バブル経済の崩壊以降、新規採用予定者の内定取消をする企業が出てくるようになりました。そこには経営者が長期的計画を持って経営に取り組むのではなく、目先だけの利益を追い、行き当たりばったりの経営をしている会社が少なくないことに主な原因があります。とりわけ “リストラ時代”に突入して以降、会社経営のツケは労働者の首切りで辻褄合わせをすることが当然のようになっています。
新卒予定者の就職が内定している人は多いと思います。そこで今回は新卒者の労働契約を採りあげる事にしました。
会社の社員募集に対し、労働者が応募することは、会社に対する労働契約の締結の申し込みであり、これに対する会社の内定通知はその申し込みを承諾したことになります。つまり内定通知により法律的には「入社予定日を就労の始めとする解約権留保付労働契約」が成立することになります。
採用内定開始日より前に入社予定者を確保するため、口頭で「内々定」を出す会社も多いそうです。この「内々定」も法律的には労働契約の成立と判断されます。
この労働契約の解約権行使を意味する採用内定取消は、その理由が採用内定通知や契約書に記入されている場合や、会社と労働者との間で内定取消理由に合意があれば内定取消が認められることになります。
しかしこうした合意がない場合の採用内定取消が適法と認められるのは、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できない」事実が後で判明し、しかもそれにより採用内定を取消すことが「客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できる」(大日本印刷事件最高裁判決)場合に限られます。具体的に説明すると、学校を卒業できなかったとか、健康診断に異常があったとか、破廉恥罪を犯したなどに限られます。
尚、会社が不況を理由として内定取消をすることは、合理的・社会通念上相当と認められることは困難と考えられています。
採用内定後会社の都合による採用延期は、労働契約がすでに成立しているため入社予定日以降は賃金金額の請求権を有していることになります(民法536条第2項)。
参考までに説明すると労働基準法26条は、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合は「平均賃金の60%以上の手当てを払わなければならない」と規定しています。
この規定は60%以上を払わなければ罰金が課せられる(同法120条)との刑事処罰に関する規定であり、民事上は使用者には賃金全額の支払い義務があることを知っておいてください。
違法な採用内定の取消に対してはまず新世紀ユニオンに加入して団体交渉で解決を目指し、それでも駄目な場合裁判で地位の保全と賃金の支払いを求めることになります。この場合は損害賠償として慰謝料・弁護士費用等を請求できますから決して泣き寝入りしないでください(参考資料・日本労働弁護団「労働相談実践マニュアル」)
!!ここに掲載の広告は 当ユニオンとは一切関係ありません!!
スポンサーサイト