厚生労働省の昨年10月の毎月勤労統計調査によれば基本給などの「所定内給与」の平均は、前年同月比0.4%減の24万2153円で17ヶ月連続で減少している。これでは個人消費が縮小するばかりだと、安倍首相のお声がかりで経団連も賃上げを認める意向を示している。
政府と財界と連合の3者による「政労使協議」で賃上げの姿勢を明確にする事が決まり、経団連は会員企業に賃上げを促す文書を提出する事を決めた。
そんな動きもあって「連合」傘下の各労組もベア要求を5年ぶりに行う方向となっている。ところが提起されている賃上げ要求は「連合」も金属労協も「ベア1%以上」と言うものである。消費税が3%上がるのに1%の賃上げでは個人消費が上向くわけがない。
家畜労組は企業経営者の顔色を見るのが習い性になり、知らず知らずに自粛しているとしか思えないのである。政府も財界も賃上げを促しているのだから、遠慮せず5%賃上げ要求をすればいいのに、1%と言うのだから話にならない。
企業側の動きも労組側と同じで、朝日新聞の調査によると全国の主要100社に対して実施したアンケートによればベアを検討している企業はわずか4社に過ぎない。業績には一時金を上げるという企業が12社あるが、賃金を上げるという企業は少ないのである。
企業側も労組側も経済成長には賃上げが必要だが、個別企業としては利益確保を配慮せざるを得ないのである。消費税アップ分を下回る賃上げではデフレ解消は出来ないと断言できる。現在の消費不況は、個別企業の強欲が行き過ぎた搾取となり、国民経済を疲弊させているのである。
この現在の日本経済の行き詰まりは、強い労組を作る以外に「治療法」はないのである。行政指導や財界の誘導では賃金の傾向的低下を継続的に上向かせることは出来ないのである。強欲の資本主義が体験させた高利潤の経験は、経営者の欲望を肥大化させており、自粛など出来るものではないのである。
これが解っていたからアメリカ占領軍の戦後改革、とりわけ労働改革で強い労組を生み出すための改革が行われたのである。ところが経営者団体が労組の家畜化でこの改革の骨を抜いたことで今日の日本経済の閉塞が生まれているのである。「強い労組」が財界の階級的課題となっているのだが、それを言えない立場ないので、「政労使の合意」で行おうというのが今年の春闘なのである。
アベノミクスの特徴は、物価上昇目標を挙げたことである。賃金が上がるたびにそれを利用して、いつでも、どんな事情でも商品価格をそれよりずっと高く挙げる事が出来るなら、企業は一層大きな利潤を取り込めるので資本家階級は決して労働組合に反対しないであろう。
しかし、問題は高利潤経営を経験した個別経営者が、財界のこうした賃金アップの政労使の合意を受け入れられるのか?という疑問である。日本経済の縮小再生産の悪循環を克服するのに賃上げが必要だと総論では理解しても、個別企業の本能としての利潤追求の衝動はそれよりも大きい欲望なのである。
賃上げが総体として成功しなければ、アベノミクスは短命で終わる事になる。その時に資本家階級は資本主義の高成長には強い労組が必要なのだと思い知る事になるであろう。
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