学部や専門を問わず、大学や研究所での研究不正やハラスメント、任期制の問題が話題になって何年も経つ。しかし一般に知られるようになったのは、ごく最近で、研究不正では理化学研究所のSTAP細胞、早稲田大学の博士論文のコピペ(コピー&ペースト)問題や京都府立医大の臨床研究の不正問題(いわゆるディオパン問題)、東京大学の加藤研究室の長年にわたる研究不正等々、メディアで報じられたからだろう。
残念ながら、どの機関も研究不正やその背後に埋もれているハラスメントや任期制の問題を追及することなく、当事者・関係者に対して形式的な処分ですませてしまった(機関が設置した対策委員会のメンバーが研究不正をしていた当事者という、冗談にもならない事実がネットで晒されるのだから、開いた口がふさがらない)。
去年の末頃からだろうか。国会議員の河野太郎氏が大学の諸問題に取り組む姿勢を示し、学生を含む大学関係者から情報を集め、取り組みをブログで報告している
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https://www.taro.org/2017/02/天下りな研究者の皆様へ.php)。
また文科省が大学の任期付職員の5年雇い止め問題に関して各大学に雇い止めの再考を促す通知を配布したり(2016/12/09付け事務連絡メール、文科省―法の趣旨に反する―)、有志で大学のハラスメント問題に関する署名集めがネットで行われている。
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https://www.change.org/p/文部科学省と各大学にアカデミックハラスメント対策を徹底し-被害者の保護とケアを最優先するよう求めます?recruiter=637429484&utm_source=share_petition&utm_medium=twitter&utm_campaign=share_twitter_responsive)
滋賀県立大学の原田英美子准教授が「トップダウン型研究不正の手法解明 -捏造・アカハラ研究室でいかに生き残るか?東北大学金属材料研究所の例から学ぶ」という論説を発表された。
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https://t.co/k6f3GAs51w)
この「東北大学金属材料研究所」の研究不正問題は、東北大の教授達のグループが前学長でもあった当該教授の不正行為を大学に告発したが、大学は不正を認めず、そのため教授達は裁判に訴えた。
一方の前学長は、研究不正を告発した教授達を“名誉毀損”で逆に裁判所に訴えた。裁判では前学長の下にいた教員が“人事や業績のなさをせまられ、不正に加担した”と陳述したが、裁判所は前学長の不正を認めず、しかし前学長が訴えた“名誉毀損”は認め、告発した教授達に慰謝料を課す判決をだした。最高裁まで争われ、この判決は確定している。
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https://sites.google.com/site/wwwforumtohoku3rd/)
研究不正行為の方法は、つまり「教授に組織ぐるみの不正の存在を指摘すると、“ポスドク(博士研究員)ふぜいが、教授が研究不正していても口出しするな”と恫喝され退職勧奨、学会参加の妨害を含む様々な嫌がらせを受けた」「このような研究室に在籍している者は共犯者となってクチをつぐむか、、、データの不正に対して疑義を呈した結果“裏切り者”として研究者コミュニティから排除されるか、、、表面化する例は非常にすくないのではないか」ということである。このようなトップダウンの研究不正は、日本の大学に蔓延している。
大学や研究所には、研究不正を遂行・隠蔽する手段として、あるいは自分の権威・権力を誇示する手段としてハラスメントをし、任期制を利用して下位の若手研究者をつぶす教授、教員しかいない。否、そういう教授や教員は稀で、殆どは真面目に研究、教育に取り組んでいるというかもしれない。しかし事実は、日本から発表される研究論文の数、質とも低下し、海外からは“日本は研究不正大国”といわれている。
(blog.goo.ne.jp/toyodang/e/c4db8101c950cb47ff5b9128114d3cec)
実際に実験し論文を書く研究者を研究界から放逐し、研究不正やハラスメントをする者ばかりが研究界に残っているのだから、当然の原因と結果である。
原田英美子氏は「それでも、きっとまだできることはあります。できるだけ多くの人に自分が経験したことを知ってもらうよう、情報提供してください。連絡先は以下の通りです」と論説を結ばれている。
自分は教授の研究不正に加担しなかったために、研究室、大学ぐるみのハラスメントにあい、研究界から放逐された。最初は教授のハラスメント現場の録音をしたり、ハラスメント行為に否定的だった研究室員達も、結局は全員が自分の身を守るために教授についた。ある者は讒言やデッチアゲをしてまで、他人を貶める。結局、自分は休職し、その休職はハラスメントで労災認定されたが、裁判では労災認定されたハラスメントは否定され、また任期更新に必要な条件をクリアしていたにもかかわらず、任期更新は認められなかった(教授や准教授、講師よりも研究業績は多かったが)。
結局、大学や研究所の研究不正、ハラスメント、任期制の問題は、大学に、裁判所に訴えても何もかわらない。煮え湯をのまされ、大学や国は頼りにならないどころか仇をなすだけである。ハラスメントに関する論説や署名活動をみても、安全な場にいる者達の不正やハラスメント問題に取り組んでいるというパフォーマンスで今更感だけしかない(といったら、いいすぎであろうか?)。