3.被告が組合費と拠出金を支払わず逃亡したため原告の新世紀ユニオンは財政的困難に直面し(甲15号証)宣伝費・資料費等を全額削除しなければならなくなった。
 このため100年に1度と言われるアメリカ金融危機の全世界への波及によって日本でもリストラが急増した。2009年に当ユニオンは組合員拡大の絶好の機会にも関わらず、宣伝が出来ず、他ユニオンが09年に100人以上も組合員を拡大している中で、当ユニオンは組合員拡大が出来なかった。つまり被告の不払いによる活動上の損害は何百万円にもなるが遺失利益は算出することができないので、組合活動上の障害が生じた損失として25万円を請求することとした。
 請求の拡張についてユニオン・ニュース1月号に組合員への周知と意見集約について掲載し、組合員の意見集約を行ったところ反対はゼロであり、全組合員が本訴訟の請求の拡張に賛成した。
 以上の状況を考慮して請求を拡張する。
以 上

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新世紀ユニオンの組合費、拠出金等に関する高等裁判所の判決文を掲載しました。 拠出金高裁判決

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