忙しいため、新聞の切り抜きが半月以上遅れていたので切り抜いていると、「しんぶん赤旗」の2月2日の記事に、「解雇の金銭解決有識者会議論」と言う小さな記事が目にとまった。この記事で安倍政権が未だに解雇の自由化を諦めていないことを知り驚いた。
記事によると、厚労省の「有識者検討会」は今年1月30日、金さえ払えば不当解雇で裁判で解雇無効とされても容易に解雇できる「解雇の金銭解決制度」について議論を始めたという。これは安倍政権が2016年日本再興戦略に「予見可能性の高い紛争解決システムの構築」として明記したことから、労働者の反対で一度は諦められていた解雇の自由化が再び導入策動が始まっているというのです。
この日の会合で厚労省は論点として以下の3点を挙げている。
(1)労働者が求めただけでなく、企業側にも認めるのかどうか
(2)通常の解雇のほか、国籍や信条等を理由とする解雇も対象に含めるのかどうか
(3)解決金の水準をどう設定するか、解決金の上限と下限を設けるべきかどうか
などの考えを示したという。
厚労省は「現行の紛争解決の仕組みは維持しつつ、選択肢を増やす」考えを強調したと報道はいう。しかし解雇の金銭解決のルールができれば現行の紛争解決の仕組みは空洞化するのは確実である。
企業側が求めれば金銭解決を認めるのであれば、労働運動活動家が真っ先に標的になるのは確実で、現行労働組合法そのものが崩れることになる。
ただでさえ労組の家畜化と非正規化でデフレ経済が深刻化しているのに、「戦後労働改革」の経済的意義はさらに空洞化することになるであろう。これは日本の国民経済への致命的打撃となるであろう。
安倍政権と経済界が狙いとするのは、現行の大企業のリストラが退職金プラス30カ月分の退職上積み金が高額なので、約150万円ぐらいで解雇を自由化し、リストラ費用を軽減しようとの狙いがある。
しかし、この解雇の金銭解決の制度が導入されると、新世紀ユニオンのような個人加入ユニオンは致命的な打撃を受けることになる。おそらく経済的に存続は不可能となるであろう。
それだけでなく国籍や信条で差別しないという憲法や労組法は空洞化する。すなわち戦後労働改革の示した労組の経済的役割の否定であるばかりか、戦後の民主主義に対する攻撃でもある。断じて認めることは出来ないのである。
たとえ裁判で労働者が違法解雇を証明して勝っても、わずかな金で解雇が合法化されるなら、誰が時間のかかる裁判等闘うであろうか?裁判で勝てば原職復帰は原則である。
これでは新世紀ユニオンのような雇用を守る労働組合の存在意義がなくなる。私の見るところ解雇の金銭解決制度の導入は、最終的にはアメリカ型の即時解雇の合法化を狙うものと言える。
厚労省が「現行の紛争解決の仕組みは維持しつつ、選択肢を増やす」と言うのはまやかしであり、最後の狙いはアメリカ式の全面的即時解雇の自由化と見た方がいい。
したがって全国の各労組・労働運動活動家は、この厚労省の解雇の「金銭解決制度の導入」策動に断固反対しなければならない。
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