契約書もないのに、請負契約を偽装したり、準委任のような形にして、会社が「非労働者」扱いし、残業代を請求すると「業務委託だ」と支払いを拒否する例が増えています。吉本興業が典型的な例です。
つまり実質的に労働者なのに、法律的には形式的に「請負契約」で、非労働者扱いにして残業代の支払いや社会保険料をなどを逃れる手口が増えているのです。
そこで「労働者」の定義をきちんと整頓することが必要になります。労働基準法上の労働者は「事業に使用されて(=指揮命令を受けて労働し)、賃金を支払われる者」を指します。
労組法上の労働者は、この上に失業者をも含みます。
さて問題は労働契約法上の「労働者」です。労働契約法上の労働者は、これより広く規定されています。
つまり「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われるもの」であれば足ります。事業に使用されているかまでは含みません。(注・労働契約法の労働者も労働基準法上の労働者と変わらない、との説もあります。)
労働基準法上の労働者であることの意味は、労働基準法及びその関連法である労働安全衛生法・労災保険法、最低賃金法等の適用対象となり、これらの労働者保護規定により保護されます。
1日だけのアルバイトであっても、その日に限り労働者となり保護の対象となります。
労働者性が認められるには、その「使用従属性」と「報酬の労務対償性」という2つの法律的要件を満たさなければなりません。
契約書(業務委託契約もしくは雇用契約書)が作成されていない場合が多いが、契約書があろうが無かろうが、以下の各要素が請負か、労働者かの判断基準となります。
(1)仕事の依頼等への諾否の自由の有無(注・個人事業主なら断る自由がある)
(2)指揮命令の有無(注・個人事業主なら命令されない。仕事の報告をさせていれば労働者)
(3)当該業務への専属性(注・その仕事以外の業務がない場合労働者))
(4)経費等の負担の有無(注・その仕事上必要な備品代など会社が負担していれば労働者)
(5)個人事業所得か給与所得か(注・働くことで報酬を受けているかどうかが重要)
このほか労働者性を補強する要素として、機械や器具などの所有者は誰か?会社が所有していれば労働者性を補強する要素となります。
また報酬に生活保障的要素があるか?つまり固定給部分があれば労働者性を補強する要素となります。
一方従業員であり、かつ取締役・執行役員であっても、代表者の指揮命令の下で労務を提供し、その「給料」の支払いを受けている者はたとえ肩書があっても、労働者性は直ちに否定されるわけではありません。
さらにシルバー人材センターの紹介で就労する者は「労働者ではない」ので注意が必要です。
外国人技能実習生は労働者であり、受け入れ企業との間で労働契約を結んで働いています。以上参考にして下さい。
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