妊娠した事を理由として解雇その他の不利益な取り扱いをすることを「男女雇用機会均等法9条3項」は禁止しています。ここでいう「不利益な取り扱い」には退職の強要も含まれます。(厚生労働省告示)しかし厚生労働省の「雇用機会均等法解釈通達」によると、不利益取り扱いがあった場合でも
(1)業務上の必要性があった場合
(2)労働者がその取扱いに同意している場合
の2つの場合には違反にならないものとしています。
この厚生労働省の「解釈通達」によって、最近は経営側が妊娠を知ると、仕事を口実に「辞めろ!」と怒鳴りつけたりする例が増えています。また妊娠を報告した女性に退職届を出させようとして来る例が増えています。
つまりこの2つの例外の厚生労働省の「解釈通達」によって妊娠を理由とした解雇の禁止の規定が空洞化しています。またこの2点の例外で経営側の「仕事を不当に口実にする」パワハラが増え、結果妊娠中にうつ病を発症する例が増えていますので注意して下さい。
新世紀ユニオンの経験によると、妊娠を理由とした解雇・退職強要についての注意点は以下のとおりです。
(イ)働いている女性が妊娠を会社に報告する場合、書面で社長あて提出(コピーを取っておく)すること。口頭で上司に報告した場合、会社社長は「妊娠を知らなかった」として、仕事を口実に退職強要してきます。
(ロ)妊娠した事を理由として解雇その他の不利益な取り扱いを受けた場合は、必ず都道府県の「男女雇用機会均等室」に相談し、相談記録を残すようにして下さい。この相談記録が後に証拠になります。(マタハラの場合、監督署や労働局の相談窓口に行ってはいけません。)
(ハ)妊娠を契機に退職強要を受けていた場合は、必ず録音を取るようにして下さい。録音がないためうつ病になった例で、労災認定がされなかった経験があります。
(二)妊娠を機に社長から退職強要を受けて慌てふためき、悪くもないのに社長に謝ったことで上記(2)の業務上の必要性に基づく解雇・退職強要を認めたことになった例があります。絶対に謝罪してはいけません。
マタハラの問題は、均等法だけでなく労基法、労働契約法、均等法施行規則、などにもかかわる場合があります。たとえば労基法19条1項は、産前産後休業中途、その後30日間の解雇は原則として禁止されています。法令を幅広く検討して下さい。
広島生協事件の最高裁判決に置いて、均等法9条3項の強行法規性が確認され、また妊娠を契機としてなされた不利益取り扱いは原則として違法無効とされ、事業主への立証責任の転換が図られました。
以上のことから妊娠を理由とした解雇・退職強要についての注意点は、上記の(1)(2)の例外に特に注意しなければなりません。仕事を口実にした退職強要を謝罪すると、労働者側が不利益取り扱いに同意、もしくは認めた事になるので特に注意が必要です。
女性は大声で怒鳴りつけられるとすぐ「すみません」と謝罪する傾向があるので、とりわけ注意して下さい。したがって社長や上司とのやり取りは必ず録音するようにして下さい。
(マタハラの問題は複雑で難しいので、被害にあった女性は遠慮せず、新世紀ユニオン無料労働相談に電話して下さい。)
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