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トランプの米新戦略をどう見るか?

 トランプ大統領の外交政策を「覇権放棄」とか「多極主義」であるかのように主張する人がいるがそれは間違いである。アメリカが「覇権放棄」とか「多極主義」を選択しているのではない。資本主義の不均等発展がアメリカの相対的弱体化と多極化を促しているのであって、トランプ政権が意識的に「覇権放棄」を進めているわけではない。

 トランプ政権が最近発表した新戦略は中国・ロシアを「既存の国際秩序への脅威となる修正主義勢力」と位置づけ、軍事的な競合への対応を最優先としている。トランプが北朝鮮を攻撃する気もないのに強硬姿勢を示し、イランを攻撃する気もないのに核開発停止の協定離脱を口にするのは、アジアと中東を武器市場とし、軍需産業のアメリカ経済を立て直すためである。

 トランプが保護貿易主義でTPPを離脱し北米自由貿易圏を解体しようとしているのは、彼の選挙基盤であるアメリカの産業資本家の利益を代表しているからであり「覇権放棄」ではない。

 今のアメリカはオバマ政権の8年間で軍事予算を削減しまくったおかげで戦争などできる状態ではない。沖縄の海兵隊ヘリは老朽化し故障ばかりだし、第7艦隊はイジ―ス艦の衝突事故を繰り返しているように訓練もまともにできていない。

 トランプは覇権を維持できる軍の再建をやろうとしているが、同時に同盟国の負担を強めようとしているのは、中ロの軍事的台頭でもはや一国で覇権を維持できないと見ているからに他ならない。

 アメリカは金融国家であるのでトランプの産業資本育成の経済政策はうまくいかない。いずれそれを悟り、保護貿易主義的政策から転換を余儀なくされるであろう。アメリカは貿易赤字を武器に貿易黒字国に国債を売り付けて、対価なく他国を収奪する道にいずれ戻らざるを得ないであろう。

 しかしこのトランプの誤りは、ロシアと中国に戦略的進出の政治空白を提供した。ロシアは中東の警察官役を手に入れ、中国はアジアから中央アジアにかけて元圏を形成する好機を得たのである。

 つまり資本主義の不均等発展がアメリカの相対的優位を消し、多極化の世界への意向を促しているが、アメリカは覇権を放棄したわけではない。軍事的な体制を立て直せば、いずれ中東とアジアでアメリカは巻き返しを開始するであろう。

 トランプ大統領は21日アフガニスタン駐留米軍を増強することを発表した。アメリカはインドとの関係を強化して中国とパキスタンの関係の同盟に対応しようとしている。

 トランプが北朝鮮攻撃に踏み切れば中国とロシアは第2次朝鮮戦争を泥沼にして、アメリカを疲弊させる戦略を選択する可能性があるので、トランプは北朝鮮の経済制裁を続ける道を選択するであろう。

 トランプの中国・ロシアへの戦略的対峙を見ればアメリカが覇権を放棄する気がないことは明らかである。相対的弱体化を同盟国の貢献によって、軍事力を増強している中国・ロシアに対坑する戦略なのであり、アメリカは決して世界の多極化を受け入れたわけではない。
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