大和総研の試算によると、政府の進める「働き方改革」で労働者の所定外給与が最大8.5兆円減少する可能性があるという。(大和総研の「日本経済見通し*2017年8月」)
つまり政府の進める「残業代ゼロ法案」や裁量労働制の拡大の狙いが「働き方改革」等ではなく、時間外労働をただ働きに切り替え、目先の利潤を拡大しょうとしているだけなのである。
日本経済がデフレに陥っているのは非正規化などの「雇用の流動化」で労働者の賃金総額が縮小し、結果個人消費が縮小し、国民経済が縮小のサイクルにはまっているのであるのに、さらに時間外労働の賃金が払われないようにすれば、ますます個人消費が縮小し、デフレがひどい状態になる。
つまり政府の進める「働き方改革」が生産性を高めるため設備投資を促すのではなく、労働者の賃金部分を削減することに目的がおかれていることを指摘しなければならない。日本の労働生産性が欧米に比べて格段に低い理由である。経済学的に説明すると日本政府は絶対的剰余価値の獲得ばかりやり、生産性を高めることで相対的剰余価値を獲得する政策を放棄もしくは忘却しているということだ。
厚生労働省の2016年判の白書は日本の労働政策性が欧米と比べて極めて低いことを示している。日本の実質労働生産性は38.2ドル、これに対して、フランスは60.8ドル、ドイツは60.2ドル、アメリカは59.1ドルであった。日本の労働生産性は主要先進国中最低だった。
これは日本の財界が労働賃金を切り下げる政策ばかり追求した誤った認識の結果なのである。労働者の賃金部分は個人消費部分であり、これが縮小すると生産財生産部分も縮小する。「戦後労働改革」を作成したアメリカの学者達は、個人消費の継続的拡大を保障するため労組の権限を強める労働法制を作り、その結果日本経済は急速に復興した。
ところが日本の財界は強欲さを強め、労組の家畜化を進め、賃上げを抑制した。その結果日本経済は低成長時代から縮小の時代を迎えることとなった。労働運動が持つ国民経済の拡大のテコとしての役割を理解しない愚かさが、日本のデフレ経済を生みだしたのである。哲学的に言うと労働者と資本家の関係が「対立面の統一の関係」にあるということを日本の政策関係者が理解していないということだ。経済学的に見ると企業の利潤は生産性を高めて相対的剰余価値の拡大を目指す方がより儲かるということが分かっていないのである。
日本の企業は膨大な内部留保を蓄えており、この一部を設備投資に使うような「内部留保増税」で省力化投資を促せば日本の生産性は高まり、賃上げの源資も確保できる。強欲さゆえに労働者の賃下げしか選択肢が見えなくなった日本の財界の強欲を指摘しなければならない。
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