新世紀ユニオン発行のニュース

企業に対する内部告発の注意点

 グローバル化により、企業は過当競争にさらされ、どの企業も「生き残る」(つまり自分達だけは助かりたい)という野蛮な発想にかられがちである。それが数々の不祥事を招いたと言ってもよいだろう。今日、日本を代表する企業でも次々に違法行為が発覚し、市民からの糾弾を受けている。良識ある労働者ならば、そうなる前にできるだけ穏便に会社の不正を正したいと考えるだろう。それをためらわせるのは、内部告発者に対する企業のむごい報復措置である。
 過去に、内部告発は労働組合の情宣活動の一環としても利用された。しかし近年、企業内労組は労使協調の下に家畜化され、組織率も低下し、経営のチェック機能を果たしきれなくなった。変わって、ごく一部の従業員が社会の健全な発展と公益を追求する目的から、会社の内情を世間に知らせたいと願うようになった。
  しかし、隠蔽主義の企業では、労働者の本性に基づく通報ですら、密告というマイナスのイメージでしか捉えられない。けれども、公益通報者保護法の制定により、告発が保護されるべき正当な行為であると印象付けられ、企業の自浄作用を促しつつある。また、今や労働者は企業犯罪摘発の役割を担うのである。
 とはいえ、新世紀ユニオンニュース第81号では公益通報者保護法がザル法であり、日本では内部告発者の保護が不十分であると指摘している。その論拠を改めて解説することにしたい。
1.同法では、公益通報を理由とした解雇や不利益取扱いが制限されている。そのため、通報を理由としたあからさまな解雇は難しくなったと言えよう。すると、企業はそれ以外の理由をでっち上げ、通報者に報復することになる。これは、活動的な組合員への不当労働行為のケースと同様である。解雇は労働者の収入を絶つ非常に重い処置であるため、裁判で内部告発と解雇の因果関係を立証し、解雇無効や和解金を勝ち取る余地がある。
 では、解雇ではなく、降格・雑務への追いやり・出世コース外しではどうであろうか。会社側は、これらの処置が正当な人事評価に基づき、人選の合理性と業務上の必要性を満たすもの、つまり人事権の範囲内であると主張する。裁判所も専門外の会社経営には口を出せず、人事権を強く尊重する傾向にある。従って、公益通報者を保護するためには、通報者に対する人事行為は、理由を問わず禁止される方向で改正されなければならない。
2.公益通報者保護法の条文だけを読むと、法の要件を満たさないと通報は保護されないのではないかと懸念することだろう。こうした労働者の躊躇(ちゅうちょ)を生むことが、同法が内部告発抑制法と揶揄(やゆ)されるゆえんである。建前上は、同法が従来の一般法理の適用を妨げるものではなく、労働者の保護範囲を補完するものである。つまり、公益通報者保護法ではなく他の一般法理で保護される内部告発も多数あるということだ。
 刑法の名誉毀損の違法性阻却事由が「専ら公益を図る」こと、公益通報者保護法の保護要件は「不正の目的でない」こととされている。けれども、名誉毀損も「専ら公益」とまででなくとも、「不正の目的」でなければ保護された事例もある。公益通報者保護法がことさら保護範囲を広がったとは言えない。
3.外部通報には、「真実性」、「真実相当性」の要件が課されるが、この立証責任は労働者側にある。裁判で「真実性」が認められない場合、同法の要件を満たさない通報であるため、保護されない。これを満たすためには、事前に裏を取る必要がある。けれども、証拠収集時の行為については、全く規定がないので、一般法理で対処することとなる。具体的には、(1)取得した情報の機密性と財産的価値(2)取得者に当該情報の接触権限があるかどうか(3)目的・手段の正当性(4)事前に違法行為について内部是正努力を行ったか(5)収集した保管責任を果たしているかなどである。
4.同法で想定される通報先は、(1)内部(2)行政機関(3)その他マスコミ・消費者団体などが挙げられている。最も違法状態を世間に周知させ、通報後の改善を期待できるマスコミへの通報には、高難易度の要件が課されている。例えば、内部に通報すると不利益を被ったり、隠蔽されたりすることを立証しなければならない。
 これが、公益通報者保護法が、企業秘密漏洩防止法とも揶揄されるゆえんである。審議過程においても、弁護士や消費者団体から、同様の指摘が挙っていた。しかし、審議委員は法学者・消費者団体・弁護士・財界人などで構成されており、審議過程でマスコミの存在が懸念されていたため、通報が企業内部や行政機関に向かうような規定に落ち着いたものと考えられる。
 差し当たりこれから内部告発をする場合どこに通報すればよいのだろうか。
 企業内通報が功を奏するのは、内部浄化により、不正・欠陥を除去しうる環境、文化が有するという前提条件が必要である。告発しつつ、企業からの報復を免れたいのであれば、匿名で監督機関、報道機関、消費者団体への通報を考えるべきである。
 行政機関へ通報するのであれば、あらかじめ弁護士に相談しておくと、違法行為の監督機関など、適切な通報先の指南を期待できる。
 違反事項が重大かつニュース性を備えていれば、大手マスコミが扱うこともあろう。
 裁判に発展していない段階では、インターネットを用いた大衆への告発は、手段・方法の面から適切であると判断され難く、名誉毀損や信用毀損及び業務妨害で反撃されることを想定されたい。最近は表現の自由を守らない判決が出てきているので注意が必要である。
 そもそも内部告発は、公益を守り社会の健全な発展と繁栄を求めて行うものでなければならない。一方、自身の雇用を守るためにも、告発が必要なケースもある。従業員が不正を認識していながら通報をためらうと、いずれ事件として発覚し、全従業員が職を失う事例もある。
  会社の不正から目をそらすのは必ずしも得策ではない。会社の非倫理的行為に気づいたのであれば、新世紀ユニオンに相談するなど、早急に手を打つことが、自身の雇用と公益を守ることになると認識されたい。文明人は万人の最善を考えるが、野蛮人は己の最善を考える。野蛮な資本主義の下、自社の短期的利益を追求した結果が、不祥事発覚へと結びつく可能性を想定しなければならない
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