(1)2008年度の世界情勢の激変の第一は、グローバリズムを旗印とした金融自由化、民営化、規制緩和のアメリカ型資本主義の破綻が明白となったことである。
ソ連崩壊後、有頂天となったアメリカ金融資本は、ドルによる一極支配をめざし、世界中を自由放任の経済へと導き、遊休貨幣を世界中から集めて投資ファンドによるマネーゲームに興じた。世界資本主義は質的に激変し、ブッシュの始めた戦争の泥沼化もあって、世界の原油は高騰した。
金融危機は、投機の波を原油・食料から各種原材料へと広げ、これらの価格上昇は実体経済に深刻な打撃を与えている。
アメリカのサブプライム債権の崩壊は、その後の米不動産価格の低下で一層金融危機を深化させ、負の連鎖は欧州にも波及し始めた。
欧米の各国政府は、公的資金の投入で危機を脱出しようとしているが決め手とならず、世界同時不況は回避しようがない局面を迎えている。
日本においても円高不況が現実的な問題となっている。再びリストラの嵐が迫っているのである。
世界資本主義は、かつて経験したことのない深刻な危機に直面しており、欧米の各国政府は巨額の公的資金の投入によって国家独占資本主義の姿を露呈している。
マネーゲームでボロもうけした連中が、今度は信用破綻で大損したので税金で穴埋めしている姿は、独占資本が国家を自分たちの私的利益のために都合よく従属させている事を自己暴露しているのである。
深刻な信用の崩壊による金融危機は、世界中の人々に資本主義がもはや最良の制度ではないことを教えているのである。
(2)2008年度の1年間に新世紀ユニオンへの労働相談件数は約500件に達し、内組合員の相談は約400件に達している。組合員の相談の急増は職場における出向や降格や減給、ハラスメント、さらには解雇といった攻撃に多くの組合員が直面していることを反映している。裁判中の事案は本年○件解決し、残りの件数は○件である。
一般の無料相談は08年度は前半に60件以上あり、後半はやや減少したが年間100件に達している。
ホームページへのアクセス数は前年を少し上回り、年間2万件を超えている。
資料入手目的での潜入も○件ほどあったが、前年に比べて減少傾向にある。これらが示しているのは新世紀ユニオンがホームページ上で公開している「リストラ対処法」ならびにニュースの内容が、広範な労働者と労働組合活動家の関心を集めており、その反映と理解しなければならない。
労働相談の中で目立つのは。ハラスメントの増加と組合の作り方に対する質問が増えていることである。新世紀ユニオンの組合員の直面している問題も、職場に仲間を増やし、支部を結成するにはどうするか?家畜労組の内部で組合の指導権を握っていくにはどうすればよいか?未組織の職場に組合を結成する秘訣は何か?今、日本の労働者は「職場活動の手引き」のようなものを必要としている。そうした局面を迎えていることを自覚せざるを得ないのである。
新世紀ユニオンは、日本の新しい労働運動を切り開き、多くの先進的な労働運動家に、リストラの対処法を公開し、労働運動の発展に貢献してきた。労働組合の作り方を教えて欲しいとの相談が増加していることは、日本の新しい労働運動の高揚の時期が近づいていることの現われと言える。
(3)今日の日本社会の特徴はモラルの崩壊である。これはバブル経済でマネーゲームや“土地ころがし”を経験したことの反映であり、子供の給食費の不払いや、企業のさまざまな偽装事件も増加している。
こうした社会の傾向は新世紀ユニオン内にも反映し、組合費の不払いや拠出金の不払いが現れている。労働組合としての新世紀ユニオンでは、組合費として月々の収入の1%と、争議で勝ち得た解決金や不払い賃金の10%の拠出金で運営している。
一部の者の身勝手な不払いでユニオンの運営が窮地に陥ることは、結果として団結を破壊し、組織を破壊するゆゆしき問題であり厳しく対応していかなければならない。
生活が苦しいのはどの組合員も同じであるのに、裁判で700万円以上の和解金を得て、ユニオンに拠出の義務のある10%の支払いを踏み倒し、逃亡することは許されない事である。労働者としては最も恥かしい行為と言うべきである。
今年度新世紀ユニオンは、組合費を滞納している組合員 名を除籍した。これらの人の再加入は原則として認めないこととする。
我々は「組合費を払わなくても組合員だ」という主張は認められない。
各組合員は年1回給与明細の写しの提出が必要となっている。これは組合員の収入を把握し、組合費の負担の平等を担保するものであり、賃金レベルを労働組合として把握するために必要な事である。
各組合員は、職場での会社の理不尽な攻撃と日常的に闘いつつ、ユニオンから送られてくる各種資料を学習して、リストラに対応する能力を各自が高めてきていることは、各組合員とのメール交換の中で実感していることである。
しかし職場での経験をニュースに投稿する活動は、まだ活発とは言えない。ホームページの改善も依然として今後の課題として残っている。
各組合員は、これまでの自己の闘いを総括し、教訓を導き出して、失敗を少なくし、闘いの中で自己を鍛え、互いに教訓を学び合って、雇用を守り、労働条件を向上させる力量を高めていかねばならない。
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