厚生労働省が2月8日発表した2015年の毎月勤労統計(速報)によると、物価の伸びを超えて賃金が上がっているかどうかを見る実質賃金指数が前年を0.9%下回り、4年連続でマイナスになった。
労働者一人平均の月間の現金給与総額は31万3,856円で伸び率は0.1%にとどまった。これに対し15年の消費者物価指数は消費税増税もあって1.0%上昇した。このため実質賃金は0.9%のマイナスとなった。
昨年の春闘での平均賃上げ率は2年連続で2%を超えたが、これは大企業だけの話で中小企業は賃上げ余力が乏しく、その上パートなどの非正規化が進み、結果平均賃金を押し下げたのである。つまり日本は未だデフレ状態を脱してはいないのである。
日本経済は消費不況であり、その原因は実質賃金がマイナスを続けている事に原因がある。これを脱するには大企業だけ賃上げしても、非正規化の下で恒常的に中小の賃下げが進むので、中小企業は昔のように春闘相場を形成できるわけがない。大企業の下請け代金への配慮が不可欠なのである。
デフレ脱却のためには、最低賃金の1,200円へのアップと、残業代の割増賃金を25%から100%に上げ、残業をさせるよりも人を雇う方が安上がりとなるようにすることが政策的に重要となる。これにより中小企業の賃金を上昇させ、消費購買力を高め、同時に企業の省力化投資を誘導すれば日本経済は成長軌道に乗るであろう。
安倍政権のデフレ対策が成果を上げていないのは第1に大企業だけの賃上げであること、第2にブラック企業の残業代の不払いを容認していること、そもそも割増率が低すぎること、第3に消費税増税を行ったこと、第4に派遣労働の自由化を進めたこと、等に原因がある。だいたいデフレ対策を言いながら規制緩和で非正規化と賃下げを進め、消費税を上げて消費購買力を削減するところに安倍政権の間違いがある。
従って今後の焦点は、安倍政権が企業サイドの補助金政策から脱し、労働者への配分を上げる政策に転ずることが重要なのである。(1)最低賃金を1,200円へ(2)時間外割増率を100%にすれば、日本経済は活力を取り戻すことになる。問題は経済界の利益代表の自公政権に、この二つの政策が取れるかどうかである。昔のように「連合」幹部に春闘相場形成力がない以上、政界・財界・労動貴族がこの二つの政策すなわち下請け・系列への価格配慮、並びに「社会の底辺に富を分配すること」に合意できるかどうかが問題なのである。
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