退職勧奨は法律的には、「使用者が労働者に対して雇用契約の合意解約を申し込んだり、あるいは合意解約の申し入れをするように誘引していること」となっています。労働者としては、これに応じる必要はありません。
この退職勧奨が法的に問題とされる退職強要になる場合は判例から、『退職勧奨の手段や方法が、社会通念上の相当性を欠くもの』とし、このような場合は違法であり、損害賠償の対象となる…とあります。
退職勧奨が違法になるかどうかの判断基準としては以下の項目があげられます。
●退職勧奨を目的とする出頭命令が繰り返されること
●退職勧奨をはっきりと拒否しているのにもかかわらず、新な退職条件を提示せずに、執拗に勧奨を行うこと
●勧奨の回数・期間などが、通常の限度を超えて、多数回・長期間にわたる場合
●勧奨対象者の自由な意思決定を妨げるような言動があり、その行為が精神的苦痛を与える場合
●退職勧奨に応じないことに対して、配置転換や降格など、合理的な理由がないのにも拘わらず、退職勧奨者に不利益となる人事を行うこと
過去の判例おいても、「労働者が退職を拒否しているのにも拘わらず、勧奨回数10数回・1回あたり20分から約2時間に及び、短期間に多数回、長期にわたり数人で囲んで行われた勧奨行為が、労働者の自由な意思決定を妨げ、心理的圧力を加えて不法に退職を強要したものとして、不法行為として使用者に対する損害賠償請求を認める」
とされています。
この判例により、違法な退職強要と認定されるには以下の項目を総合的に考慮する必要がありそうです。
〇勧奨時の言動
〇勧奨回数
〇1回あたりの時間・人数
〇暴行・脅迫・錯誤・詐欺・公序良俗違反の有無
〇勧奨の真の目的・理由
思うに、恐らくほとんどの退職勧奨行為は違法な退職強要になるのではないでしょうか。
ですから実際の裁判では、労働者が強要行為の証拠をどれだけ提出できるかがカギとなりそうです。 実際、証拠の有無によって合法か違法かの判断が左右され、どこで線引きされているかの判断基準は大変難しいようです。
最近の裁判では、企業側に追い風となる判決が下されました。「日本IBM退職勧奨事件」では、東京地裁の判決(H23.12.28)は原告敗訴(東京高裁でも控訴棄却)となっており、『面談における説明等の方法や態様につき社会通念上相当と認められる範囲を逸脱するような違法があると認められない』…とされました。退職勧奨は有効と認められています。
この判決により企業側は、よりパワーアップして規制の緩い退職勧奨と配置転換を解雇に代るリストラ手段として、フル活用し始めたのだと考えられます。
ただしこの判例によれば、『退職勧奨のための面談には応じられないことをはっきりと明確に表明し、かつ、その旨確実に認識させた段階で、初めて、それ以降の退職勧奨のための説明ないし説得活動について、任意の退職意思を形成させるための手段として、社会通念上相当な範囲を逸脱した違法なものと評価されることがあり得る、というにとどまる』
…とあります。
とすると、面談に応じられないことを明確に表明し会社側に認識させれば、その後の説得活動は違法になる…と言えることになります。したがって労働者側は、強要行為の証拠だけでなく、退職勧奨を拒否する明確な意思表示の証拠を残すことが重要となりそうです。
一般的に考えてみると、会社側は業績悪化のため人件費を削減しようとします。そのためには従業員を解雇するのが手っ取り早くて最も効果があります。
しかし正当な解雇理由がない上に、解雇は規制が厳しく、解雇した従業員からも訴訟を提起される等のリスクを伴うことからできません。そこで退職勧奨により、雇用契約の合意解約の申し入れ又は自主退職を促すようにするわけです。
しかし退職強要を行う悪質な会社は、あらゆる手段で自主退職を迫ってきます。言葉巧みに自主退職扱いにしてしまいます。その理由は、
〇解雇予告手当を払わなくてよい
〇整理解雇の4要件を満たさなくてよい
〇退職勧奨による退職条件の退職金の上乗せ等の金銭的優遇措置をしなくてよい
などがあげられます。
退職強要は事前に十分検討・準備して突然仕掛けてきます。
「もう、あなたにやってもらう仕事はない!」
「明日から会社に来なくてもいいよ!」
「辞めてもらえませんか」
「残ってもどの職場になるかわかりませんよ」
など…あらゆる言い方で迫ってきます。
心の準備をしていなければ、すぐに冷静な判断ができずに混乱してしまいます。
その混乱に乗じて、
「今すぐ返事をもらえますか?」
「(過去のミスをもちだしてきて)辞めないのなら解雇もあり得る」
「辞めないのなら大幅に給料が下がる」
「辞めないのなら配転・出向になる」
など…更に追撃してきます。
このような不意打ちを受けて混乱しないために、対処法を準備しておかなければいけません。
会社側から「辞めてくれないか?」と言われたら
「それは解雇通告ですか?」
と聞き、解雇と判明したら
「解雇通知書・解雇理由証明書をください」
と会社から書面をもらいます。
会社が「書面は出せない」と言われたら「それは労働基準法違反です」と強い態度で臨みます。
書面のない解雇は後に問題となった場合、解雇していないと平気で嘘をついてくる可能性があります。ですからこの場合は以後も会社に出勤する必要があります。
また退職勧奨と判明したら「辞めません!」とはっきり返答するのが一番いいようです。辞めないことに関する理由等を言う必要はありません。
余計な情報を流せば、そこから付け込まれる可能性があります。ですから、「辞めません!」
と強い態度で押し通すのがベストだと思われます。
また、退職勧奨をしてきたらリストラのターゲットになっていると思わなくてはいけません。
退職勧奨はいずれ退職強要になる可能性が極めて高いと思われます。
その時に備えて、常に『録音+詳細なメモ』をとり、証拠を残していかなければいけません。
それと同時にユニオンの有識者に連絡・相談し、冷静になって適切な対応・行動をしていく必要があります。
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