2014年1月下旬、理化学研究所(理研)の小保方晴子博士らが「STAP細胞」、即ち、“弱酸性の状態にすると、全ての生体組織になる細胞”の作製方法を、学術雑誌Natureに発表しました。メディアも大きく取り上げたので、ご存知の方も多いでしょう。もっとも「STAP細胞」そのものより、小保方晴子氏の割烹着姿やムーミンのシールが張られた冷蔵庫などに注目が集まりましたが。
ところが「STAP細胞」の報道後、国内外の研究者から「STAP細胞」論文に対して改竄・捏造疑惑(研究不正疑惑)があがりました。そのため、理研は調査委員会を立ち上げ、調査し、
4月の最終報告で“研究不正行為があった”と結論づけました。
そして最終報告の後、小保方氏、上司の笹井副センター長が記者会見を開きました。
(1)理研と税金 理研は物理学、工学、化学、生物学、医科学などの自然科学の総合研究所で、文部科学省所轄の独立行政法人のひとつです。理研の活動費・研究費は国からの税金で賄われていて、毎年、800億円以上の税金が交付されています。税金で行われている研究が、デタラメやウソだったら、どうでしょうか?
(2)研究者が学術雑誌に発表する論文とは? 研究論文の作成手順は、①実験をする。実験の際は、どんな実験を行ったかを“実験ノート”に記録します。コンピューターには、実験のデータファイル(生データ)を保存します。②実験ノートを見ながら、生データを解析する。③解析したデータをまとめる。④データからわかったことを図や文章にし、論文にする。⑤論文を学術雑誌に投稿する。⑥投稿した論文は、審査員によって審査される。⑦審査に通れば論文は学術雑誌に掲載、通らなければ掲載されない。
つまり論文とは、実験データに基づいて作成されるものです。
(3)研究不正行為とは? 研究不正行為とは、論文のデータの改竄や捏造や他の論文からの文章の盗用などです。文部科学省も、研究不正行為を定義しています。
論文で結論づけたことは、データに基づいていなければ、でっち上げ・ウソです。
さて、理研の調査委員会は「STAP細胞の論文に、研究不正行為があった」と結論づけました。具体的な不正行為は、①論文の図が“切り張り”、つまり加工されていたこと、②STAP細胞の研究には関係のない、小保方氏の博士論文の図が使用されていたこと、でした。
小保方氏は“研究不正ではない。悪意のないミスだ”と反論していましたが、①や②の行為は、例えるなら、会社に“別の決算書から切り張りして作った決算書”“数年前の決算書”を提出したということです。こんな決算書を会社に提出したら、どうでしょうか? 笹井氏は、①や②の行為を防ぐための“実験ノートや生データの確認をしなかった。”“若山さん(山梨大学の教授)が、確認していると思っていた”と話していました。これも例えるなら、上司が“部下が決算書を作成したけれど、その決算書は他の人が確認したと思っていた。だから自分は確認しなかった”ということです。上司が、部下が作成した決算書を確認しないという事が、あるのでしょうか?
ところで「STAP」細胞はあるのか、ないのか。
論文で結論づけたことは、データに基づいていなければ、でっち上げ・ウソです。
これも例えるなら、裁判官が“あなたが、黄色いサイフを盗んだ犯人です”と判決を出したとします。でも実は、証拠写真は切り張りしてつくられていた、似ているけれど別の黄色いサイフが証拠品とされていたら、どうでしょうか?
見た目の印象、感情への訴え、肩書き、ブランド、権威ではなく、事実はどうなのか、物事の本質はどこにあるのか。個人も組織も“本質”を見失うと、大きなしっぺ返しを受けるような気がしてなりません。
参照:「STAP」細胞に関するブログ
1)難波紘二広島大学名誉教授のメールマガジンの紹介2)小保方晴子のSTAP細胞論文の疑惑