世間には業務委託などの請負業が増えています。弁護士のように法律で代理人になることが許される職業もあります。しかし労働組合(=ユニオン)は代理業ではありません。
ユニオンが交渉権を有するのは、代理権を根拠にしているのではなく、憲法28条の「勤労者の団結する権利、及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」との定めに基づき労働組合法で保護されて交渉権を行使しています。個人加入ユニオンの場合は、職場の状況、労働者支配の特徴、経営側の問題点など、ユニオンの指導部と認識を統一しておかないと雇用を守れないのです。
なぜ国家が、労働者の団結権やスト権など団体行動権を保護しているのか? それは資本主義社会では、労働力と言う商品が価値どおりに売られるには、労組の経済闘争が不可欠であり、それを保障しないと国民経済が成長しないからです。
最近労働相談で多いのが、「他の労組の加入していたが何もしてくれない」と言って「新世紀ユニオンに加入したい」と言ってくる人がいます。こうした人達が非常に多いのです。職場に労組があるのに、その労組を強くするという発想はありません。
ただ自分の賃金を組合が上げてくれる、と考えている単純思考の人が多いのです。賃金を上げる目的の場合、職場の労組を無視してユニオンに加入しても、それは分裂行為であり、賃上げ闘争はできません。賃金闘争を闘うには過半数の労働者を組織しないと闘えないのです。
ところがユニオンに加入したら何もしなくても賃金を上げてくれる、と考える人が多いのですが、闘うのはその職場の労働者自身です。ユニオンが代わりに闘ってくれる、と言うのは労働組合を請負屋とかん違いしているのです。労働組合は団結して共に闘う組織なのです。
闘うのは自分たちであり、ユニオンに団結して共に闘うのだという視点を忘れてはいけないのです。組合が自分たちに成り代わり闘ってくれる請負人のように考えることが間違いなのです。憲法と労働組合法の団結権の意味を理解できていない人が多いのです。ユニオンは闘いを指導し、宣伝などで協力します。しかし労働組合は請負屋ではないのです。
ユニオンは一人でも加入できる労組です。一人でも雇用を守ることはできます。しかし賃金闘争を闘うには職場の過半数を組織しないと経済闘争は勝利できないのです。
組合員の中には、雇用を守ってほしい、と言いながら団体交渉に反対する人もいます。自分で団体交渉をドタキャンして、個人で交渉する人も時々います。ユニオンに10%の拠出金を払いたくないずるい人がそうするのです。
団体交渉をつぶし、個人で交渉しながら「問題が解決しない」とユニオンに怒鳴りこむ人もいます。こうした人は大学の先生であり、研究機関の研究員に多いのです。困ったことに労働組合は本人に団結権を放棄されると、何もできなくなります。
それすら理解できない人がいます。労働組合が団結体であり、団結を崩したり、ユニオンを悪用するような考えの人は、間違った認識を改めていただきたいのです。
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