労働相談の内容は残業代の不払い、退職強要、パワハラ、解雇、配転など多様だが、これらの相談に乗る上で就業規則の規定がどうなっているか聞くと、ほとんどの人が就業規則を見たことがない、と答えます。100人以上社員がいる会社でも就業規則を従業員に見せていないのです。
残業代の相談であるなら賃金形態(裁量労働制など)が関連してきます。配転であれば配転がありうることが就業規則に定められているか(包括的合意であるか)が重要になります。懲戒処分の相談であれば就業規則の懲戒規定が必要です。解雇の場合も就業規則の解雇の条項が違法か合法かの判断に必要なのです。
ところが相談者には就業規則の意味もわからない人が多いのです。これでは相談にもなりません。
企業が就業規則などのルールを労働者に知らせずに働かせているのは違法行為の意図があるからです。
中には就業規則を入社時にもらっているのに読まず、解雇になって就業規則を返還した人までいます。だまして辞めさせ、その上就業規則の返還によって退職を本人に直接「追認」させることで解雇を正当化するのです。こうなってから相談されても、就業規則がないのでは違法性を判断することもできません。就業規則をもらっていても読まない人がいることは信じられないことです。
入社時に労働契約を書面で明示することになっているのに、もらっていない人が多いのです。
雇用時の書面による労働条件の明示は使用者の義務であるのに、まだ守られていません。
ある相談者は、1ヶ月に土曜日を4日出勤させられたが残業代がもらえないと相談してきました。それでよく聞くと翌月に振替休日を取れと言われているのです。そこで就業規則はどうなっているか聞いても見たこともない、というのです。従業員が150人もいる会社でも、就業規則を見せないようにしているのです。
労働者と使用者の労働契約関係は、労基法、雇用機会均等法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働契約法の規制を受けているのです。
労働契約で個別合意がされなかった問題については就業規則が定める労働条件・労働契約の内容となります。もちろんその場合就業規則が労働者にあまねく知らされている(周知されている)必要があります。しかし周知していなかったことは立証することが難しく、裁判の中で後付けで就業規則を作成してくる場合が多く見られます。つまり入社時に就業規則をもらっておくことが必要なのです。
労基法は、守るべき最低の基準を定めています。したがって就業規則の定めが、労基法の定める基準に達していない場合は、その部分については無効となります。
就職した会社に労働組合がある場合は、労使間の労働協約に定める労働条件に違反する契約部分は無効となります。つまり組合のある場合は労働協約が就業規則以上に重要となります。
使用者は労働者に対し労働条件を明示する義務があります。また使用者は労働条件について労働者の理解を促進する義務があります。就業規則や労働協約を知らない労働者は会社に申し入れて、もらって読んでおくようにしてください。
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