金融自由化、民営化、規制緩和のワシントン・コンセンサスと呼ばれる政策は、日本を格差社会にし、巨大な非正規雇用(派遣・パート・契約社員等)を産み出し、賃金レベルは低下し、野蛮な搾取化をうながした。地方・農村は疲弊し、大企業と大金持ちだけが富を独占する社会となった。
日本から流出した巨額のマネー(遊休貨幣)は投機資金となって投資ファンドのマネーゲームの資金となった。アメリカの新自由主義とは世界の富を奪い取る資本主義のことであった。この自由放任の経済が今破綻し、世界経済は収縮過程に突入した。
信用不安の広がりは世界中を株価の下落と金融危機に巻き込み、欧米の金融は機能停止状態となり不良債権は膨れ上がっている。各国政府の公的資金の投入は、ドル不安を拡大し、為替の変動が貿易の縮小を生み、世界同時不況の様相を強めている。世界資本主義は質的に激変し、日本から流出した資金が今環流している。
日本の国民経済の再建という視点で見るなら、規制緩和の政策を転換し、非正規雇用の正社員化を進め、賃金の上昇を認め、消費購買力を拡大することが重要である。
この10年間、日本の生産力は高まり、企業の収益力と内部留保は増大している。ただ分配率が低下しすぎたため、国民経済の最終消費としての個人消費が縮小し、経済が活力を失い、縮小再生産になっているのであるから、これを転換することが重要となっている。
野蛮な搾取化は、国内市場を一層縮小させ、外需への依存を強める結果となった。そして今この外需依存の経済が金融危機の中で立ち行かなくなっているのである。
世界の流れは“自由放任の経済”から“規制強化の経済”“内需拡大”に転換しつつあり、日本は公共事業中心から、太陽光発電、バイオエネルギー、風力発電、電気自動車という新エネルギー革命を目指し、新産業を育成する政策と投資を開始することと、個人消費を思い切って拡大する方向性が求められている。
内需拡大といっても道路・ダムの土木資本主義ではダメであり、雇用を生み、個人消費を拡大し、投資をうながすものであるべきだ。
建設族だけが潤う公共事業中心から環境産業・新エネルギー革命を誘導し、新しい雇用を生み、個人消費が常に拡大するよう国民経済を循環させることが求められている。正社員の拡大、非正規雇用の廃止、「同一労働・同一賃金」の実現が必要だ。
日本におけるグローバリズムは、野蛮な搾取と地方の疲弊と、資本の流出を招き、個人消費を縮小し、国民経済を疲弊させたのである。
経営者の強欲がこうした結果を招いたことは明らかである。
政府が今国会に提出した派遣法の「改正」は「日雇い派遣」を禁止しただけの中途半端な内容であり、それは野蛮な搾取制度の温存にほかならない。これでは国民経済の大転換にはつながらない。
あいかわらず残業代の未払いが多い、働くルール(労働基準法)を企業は守るべきであり、そうでなければ個人消費の拡大は進まない。
日本には道路族のような既得利益集団が形成されているため、大胆な規制強化、新エネルギー革命は進みそうもない。政治家は政治の硬直化が経済の発展方向をゆがめてきたことを反省すべきであり、国民大収奪による国民経済を疲弊させる政治を転換すべき時である。企業は労働者を犠牲にする新たなリストラをすべきではない。
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