問 私は今回ある会社に就職したのですが、ハローワークの求人票ならびに求人広告に記載された労働条件は30万円だったのに、実際には22万円しか払ってくれません。
求人広告やハローワークの求人票に記載された労働条件は、会社は守らなくてもいいのでしょうか?
答 求人広告やハローワークの求人票は、使用者が労働条件を示して、労働者を労働契約へと誘引するものであり個別的な労働契約の申込の意思表示ではありません。したがってある程度はこの金額を守らなくてもいいのです。
労働者の個別の労働条件は、入社時の面接や説明会で説明された労働条件が労働契約の内容となります。したがってこの時に自分の賃金額や仕事の内容を確認しておく必要があります。
つまり求人票や求人広告記載の賃金見込額は、あくまでも確定的な契約の内容とはなりませんが、使用者は求人票見込額を著しく下回る額で賃金を確定すべきではありません。
あなたの場合は、賃金が8万円も額が低いですから、会社は労働契約法3条4項の信義誠実義務の原則に違反しています。ただし会社側が雇用後のあなたの能力を問題にしてくる可能性もあります。また最近の景気の悪化を理由としてくる可能性もあります。したがって会社との交渉はすべて記録(ICレコーダーによる隠し録り)して下さい。
判例では、石油ショックなどの事情があれば、求人広告と賃金額との格差は社会的非難に値するとはいえないとの判決もあります。
また求人票記載の労働条件は労働契約締結に際し、これと異なる合意をするなどの事情がない限り、労働契約の内容になるとした判例(千代田工業事件、丸一商店事件)もあります。
使用者が求人広告などで労働者に誤解を与えるような説明をした場合は慰謝料の支払いを命じた裁判例(日新火災海上保険事件)もあります。
つまり求人広告や求人票の賃金額を信じるようにしむけ、実際の面接など採用時に具体的賃金額を明示せず、求人票の賃金額が支払われるように信じさせた場合、使用者は契約内容の理解促進義務(労働契約法4条)を果たしていないことになり、雇用契約上の信義則に反する不法行為を構成するとして慰謝料が命じられた場合もあります。
相談者の場合の使用者側の説明内容で、求人広告や求人票の賃金に期待をいだかせる話があったかは不明ですが、実際の給料との差が大きいので会社にきちんと説明を求めることはするべきです。
この時の記録を残した上でユニオンに団体交渉で改善を求めていくとよいと思います。
入社に当たってはたとえ求人票や求人広告に賃金額が記載されていても、その金額は「見込額」であり、個別的賃金額は入社時に書面で確認しておく必要があることを教訓として下さい。
使用者は労働契約締結に際して次の5点について書面で明示する義務があります。
1.労働契約の期間
2.就業の場所・業務の内容
3.労働時間に関する事項
(始業・就業の時刻、休日など)
4.賃金に関する事項
(賃金、締め切り、支払いの時期など)
5.退職に関する事項
以上の労働条件明示義務は労基法15条、労基法施行規則5条で定められています。
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