長年解雇事案に取り組んでいると、最近の多くの解雇が「即時解雇」ではなく、追い込み型解雇がであることが分かります。昔は残業代を請求したら解雇されたり、ユニオンへの加入を働きかけたら解雇されるなど、即時解雇が多かったのですが、仕事上のミスや、トラブルを利用し、揚げ足を取り、パワハラ等で追い込む、計画的かつ陰謀的解雇が増えています。
職場でのトラブルを利用し、上げ足を取り追い詰める解雇、ネット上のトラブルを深刻化させ、謝罪へと追い込んだうえでの解雇、顧客からのクレームをでっち上げて退職強要で追い詰める解雇、など手の込んだ追い込み型解雇が増えています。
上司の営業での大赤字を役員に告発したばかりに、パワハラで解雇に追い詰められた人もいます。この上司の赤字が会社の裏金作りであったので、告発した労働者が「虎の尾を踏み」追い込み型解雇にはめられたのです。
追い込み型解雇は、標的になっている労働者にはなかなか自分への攻撃を認識できません。職場でおかしいな、と感じたらユニオンに早めに相談して、当面の具体的対策を取る必要があります。
ところが本人には「虎の尾」を踏んだ自覚がないか、もしくは解雇の布石だとの自覚がなく、自分がパワハラの標的になったことは自覚できても、解雇の狙いまでは思考できず、多くが解雇されてから自分が解雇に追い込まれたことが分かります。
そこで重要なのは、早めにユニオンに加入しておくこと(組織的準備)。さらには職場での出来事を常日頃からメモを残し、証拠を残すように習慣づけることが、後から闘う場合に証拠がやくに立つのです。
あとから追い込まれた経過の証拠を作るは難しいので、メールなどの形で日ごろから意識的に証拠を残すことが重要です。そのうえで職場での変化について意識的・客観的に見る習慣をつけることが重要です。
仕事のミスや、顧客のクレームなどで上司から「始末書を書け」と言われたとき、また「謝罪文を出せ」と言われたときはすぐユニオンに相談してください。揚げ足を取られないような始末書や謝罪文の書き方を指導します。
下手に謝罪すると「罪を追認した」として解雇する例が多いのです。始末書や謝罪文の提出も処分の一環なのに、それが新たな処分の口実にしてくる例が多いのです。したがって処分を招きにくい謝罪文の書き方をしなければなりません。
組合員の中にはユニオン指導部に相談もせず、素人考えで戦略を立てたが、ユニオンに持ち込まれたときには、闘えない事態になっていた、という事例も時々あります。
契約時の内容が運転手なのに、危険な作業をやらされ、期間契約が1か月しか残っていないのに、自己退職してからユニオンに闘ってくれ、と言っても後の祭りです。この場合闘う時期が問題で、期間契約が更新されてから闘うことが重要なのです。労働運動は闘うべき時と、闘ってはいけない時があるのです。
また解雇されたとユニオンに加入し、ユニオンの指導部が「失業保険受給の手続きを今はするな」と言っているのに、「もう今の会社では働かない」と言って失業保険受給の手続きをしてしまい、その結果違法解雇なのに未払い賃金請求権が無くなる事例もあります。失業保険受給手続きはあくまでもユニオンの指導に従い「仮受給」にしないと、解雇の追認になってしまします。
労働運動は100の事例があれば100の闘い方があります。些細な事と思っても、実は解雇の布石である例が多くあります。ユニオンに些細なことと思っても遠慮せず、メールで相談するように心がけてください。第3者へのメールでも関節証拠になる場合があるのです。
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