米証券大手のリーマン・ブラザーズが破綻し、アメリカ政府はAIGへの9兆円の公的資金を注入した。サブプライム問題を発端とした米金融危機は、信用不安となって世界中に波及し、同時株安となった。
アメリカ政府は7000億ドル(約75兆円)規模の公的資金で金融機関の不良資産を買い取る計画を発表した。
今回の金融危機は、グローバリズムの名でアメリカが進めた金融自由化、規制緩和、民営化が、自由放任の“欲望の資本主義”を極限まで促進し、結果コントロールできない巨額の投機資金が国境を越えて投下され、原油・原材料・食料を高騰させ、実体経済に打撃を与え、マネーゲームは莫大な架空資本を増殖し、経済を膨張させた。
住宅債券の証券化商品は、根拠のない格付けで信用を膨張させ、ついに破綻を招いたのである。つまりグローバリズムの下での「金融工学」と表現される資本主義の質的変化を根源とする今回の金融危機が、1930年代の大恐慌以来の連鎖的危機を生み、アメリカ経済に深刻な打撃を与えている。
しかも危機の発端となった不動産の下落は今後とも続くと見られ、アメリカ経済が当面金融危機解決に苦しむことは避けられない。
住宅バブルの崩壊は、すでに欧州に波及し始めており、アメリカ、欧州、日本が同時にマイナス成長に突入する局面を迎えている。
この危機が大恐慌へと進む可能性を見ておくべきである。なぜなら公的資金の投入は、莫大な財政赤字となり、ドル安を招きアメリカ経済が一層打撃を受けるからである。
アメリカは「反テロ戦争」を7年続けて、軍事的限界と戦略的失敗を世界にさらけ出しただけでなく、今回の金融危機で経済的にも一極支配が崩壊しつつあることをさらけ出したのである。
アメリカが覇権国として今後も強大な軍事力を維持し続けられるかは、アメリカ経済が金融危機を克服できるかどうかにかかっている。
深刻な米金融危機は、世界の各地域のアメリカ離れを一段と促し、一層のドル離れを促すことは避けられない。アメリカのバブルの崩壊が大統領選でオバマ(民主党)に有利に作用することは確実である。
オバマは経済政策として代替エネルギーの開発などに総額1500億ドル(約16兆円)を投入し、新たなる産業を育成して500万人の「グリーン雇用」を生み出す戦略を示している。いわば“息継ぎの平和”による経済建て直しである。これはマケイン(共和党)の戦争路線継続の安保重視の政策と対照的である。
現在世界中が不況下の物価高の中で今後内政重視の政策を取らざるを得なくなっている。したがって全世界的な階級矛盾の激化、労働運動の高揚が現れるであろう。
投機家の欲望が生み出した米経済の金融危機が、大恐慌へと突き進む可能性は強く、そうなれば全世界の人々は資本主義が絶対の制度ではないことを嫌でも認識することになるであろう。
真の社会主義が人々の希望となる時代を招きつつあり、同時に、アメリカの没落は多極化の時代であり、日本の対米自立の時がきていることを示しているのである。
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