2022年4月、労政審に検討会報告書が提出され裁判での「解雇無効時の金銭救済制度」が画策されています。
検討会報告は、「解雇無効時の金銭救済制度」の趣旨を、使用者による解雇の効力を労働者が争い、それが裁判所により無効であることが確認されれば、労働者の選択により地位確認により得られる利益に代えて労働契約解消金を請求し、その支払によって労働契約を終了させることができる仕組みです。報告は、労働者に対し救済の選択肢を増やす制度であると説明しています。
労組活動家等企業側が気に入らない労働者を違法に解雇し、裁判で労働者側が勝っても「労働契約解消金」を支払えば解雇できる制度ができれば、労働運動などできなくなります。つまりこの制度ができれば会社が気に入らない労働者の解雇が次々起こることになります。
違法な解雇であって裁判で勝っても、一定額のお金を払えば解雇できるとなると、もはや労働運動など不可能になります。解雇になれば裁判を闘うこともできなくなり、事実上の解雇の自由化ができるのが狙いです。
裁判で違法解雇で会社が敗訴しても「労働契約解消金」を払えば解雇できるとなると、違法解雇やり放題となるのは必然です。現行法では違法解雇裁判で勝てば原職復帰できるのが、勝っても原職復帰できないとなると、だれも解雇裁判を闘えなくなります。つまり現行の解雇権濫用法理が無効になり、憲法28条の労働3権が形がい化し、労組法の不当労働行為制度が形がい化してしまいます。
日本の労働法の多くが努力義務であり、罰則付きの強行法でないので、ブラック企業の残業代未払いや、パワハラのように、違法行為が今でもやり放題となっています。それが「解雇無効時の金銭救済制度」ができると、解雇の自由が完成することになります。つまりこの制度は解雇の自由化を制度として確立することが狙いであることは明らかです。
日本の民主的労働法は、GHQの戦後労働改革で確立しましたが、政府はこれを「規制緩和」「多様な働き方」「自由化」の名で戦後労働改革の骨を抜いてきました。その最後の総仕上げが、解雇の自由化なのです。
バブル崩壊後の強欲の資本主義は「改革」の名で民主的労働運動の合法化の骨を抜き、労組の家畜化で、日本の労働運動はストライキでさえ行えなくなり、その総仕上げが解雇の自由化なのです。この法律ができると、日本の労働運動は戦前の非合法な運動の時代に立ち帰ることになります。
ここ20年間で日本の賃金は上昇せず、ゆえに需要が伸びず、国民経済は停滞を続けてきました。「解雇無効時の金銭救済制度」ができると停滞どころか、国民経済が縮小する事態が不可避となります。
GHQの戦後労働改革は国民経済の高度成長のためであったのに、わざわざ「改革」のなで労働運動をつぶしてしまえば日本経済が立ちいかなくなるのは明らかです。強欲が過ぎれば、国民経済さえつぶしてしまうということです。
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