昨年10月以降の半年間で、解雇された非正規労働者の数が15万7806人になった(厚労省調べ)短期契約の派遣労働者には失業手当も支給されない例が多い。今年3月からは6ヶ月雇用見込みの派遣労働者にも失業手当が出るようになった。しかしすでに「派遣切り」になった労働者には間に合わない。
したがって仕事が見つからないため生活保護を受けることになった失業者も多いのである。これは過剰労働力を企業が解雇することで社会に負担させることであり、企業に対する批判が高まってきたのである。そこで企業が考え出したのが「ワークシェアリング」である。これは正社員の2割が過剰になると、解雇(希望退職など)すれば割増し退職金などコストが必要となる。ところが全社員の2割の賃金をカットすれば解雇は回避でき、費用もかからない。しかも景気回復にそなえて優秀な人員を手放さなくともすむメリットもある。
企業は一切負担なく「派遣切り」と「ワークシェア」で都合よく費用価格を軽減できるのである。「派遣切り」は失業者救済の費用を社会が負担し、「ワークシェア」は企業内労働者の賃下げの負担で、企業だけが負担なしで不況を乗り切れるというわけである。これは日本の企業がいかに身勝手であるかを示している。
日本経団連の法人税減税の主張は、その財源を消費税増税でまかなうのであるから、労働者・人民への負担の転嫁と言うべきだ。彼らが年金財源の国の負担増を主張しているのは、企業の年金負担を免れることを狙っているのである。
彼らは自分の財布を開くことなく、国家や社会に自分達の負担を肩代りさせて、利益の増大を計ろうとしているのだ。つまり「ワークシェア」とは、そうした利益増大策の1つであり、労働者を「仕事のわかち合い」と称して賃下げを押しつけ、企業の負担なくしてリストラと同じ効果を担うものなのである。
さらに指摘しなければならないのは、大会社の少なくない労組、すなわち家畜労組がこの「ワークシェア」を受け入れようとしていることである。非難されるべきはこの5年間で大企業は約20兆円の内部留保を蓄積している。これは家畜労組の5年間の賃上げ抑制の結果なのだが、この内部留保を企業は今回一切使わずに不況乗切を策しているのである。
何のための内部留保かと言いたい。したがって企業がこの内部留保を取り崩して不況にともなう諸費用を負担すべきだというのが我々の主張である。
今回の世界同時不況は、日本政府がアメリカの言いなりになって金融の自由化・民営化・規制緩和の政策を実行し、その結果日本の巨額の資金が海外に流出し、アメリカのカジノ経済を膨張させ、バブルの破綻を招いたのである。したがって、日本の労働者・人民には不況の責任は一切なく、投機(デリバティブ投資)で一儲け企んだ金融資本や金持ちが招いたものである。したがって景気後退の負担は本来彼らが負担すべき性質のものである。したがってまず企業が内部留保を取り崩して雇用を維持すべきであり、それなしの労働者への危機の転嫁を認めるわけにはいかない。
労働者は「ワークシェア」という、企業の身勝手な賃下げに断固反対しなければならないのである。
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