最近企業が労働者を退職に追い込む手法として「配置転換」を悪用する手口が増えています。新世紀ユニオンの最近の例では(1)地域限定の営業マンを遠隔地事務職に配転(もしくは長期出張名目で)命令を出したり、(2)保育所の保母という専門職から、介護職の仕事に配転命令する例。(3)社長秘書を気に入らないからと現場の重量物の荷下ろし(4)大阪で親の介護をしながら働いていた女性事務員を東京へ行くか退職か、どちらかを選べ、と迫った例などがあります。
これらの配置転換は退職強要として行われるので、配転先が遠隔地であったり、大幅な賃下げを伴うのが普通です。こうした配転命令を受けたら異議を申し立てた上で、当面は従うか、もしくは違法性が明らかであれば、その場で拒否して闘うことになります。
配転に関する直接の根拠法令はありません。したがって配転命令権の根拠は労働契約の解釈問題となります。ところが入社時の雇用契約書を発行していない会社が多く、しかも辞令ですら発行していない例が多いのです。
配転事案の証拠として活用できるのは①雇用契約書 ②労働条件通知書 ③内定通知書 ④配転命令書面 ⑤職務辞令 ⑥配転の根拠規定を証明するものとしては就業規則などがある。
雇用時に職種を限定している場合、上記の例のように営業職・保育業務・社長秘書のように職種を限定して雇用していた場合、それ以外の職種への配置転換は人事権を利用したパワハラ、もしくは人事権の濫用の主張ができます。地域限定契約の場合は遠隔地の配置転換は違法です。
労働契約法は第3条(労働契約の原則)で以下のように定めています。
第3条 労働契約は労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更するものとする。
2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて。均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
4 労働者及び使用者は、労働契約を尊重するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、および義務を行使しなければならない。
5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。
これらの条項を活用して、必要な証拠をそろえてから闘いを開始しなければなりません。これらの配置転換に異議を申し述べなかったり、不当性を指摘しなかったら、違法な配置転換を認めたと解釈される危険があります。必ず不当性を申し述べておくようにし、どのように闘うかをユニオン指導部と検討するようにしてください。
会社は不当な配置転換を受け入れさせるために名目を「研修」と称したり、職歴形成と称して進める場合があり、巧妙になっています。また配置転換に伴う大幅賃下げを、「職務変更に伴うもの」とか「制度変更に伴うもの」と正当化してきます。そうした粉飾が欺瞞的であることを証明しなければなりません。
賃下げの口実がどうであれ、労基法上の賃金が「労働の対償」であり、制度の結果などではありません。労働条件の一方的不利益変更は労働契約法違反であり無効です。
この不当な賃下げについては現在のところ時効が2年(近い将来3年になる)なので、時効までに訴訟を起こす必要があります。新世紀ユニオンは、これまでのところこうした違法な配置転換は多くを撤回させています。
スポンサーサイト