中国の改革開放政策を打ち出した鄧小平は「目立たないように静かに先端産業を育成する」政策を進めたが、習近平は公然と「強国路線」を打ち出し、世界の覇権獲得を「中国の夢」として掲げ、アメリカの覇権に勇ましく挑戦した。
それは「戦狼外交」と表現される帝国主義的外交にも表れており、そうした野心への反撃として、アメリカの先端技術からの中国への隔離政策の強化となった。
バイデン米政権は週内にも中国半導体メーカーの長江存儲科技(YMTC)を含む30超の中国企業・団体を事実上の禁輸リストに加える。中国は世界貿易機関(WTO)に米国の先端半導体を巡る対中輸出規制が不当だと提訴したばかりで、半導体関連の米中対立が激しさを増している。
アメリカは今年10月、スーパーコンピューターなど先端技術の対中取引を幅広く制限する措置を発表した。半導体そのものだけでなく製造装置や設計ソフト、技術者も含めて規制した。特定の企業でなく中国全体に網をかけたもので、中国政府は世界貿易機関(WTO)に不当だと提訴した矢先の禁輸措置である。
アメリカの戦略的狙いは、習近平政権の「中国製造2025」計画を先端産業におけるアメリカの経済覇権への挑戦と考えており、世界中から先端科学技術者1000人を中国に招き、雇用する計画を警戒し、今年10月にアメリカの半導体技術者の中国での労働を禁止している。
このため中国産の半導体の不良率が40%に上っている。今回は中国半導体メーカーの長江存儲科技(YMTC)を含む30超の中国企業・団体を事実上の禁輸リストに加えたもので、これ以上中国の先端産業での成長を許すと、軍事技術への応用で、アメリカの世界覇権を揺るがす事態となる、とみたのである。
特に、ロシアのウクライナへの侵攻とその戦況で、半導体が持つ先端誘導兵器の重要性から、アメリカは中国のドローン兵器への応用を警戒したものとみられている。
アメリカは先進諸国の半導体生産が、戦乱が予想される台湾と韓国に依存している状況をみて、アメリカと日本が2ナノ半導体の共同開発・生産計画も進めている。この分野の産業の優劣が、戦争のゲームチェンジャーとなる精密誘導兵器開発と量産を左右するからである。
つまりアメリカは、近く中国軍の台湾進攻がありうると見て、精密誘導兵器での主導権確保のため、先端産業戦略を進めているのである。この面での米中の争いは資本主義の不均等発展の結果であり、世界の多極化は誰かが計画して進めているものではない。
資本主義の不均等な発展がアメリカの相対的な経済覇権を脅かし始めたのである。かってアメリカは日本の企業が半導体生産でトップのシェアーを占めたとき、技術特許を口実に日本の半導体産業を撤退に追い込んだ先例がある。中国は鄧小平の目立たないやり方を踏襲すべきであった。
習近平ファシスト政権は、公然と「強国路線」を推し進めて覇権国アメリカの怒りを買うことになった。政治が経済対立の延長であり、戦争が政治対立の延長なので、アメリカと中国の覇権をめぐる対立は今後激化していくことは避けられない。つまり、米中の覇権をめぐる対立が現局面における世界の主要な矛盾の一つとなった。
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