警察庁のまとめによると、今年上半期(1~6月)の自殺者数が1万7076人に達し,過去最悪だった03年に迫るペースで増えていることが分かった。自殺者数は前年同期と比べて47%増で、現在のペースで増え続けると今年1年間で3万4000人を超えるのは確実で、03年の3万4427人を超える可能性もある。この数字が示しているのは、政府が進めてきた自殺防止の取り組みが効果を上げていないことである。政府は早急に有効な対策を取るべきだ。自殺者数を男女別でみると、男性が1万2222人女性は4854人で男性は前年同期比で6.2%増しであり、女性は同1.2%増しにとどまっている。
都道府県別で見ると多いのは東京(1569人)大阪(1057人)埼玉(971人)と都市部が多く、増加率は沖縄(51.3%)山口(30.2%)高知(21.6%)と地方で伸びている。今年に入って自殺者の急増が示しているのは、背景に昨年秋以降の不況の影響があるのは確実である。特に3月の自殺者が3084人、4月が3048人と増えているのは決算を前に倒産やリストラが増加した反映であるのは明らかである。
総務省が7月31日に発表した労働力調査によると6月の完全失業率(季節調整値)は5.4%で過去最悪の5.5%に迫る水準となっている。この失業率増加のグラフと自殺者急増のグラフが同じように右肩上がりであることは注目される点である。日本経済が不況下にあり、しかも貧富の格差が拡大し、福祉が切り捨てられて、失業が急増し「雇用破壊」と表現され、また「医療崩壊」とたとえられる野蛮な資本主義化の結果、生活に追い詰められて自殺者が急増しているのである。
それにしても平和な日本で1年間に3万4000人以上が自殺に追い詰められる社会とは、それが異状であり、人民大衆や労働者にとって生きにくい社会となっていることを示している。野蛮な搾取・収奪下の平和とは「戦争よりも悪い平和」であることを指摘しなければならない。このような「平和」は誇る事は出来ないことを知るべきである。個々の自殺の原因は、病気であったり、失業であったり、借金であったり、さまざまであるが、それは政治が高齢者を収奪の対象とし、若者に仕事を与えられず、医療の崩壊を導き自民党の長期政権の弊害が社会的弱者にしわ寄せしている結果である。
政治がアメリカの求める「改革」を叫び始めてから、日本社会は拝金思想に毒されて、格差の拡大の中で社会的弱者への思いやりを失ったのである。政治が大企業や大銀行の高収益だけを追い求めた結果、国民経済のバランスを破壊し、地方経済は疲弊し、労働者の賃下げとリストラで個人消費は縮小した。大企業と大金持ちの強欲が、日本経済を縮小再生産のサイクルへと追い込んだ事を指摘しなければならない。
政治というものは、その結果がすぐ具体的に社会に反映するものである。「雇用破壊」「医療崩壊」「少子化」「自殺の急増」が示しているのは、この間の政治が人民の為のものでなかったこと、搾取と収奪の面で厳しいものであった事の反映である。有権者(人民)は思いやりのある政治を求めているのである。
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