問 私は、この度、会社の不正・違法と思われることを知ることになり、公益通報したいと思っています。しかし公益通報者保護法の内容も知らず。誰にどのようにしてよいのかわかりません。公益通報するにあたり、どのようなことを注意したらよいか教えてください。
答 大企業による粉飾決算、食品偽装、検査データ改ざんなど、不祥事が相次いでいます。企業内の不正行為を発見した人がそれを告発することは、不祥事の発生拡大を防止する社会的に価値ある行為です。つまり内部告発(=公益通報)は正当な行為です。しかし世間では内部告発したことで、懲戒解雇されたり、会社に損害賠償されたり、様々な不利益取り扱いをされる例がたくさんあります。
労働者が使用者の不正行為を内部告発する場合、内部告発がどのような正当性があるかを検討しておかねば、証拠資料の不正取得などで会社の反撃を招き、懲戒解雇される例が世間には多くあります。
<内部告発の正当性を判断する要素は以下の通りです>
(1)告発内容の真実相当性があるか?真実と信じる証拠があるか
(2)不正な告発の目的がないか?告発目的の公益性があるか?告発で、告発者が人事上の有利な立場を得る目的があれば、裁判で不正な目的とされます。企業内での告発の場合、人事上の有利な取り扱いを求めるか聞かれても、「求めない」と答えないと「不正な目的」にされますので注意が必要です。
(3)告発態様の相当性があるか?告発先が①企業内 ②監督官庁 ③報道機関などがあるが、使用者(会社)にできるだけ損害を与えない方法で告発することが求められる。企業内部での改善をせずにいきなりマスコミに通報することは裁判で相当性を欠くとされやすいので注意してください。
新世紀ユニオンの経験ではこうした内部告発の正当性を検討せず、大赤字を出した営業が、実は会社ぐるみの裏金作りであったため、告発者が報復のパワハラ・退職強要を招き、重いうつ病を発症し、最後に懲戒解雇された事例があります。こうした違法な手段による裏金つくりは案外多く、告発した側が報復として懲戒解雇される例が多いので気を付けてください。
公益通報の報復の懲戒解雇であっても、別の目的でなされる懲戒解雇の場合、病休で休む場合は就業規則の定めの通り診断書を提出していないと、公益通報への報復とはなりませんので、口実を与えないように注意することが重要です。つまり公益通報への報復が別の理由で行われるときは、公益通報者への報復の立証義務が告発者の側になるので、注意してください。
なお2006年4月から公益通報者保護法が施行されました。同法では以下の要件を満たせば不利益取り扱いが違法となる。
①雇用される労働者による告発であること
②通報対象事実が別表8号の政令で列挙された事項であること
③この場合使用者側が不正の目的がないことを立証する義務がある。
④通報先が労務提供先であるか、監督官庁であるか、報道機関であること
⑤告発目的であっても、資料の持ち出し行為が保護されるわけではないので注意が必要です。
⑥不利益取り扱いが公益通報を理由としたものであること
⑦監督官庁への通報の場合は真実相当性が必要である。(内部通報の場合は通報発生事実を「思料する」で足りる。報道機関への通報の場合は真実相当性に加え、公益通報すれば不利益取り扱いを受けると信ずる理由が必要です。)
以上のことから告発にあたっては、裏付けの証拠、告発後の記録を残しておくことが必要です。また報復が確実である場合は、告発を匿名で行うことも検討して下さい。以上参考にしてください。
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