3年前に上司の嫌がらせで病気休職に追い込まれて退職させられそうになり、組合のおかげで無事復職することができた。最近は仕事も回ってくるようになり一安心しているが、業界事情を考えると決してこの先も油断はできない。40歳も目前に迫った年齢で、どこまで自分の足で立って働けるのだろうかと思う。
自分の闘争をやりながら、離婚や夫との死別で子供を抱えて働き、解雇される女性組合員らの闘争を見る機会があった。女性こそ労働の知識を学び、賢く会社と付き合うべきだと思った。収入が男性労働者より低く、正社員としての再就職も難しいため、一度職を失うと不安定な生活を強いられやすいからだ。
女性労働は長らく財界の労働政策に影響を受けてきた。男性が終身雇用、年功序列賃金を保証される代わりに長時間労働をすることで企業の安定成長に貢献し、その代償として女性が家庭責任を負い、景気の調整弁として扱われてきた。
1960年代のウーマンパワー政策は中卒の低賃金労働力の不足を補った。1970年初頭にオイル・ショック等による不況で、主婦パートが激増した。 1985年に労働者派遣法が成立。規制緩和によって派遣社員が増大の一途をたどり、若年女性層も非正規化されることとなった。
そして近年ではパートにも成果主義の導入による労働強化と選別活用が進んでいる。正社員は能力主義の名のもとに家庭責任の軽重、体力差も成果扱いされることで差別を受けている。個人差を克服できる条件に恵まれた少数の「勝ち組」と、多数の「負け組」との女女間格差が拡大し、女性労働の二極化を促進している。総務省の労働力調査によれば、労働力率は半世紀の間50%前後で変わっていない。賃金格差や女性の管理職等への昇進も遅々として進まない。
一方労働運動の歴史を振り返ると、企業内労組は男性正社員が対象であり、女性労働者はかやの外に置かれていた。近年に至っても、女性や非正規雇用の問題に目を向けていない企業組合は依然多い。その中で女性労働者の差別是正を求める裁判闘争が行われ、財界はあからさまな差別がやりにくくなった。そこで、財界は「性別を問わない」新たな男女差別の手法への志向をさらに強めた。
昨年「格差社会」という言葉が話題になり定着した感がある。八代尚宏氏は、正社員中心の労働法制を改め、有期雇用や派遣労働を「多様な働き方」として自由化することで、男女に関わらず、能力に応じた賃金を得られると述べている。元々弱い立場だった女性労働者に加え、日本型経営が崩れて男性労働者も雇用が不安定になり、ホワイトカラー・イグゼンプションで低賃金で長時間労働を強いられる危険が出てきた。
内閣府の調査によれば、「女性に子供ができても働き続けて欲しい」と思う男性が過去最高になった。一方、「子供を持つ必要はない」に反対した男性は 10%近くの減だという。労働法制が変わり、表面上平等になっても、企業が長時間労働のできる男性を引き続き重用していく構造に変わりはないだろう。
時代によって手を変え品を変えて女性が差別構造におかれている状況は残されている。「労働ビッグバン」で先人が築いた女性労働の歴史が後退せぬよう将来を見据えていきたい。そして本当の意味で自立できるだけの経済力を持った女性が増えることを望んでいる。
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