コメット歯科クリニック事件の判例は今年1月26日岐阜地裁で出された画期的判決である。同事案は職場で嫌がらせを受け、うつ病を発症して休職中に退職扱いにされた20歳代の女性(歯科技工士)が、勤務先の岐阜市のコメット歯科や上司に約1,050万円の損害賠償と従業員としての地位確認を求めた裁判である。
判決は(1)産休からの復帰に際し、不利な労働条件の変更を提案した事、(2)労働局への申告を理由に懲戒処分を行った事、(3)朝礼で暗に原告を批判する訓示をしたこと、(4)業務に必要な技工指示書を渡さなかったこと等を認定した。これらの事実による精神的負荷が疾病の原因であるとして業務起因性を認めた。
その上で判決は、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり休業する期間及びその後30日間は解雇してはならない。」と定めた労働基準法19条1項を類推適用し、本件退職扱いを無効とした。また退職日の取り扱いに付いて一貫性がないこと、休職理由該当性の有無について特段の検討もしていないことを理由に本件退職扱いに付いて不法行為の成立も認め計約500万円の支払いを命じた。
新世紀ユニオンに置いても妊娠を理由に退職強要でうつ病になり、休職切れで解雇になった例や、パワハラでうつ病になり休職切れで「自然退職」とされた小阪病院の例などがあり、先のマタハラ事案では和解が成立している。
うつ病の業務起因性が裁判で認められたら、休職切れの解雇扱いは無効となるとの判決は画期的で、この判決があるので、小阪病院が「休職切れ解雇」の通知もなしに、退職手続きを進めていた事が理解できる。特に小阪病院の場合就業規則に休職期間1年を延長できる規定があるのに、勤続25年のAさんを、延長もせず退職扱いとした。Aさんの業務起因性は明らかなので、この判例は明るいニュースである。
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