岸田政権の経済財政運営の指針とする「骨太の方針」の素案が6月2日に新聞で報じられた。それによるとコロナ禍からの経済の回復や世界的な物価高を「時代の転換点」と位置図け、大胆な構造改革でデフレ脱却を図るとしている。
そのために政府は賃上げや起業の推進を図るとしている。賃上げについては最低賃金を1,000円を超えることを視野に入れるとしているが、この目標自体があまりにも低い。日本はGDP世界3位だが最低賃金はまだ900円台だ。
GDP世界4位のドイツが1,600円であることを考えると、最低賃金1,000円は韓国よりも低い。需要が縮んでいるのに企業ができるわけがない。これではデフレ脱却はできない。
厚生労働省が6月6日に発表した4月分の毎月勤労統計では、物価を考慮した働き手一人当たりの「実質賃金」は3.0%減少した。つまり日本の賃金はまだ下がり続けており、内需は縮小を続けている。これでは設備投資は起こらず、したがって生産性は上がらない。日本経済の縮小再生産は続いているということだ。
実質賃金を上げるには、反労組・闘うユニオンつぶしを止め、賃上げのための労組のストライキを推奨する以外ないのである。労働組合の経済闘争が資本主義の経済成長には不可欠だということが、自公政権には理解できないのである。
GHQの戦後労働改革が労組の合法化で高度経済成長を導いたことを、彼らは忘れ去っている。ゆえに岸田政権の骨太の方針は失敗が確実と断言できる。
資本主義の商品には「価値」と「使用価値」の2つの側面がある。物事には必ず2つの側面がある。賃金は「費用価格」という側面と、「個人消費=需要」という側面がある。
従って賃金を抑制しすぎると需要が縮小し、物が売れなくなり、物価が下がるのである。これがデフレであり、国民経済の縮小再生産のサイクルになる。
ところがアベノミクスの政策は、ゼロ金利にし、日銀の国債引き受けでインフレ政策を行った。アメリカが金利を挙げているのだから当然円安になる。円安になると自動車や商社は、輸出代金が為替差益で利益が膨れ上がる。
これは輸出企業にはいいことだが、円安はエネルギーや原材料を値上げさせる。つまり日本の貿易赤字は膨大となり、物価が上昇し、国全体では国益を大きく損なうことになる。
デフレを克服するために岸田政権はインフレをやるのだから、資本主義の経済が分かっていないのである。デフレ克服には労組のストライキによる継続的な大幅賃上げが不可欠なのに、岸田政権はデフレ克服の方法が理解できていないのである。
彼らは賃上げをやると自分たちの支持基盤である企業の利潤が減少すると思っているのだ。そうではない。大幅な賃上げは需要を拡大するので、設備投資に火が付き、生産性が上がるので、企業の相対的剰余価値が急増するのである。
輸出競争力も上がり、強欲の資本主義により得られる絶対的剰余価値よりも、相対的剰余価値の方がけた違いに大きいのが、彼らは理解できないのである。
従って、岸田政権は今年秋の増税政策で、需要をさらに縮小する。これは日本経済の30年にわたる縮小をさらに続ける亡国路線なのである。岸田政権は認識論が理解できていない。
労働者と資本家の関係は「対立面の統一の関係である」労組の経済闘争無しに資本主義の経済成長はないのであり、ゆえに日本経済は、失われた30年の愚かな政策を今も続けているのである。人間の誤りは認識の一面思考で起きることを指摘しなければならない。
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