私は関東に本社を置く準大手の建設会社に勤務しております。私の部署では、時季によって業務の繁閑が不安定です。そこで、今冬の繁忙期にトラブルが重なり、労働組合主導で過労死ラインを超える長時間労働が行われたのです。
昨年の春まで、当社の労使協定では時間外労働の限度時間は45時間/月、休日出勤は、4週の法定休日のうち2回までとされておりました。45時間/月とは、厚生労働省告示による労働時間延長の限度基準です。しかし、建設業はこの基準の適用除外対象なのです。
私の部署では元々45時間/月以上の時間外労働が常態化しておりました。そこで、当社の労働組合執行部は、会社の要請をそのまま受け入れ、残業の上限を 80時間/月に延長してしまいました。組合執行部が一般の組合員から意見を聞くことはありませんでした。
80時間/月の時間外労働は、一般に過労死ラインと呼ばれております。社員の健康障害が懸念されるので、私は組合の定期大会の場でこの協定を撤廃するよう意見しました。けれども、「実態に即した協定にすることで、サービス残業を無くすためだ」という反論が出され、上限時間が見直されることはありませんでした。
調度その頃、当社が行政指導を受ける機会が相次ぎ、年末年始にかけて業務輻輳はピークに達しました。会社には物言わぬ従業員だけが残り、さらなる過重労働を余儀なくされておりました。過重労働によって次々と労災が発生し、同僚が現場を離れていきました。
私の現場でもフラフラになって気を失う同僚もおりました。すでに労使協定を超過した労働が行われていたので、私は組合に対し、過重労働の是正を求めました。組合執行部は、「特別条項付協定を結んだので、今は上限80時間/月ではなく、120時間/月です。過重労働には個人差があるので、調子が悪いのであれば休んでください。我々もやるべきことはやっています。」と回答しました。組合はまたもや職場に意見を求めることなく限度時間を延長していたのです。
後日、さらに協定の上限を超えたとき、私は再度組合執行部に是正を申し入れました。組合執行部は「新しい協定を結び、上限は200時間/月、法定休日の出勤は4週のうち2回だったのを4回にしました。職場代表者の意見を聞いて判断しました。」と回答しました。
組合執行部は当然、その職場代表者が誰であるのか答えられませんでした。私が何度過労死ラインを超過した協定は結ばないよう訴えても、事実上全く聞き入れてもらえませんでした。
私はこの件を労働基準監督署に相談しましたが、監督官は「労使で協議して結ばれた協定は、うちらも断る理由がない。」と回答しました。
このように、時間外労働の限度基準が適用除外となる建設業等では、過労死ラインを上回る労働が合法的に行われるのです。労働基準法に違反していなくても、日本国憲法第25条に違反している疑いがあります。
労働組合は本来労働者の処遇を向上させるために存在するべきものだと思われます。会社の言い分をそのまま通し、労働者の専制的支配に手を貸すような御用組合はないほうがましでしょう。少なくとも組合がなければこのような協定が簡単に成立することはありません。
私は率先してこの労働組合を脱退しました。労働者は、労働組合の改革・再編やまたは信頼できるユニオンへの加入によって、自分達の生存権を保障しよう。
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