解雇の有効性を争う場合、使用者がした解雇の意思表示が重要となります。しかし最近の解雇事案では、解雇の理由が懲戒理由ばかり並べているのに、会社が普通解雇を主張してくる事例が増えています。そこで懲戒解雇と普通解雇の違いについて認識しておくことが重要となってきています。
普通解雇は民法627条1項等に基づく労働契約の解約の申し入れです。これに対し懲戒解雇は就業規則に定めた企業秩序維持に対する懲戒権の行使です。しかし最近の解雇の特徴は、使用者が懲戒解雇の意思表示をしながら、予備的に普通解雇を宣言してくる例が非常に増えています。
新世紀ユニオンの経験ではある会社の解雇理由に①上司に暴言を吐いた②同僚と口論した③仕事のミスが多い、などの懲戒理由をたくさん並べていましたが、会社は普通解雇を主張してきました。
この場合会社は一度も就業規則に基づく戒告・減給・出勤停止などの処分をしていませんでした。でっち上げですから懲戒の手続きがとれていなかったのです。しかも当ユニオンが解雇が予想されたので、すぐに残業代支払いを書面で請求した直後に解雇してきたので、不当労働行為として解雇事案で勝利できました。
それとは別の事案で一審で懲戒解雇で勝訴しましたが、会社側が審理途中で予備的に普通解雇を宣言し、高裁で裁判官から1,200万円の金銭和解が提案され、これを本人が「原職復帰がしたい」と裁判官の和解案を拒否したら、逆転敗訴になった事例があります。
企業側が予備的主張として「普通解雇」や「懲戒解雇」を言ってきたときは、和解を拒否するのは非常にリスクが高いと思ってください。
ですから会社側が懲戒解雇を行い、予備的に普通解雇を主張してきた時には、懲戒解雇の要件を調べること、この場合の懲戒解雇の要件とは(1)処分の根拠規定があるか(2)懲戒解雇権の濫用でないかなどを調べることが必要です。
普通解雇においては、使用者が主張する解雇理由(解雇理由証明書で明らかにしてきた理由)が事実として認定できるか?それが客観的に合理的な理由と言えるか、社会通念上相当として是認できるか、を見なければなりません。
会社側に弁護士がつき解雇してくる場合は、ただ解雇を待つのではなく先手を打ち残業代を請求するなどの手を打てば、会社側の解雇の理由がどのような理由であれ、残業代請求に対する報復の解雇となり勝訴できます。
残業代請求ができなければユニオンへの加入を働きかけ、解雇がその組合活動への報復となれば不当労働行為となり勝利できます。つまり解雇闘争はユニオン側の対抗戦術が重要なのです。つまり勝利の分かれ目はユニオンの指導に従い戦術を実行できるかどうかがカギになります。
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