「命より金だ!」アメリカの医療保険制度がそう語る───映画『シッコ』の感想文 私は久しぶりにマイケル・ムーア監督の映画を見ました。
だいたいの実例は、 * アメリカの大工さんが2本の指を切断して接合手術を受ける際に、中指をつなぐのと薬指をつなぐことのそれぞれの費用(値段)が提示され、安い方の薬指だけしかつながらなかった。
* アメリカでは救急車に運ばれる際、前もって保険会社の許可を取った上で指定された救急車に乗らなければならない。
* アメリカの医師は治療をいかに断るか(『否認』という)で評価され、評価の高い人は保険会社から報奨金がもらえる。
* 他の先進諸国であるカナダ、フランスでは医療費は基本的に無料で、最高の医療が受けられる。しかも、待ち時間が短い。イギリスでは入院費が無料。薬代は安価。
* アメリカでは、保険業界がこぞって議員を買収している。国民皆保険制度を公約として掲げたことがあるヒラリー・クリントンでさえも買収している。
* アメリカでは、いざ医師の診察を受けた際に「保険の利く治療ではない」という理由で否認され、病気が重くなったり、死んだりしている。また、医療費が払えなくなった患者に対しては、たとえ骨折の治療が途中であろうとタクシーを利用してとある歩道上に捨てられる。
* 9.11の救出活動にボランティアで携わった人のけがや病気やその後遺症に苦しんでいる人が保険での治療が認められずに苦しんでいる。そこでムーアは彼らをキューバの病院に連れて行って、無償で最高の治療を受けている。しかも、グアンタナモ海米軍基地に収監されているアルカイダの一味が受けているのと同じレベルの治療である。
その他のあらすじ等はパンフレットか公式サイト http://sicko.gyao.jp/ をご覧になって欲しい。
この映画を見て、思ったことは、『シッコ』=アメリカの医療保険制度問題にとどまらないことです。アメリカでは、医療をはじめ育児や教育など借金を抱えさせています。借金のある人は、条件の悪い下でも文句を言わずに働く傾向にあります。二つや三つの掛け持ちで働いている人もいます。
それで、経営者や政府がより強い立場になっています。日本でもこういう傾向になっているのですが、アメリカはもっとひどいです。私達がテレビを通してアメリカを見る際、強者や成功者ばかり見ているのです。ところが、この映画では、弱者や貧困層が写っているようですけども、一度大病を患うことで保険会社のさじ加減一つで破産者に堕ちてしまうのです。
また、日本の健康保険制度はこの映画の中には出てこないが、どちらかといえばアメリカに近いと思います。というのは、医療費の一部負担制度や高い保険料がそうです。
しかも、社会保険である健康保険は保険料は事業主が半額負担になっているせいか、パートやアルバイトで通常の労働者の3/4未満の労働時間の人は入れなくてよいという抜け穴の法律があるために(適用除外ではない)肝心要の低賃金の人が、親のすねかじりやサラリーマンの妻でない限り保険料全額自己負担の国民健康保険の被保険者となり、たいてい保険料を滞納してアメリカ同様に満足な治療が受けられないでいます。
国民健康保険は不法滞在の外国人を適用除外としているため、難民や就労目的で来日してパスポートを取り上げられたような人が病気を持って本国に帰ることは想像に難くないでしょう。弱いものは早く死ねということなのでしょうか。
しかも、日本の健康保険制度には、ご存じの通り、保険が利く治療と利かない治療があります。ガンの治療等では場合によっては未承認薬を使わざるを得ず、病気で破産することだってあります。
労災保険では、保険料全額事業主負担、治療代は完全無料のため、私達にとっては手厚いようだが、治療内容は健康保険に準じており、また、メリット制のため、「保険事故」の多い企業では保険料が値上げされるため私達が仕事でけがをしても医師の診察をためらったり健康保険を使わせるようなきらいがあります。
これを読んでいる皆さんは今一度映画館に足を運んで『シッコ』をじっくりと鑑賞してもらいたいです。
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