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◆大学の法人化がもたらしたパワハラ、アカハラ激増と今後の課題

 平成16年4月、全国の国立大学が法人化されました。今年で4年目を迎えますが、大学改革と銘打って、十分な審議もなさ れないまま実行されたつけが、さまざまな形で姿を現しつつあります。そのひとつが、大学内におけるハラスメントの急増です。

 大学の法人化とは、つまり、大学が個人商店となり、営利追及集団化したことを意味します。大学の使命は、「教育」「研究」「社会貢献」の3点に集約され ますが、研究の推進こそは、最高学府であるところの大学の最たる使命です。

 ところが、法人化と同時に、国からの運営費交付金が減額され、全体の25%の大学で従来の4分の1カット、57%の大学で何と2分の1もの減額が現実の ものとなりました。そして、一般企業同様、大学でも教職員のリストラや業務の縮小化が進められ、本来大学が果たすべき機能が停滞するというような危機的状 況に見舞われています。そのような中、競争は、国際間においてではなく、大学内の教員間で見られるようになり、大学内での生き残り戦争が激化するという思 わぬ事態を引き起こしているのです。

 ところで、皆さんは、大学におけるハラスメントの約9割は、医学、看護学、保健学などの医療に関連した学部で起きているということをご存じでしょうか。 こうした分野では、研究をチームで行うことが多いため、チーム員の密着度が高くなり、上下関係や同僚間での葛藤が生じやすいこと、また、伝統的な古い体質 が今なお蔓延していることなどが、ハラスメントを惹起しやすい理由となっています。

 将来の医療人を育成する教育現場での教員間のハラスメントが、そこで学ぶ学生たちに、どのような悪影響を及ぼすかは、想像に難くありせん。

 大学における教員間のハラスメントの特徴は、手法そのものは稚拙でありながらも、巧妙かつ陰湿ないじめの形をとるケースがほとんどです。職場の上下関係 を利用した女性教員へのセクハラなどは、昨今のセクハラへの注意喚起も功を奏してか、以前に比べると減少傾向にあるようですが、それにとってかわって頻発 しているのが、学生を共謀させて、特定の教員を罠にはめ陥れるという、組織的パワーハラスメントやアカデミックハラスメントです。

 こうしたハラスメントでは、長期にわたり、標的にした教員の自尊心を傷つけ、再起不能にするというような、極めて悪辣なやり方が用いられます。

 一般的に、大学教員の多くは世事に疎く、一旦このような罠にはめられると、自分の置かれた境遇を容易には理解できず混乱をきたし、多くの場合泣き寝入り から退職へと追い込まれていきます。中には、自殺に追い込まれるケースも少なくありません。

 それらは、「モラル・ハラスメント」と命名されている類のものですが、フランスの精神科医イルゴイエンヌは、モラル・ハラスメントを放置すれば、国家的 危機を招くとまで指摘しています(マリー=フランス・イルゴイエンヌ著.「モラル・ハラスメントが人も会社もダメにする」.紀伊国書店)。

 それでは、いったいなぜ、最高学府において、犯罪まがいの冤罪を生み出すような環境が、形成されていったのでしょうか。

 前述したような特徴的なハラスメントの背景には、国からの運営費交付金の削減による大学の財政危機と、成果主義の導入が在ります。それに伴う教員間の競 争の激化や嫉妬心の増長、学生を過度に顧客扱いする大学の商業化の問題、組織や社会全体の利益を蔑ろにした個人優先主義に加えて、コンプライアンスを軽視 する、時代錯誤とも言えるような大学内の権威主義の横行が、大学内におけるゆがんだ価値規範を形成して、種々のハラスメントを増加させ、引いては、最高学 府としての機能を疎外し、品位を貶めていると言えるでしょう。

 もともと大学の法人化は、わが国における科学立国としての存在をより強固なものとし、国際間競争を推進する目的の下、施行されたものでした。しかし、国 がこれまで同様、モンスターペアレントやモンスタースチューデントなどの問題も含めて、教育現場を揺るがすさまざまな問題を看過し、適正に解決していかな いとするならば、先のような本来の目的を達成できるどころか、日本の将来に重大な禍根を残し、国の危機を招来することは必至です。

 したがって、国は、最高学府で頻発している種々のハラスメントの問題に対し、本腰を入れて取り組まなければなりません。これらのハラスメントに対して も、セクハラ同様法案化して、防止策を講じるべきであります。

 また、それと同時に、現場で働く教員一人ひとりが、「いかなるハラスメントをも、けっして許さない」とする強い姿勢を持って臨むことが大切ではないで しょうか。声を上げないことが、次なるハラスメントを招来していくのです。

 ハラスメント防止には、組織的なシステムづくりと個人の意識改革が重要な意味を持ち、これら二つのことが備わってこそ、社会を変えていく原動力となりま す。教育も研究も、時間をかけて育てるべきものであり、それらの業務に従事する者がお互いを傷つけあうような社会であってはならないと思います。
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