日本経団連の御手洗冨士夫会長(キヤノン出身)は、1月6日の年頭記者会見で雇用対策について聞かれ「ワークシェアリングも1つの選択肢だ」との考えを示した。また8日の「労使フォーラム」でも「緊急的に時間外労働や所定労働時間を短くして、雇用を守ることを検討する企業が出てくるかもしれない」と述べています。
不況になって首切りを批判されると、財界が決まって持ち出すのが「ワークシェアリング」です。しかし、景気が回復するといつの間にか消えてしまうのが財界の「ワークシェアリング」論の特徴です。
今回御手洗が持ち出したワークシェアリング論は、彼らが派遣労働者12万4800人を解雇して、経営陣への批判が高まってきている中で出された事、とりわけ大企業がこの10年間で約32兆円(過去5年間では20兆円)も内部留保を蓄えているのに、それを1円も使わずに労働者を大量に解雇した事に批判が出ている事に対抗して出されたものであり、彼らは内部留保(利益余剰金)を雇用維持には使いたくないので、正社員の賃金や残業や労働時間をカットして雇用維持することを提案したものです。
ところで大企業の内部留保の総額は国家予算に匹敵するほど蓄積されています。労働者の賃下げ源資で雇用を維持すれば、大企業のこの内部留保はそっくり残る事になります。つまり御手洗のワークシェアリング論は、彼の強欲を自己暴露したものと言えるのです。
御手洗が社長をしていたキヤノンが、行政(大分県や大分市)から雇用名目の補助金57億円を受け取っていながら、今回非正規労働者の大量解雇を行っています。このように他の大企業も同じように雇用を生む「投資促進補助金」を受け取っています。県や市は地元に工場を建設してもらえれば雇用が生まれ、税金が入るので膨大な補助金を大企業に支出しているのに、今回の大量解雇です。これはまるで詐欺師のやり口です。
御手洗と言う人物は、経営者としての哲学も無ければ、思想もない、ただ拝金思想だけは大きい人物だと言う事が分かるのである。企業は好景気のときは、賃上げをせずせっせと内部留保を貯め込んできたのですから、解雇をする前にこの内部留保の一部を使って雇用を維持する責任が彼らにはあるのです。
経団連は「ワークシェアリング」(仕事の分かち合い)などと言いながら、内部留保を分かち合う気は一切ないのです。御手洗は「ワークシェアリング」を提案する前に、キヤノンが受け取った補助金約57億円の返還を指導するべきだったのです。仕事の分かち合いを提案するのなら、その前に内部留保の分かち合いを提案すべきだったのです。
御手洗は、経営者としての哲学を持っていないため、彼の提案する「ワークシェアリング」には哲学的・思想的な粉飾がされていません。これは彼の人格的限界です。「ワークシェアリング」を労組に提案するなら、共存・共同の思想、助け合いの思想、貧しきものは分かち合いの気持ちが大切、とでも語ればいいのに、拝金思想の持ち主には思い至らないのです。
重要なのは、家畜化した「連合」労働貴族が出てきて「ワークシェアリング論」に呼応して、労働者の賃下げへと導く事こそ警戒しなければならないのです。つまり御手洗は、09春闘対策として、「ワークシェアリング」論を持ち出した可能性が強いのである。それにしても、すぐ首相(総理)ポストを投げ出す自民党に似て、およそ“財界総理”にふさわしくない人物が経団連会長なのだから、日本の2等国への転落は避けられないと言うべきです。
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