オバマ政権の景気対策法案が上下両院の妥協で規模を縮小(7890億ドル)した。その結果、法案可決後に市場は失望し、米株価は大幅に下落した。GMとクライスラーは、2.8兆円の新たな追加の支援を政府に要請した。米政府は両社に対し退職者向け医療費の負担や、従業員の賃金など労働コストの削減について条件を出したが、全米自動車労組(UAW)との交渉は進んでいないようだ。オバマ大統領が自動車大手への追加支援に踏み切るか、それとも破綻を選ぶか注目される点である。
オバマ大統領は、約900世帯も対象とする住宅ローンの借り手救済策を発表した。しかしそれで住宅価格の下落を止められる保障にはならない。今後住宅価格はさらに10%以上は下落すると見られているのである。
米政府の約2兆ドル(約180兆円)の金融安定化策は具体策が決まっていないし、不良資産の買い取り価格も決まっていない。官民合同の基金による「バッドバンク」も検討の段階だ。また金融業界への規制強化策もまだ決まっていない。
したがって約72兆円の景気対策で米経済が再生するかどうかは分からないのである。
米財務省とFRBは、2月23日異例の共同声明を発表し「銀行が必要とする資本と流動性を保証する」として追加の資本注入の可能性を指摘した。また25日から大手金融機関の財務状況を調べる特別検査を実施することを打ち出した。
これはシティグループとバンク・オブ・アメリカの株価が急落するなど再び金融不安が広がっていることから市場の動揺を抑える狙いと見られている。つまりアメリカの信用危機は終わっておらず、もう一段の危機が迫っている可能性が強いのである。
オバマ政権の公約であるイラクからの撤兵も長引く可能性があり、アフガンへの米軍増派も、局面打開の見通しはない、いつタリバンとの話し合いに移行するかがカギと見られる。和平路線を実現できなければ、米経済の再生の負担となるのは確実である。
アメリカは、製造業の大半を海外に移転するか、アウトソーシングして、自国の産業を空洞化し、金融の力によって世界の資金を集めるという、ドル支配のアメリカ金融資本の戦略は、今回の信用恐慌で完全に破綻した。残されたのは1500兆円といわれる負債の山であり、多数の失業者であり、マイホームを失った多数のホームレスである。
2月24日のオバマと麻生の日米首脳会談では、世界的な金融・経済危機に、日米が連携して対処することとドルの信認の維持が確認されたが、これは日本がアメリカ国債を引き受けるということである。また安保面でのパートナーシップとは、アフガンなどへの日本の国際貢献のことである。
日本がアメリカの国債を買ったとしても、金融危機が克服できるとは限らず、さりとて日本が米国債を買わなければ、ドルの崩壊が早まり、日本は莫大なドル資産を失うことになる。他国に自国の借金を支払わせることは支配従属関係の日米同盟の特徴である。
中国は、ドル崩壊に備え、手持ちのドルで世界の資源を買い漁っている。日本は従属国であるため、また自民党の対米追随一辺倒のため戦略を持てない状況にある。
日本の政治家にとって、アメリカの危機転嫁をいかに逃れるかが課題となっている。対米自立の時がきているといえる。
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