まず始めに退職金は賃金と言えるのか?という点を明らかにしなければならない。
労働協約・就業規則・労働契約などで支給基準が定められていて、使用者(会社)に支払い義務のあるものは賃金と認められています。ただし退職金の支給基準が使用者の裁量に委ねられた恩恵的給与の場合は賃金とは言えない。
退職金は、一方では算定基礎賃金に勤続年数別の支給率を乗じて算定されることから賃金の後払い的性格を有するとされている。しかし他方では自己都合退職の方が会社都合退職より支給額が少なかったり、懲戒処分で減額ないし不支給になる場合もあったり、功労報償的性格も有していると考えられる。
つまり退職金とは賃金の後払いと報償金が合わさったものなのである。
この退職金を請求する権利があるかどうかは、就業規則や労働協約や労働契約などの根拠規定が必要である。この場合他労組の締結した退職金協定は根拠とはならないので注意して下さい。またこうした根拠規定がない場合でも、慣行がある場合や従業員代表との間で合意がある場合などにより支給金額の算定が可能な場合には労働契約の内容になっているといえる。
退職金の支払い時期は就業規則に定めがある場合は、それによる。
支払い時期の定めがない場合は請求があった時から7日以内に支払わなければならない。これを過ぎると遅延損害金が発生する。その利率は営利企業の場合は年6%である。退職金の支払請求権の時効は5年間である。
退職金の相談で多いのは退職が近付いてから口実を作り、懲戒処分や配転によって降格し、その結果退職金が数百万円以上減額されたというものです。
懲戒処分については退職金規定に懲戒解雇になった場合は退職金を支給しない、あるいは50%に減額するとなっていても、その処分に当てはまるかどうかが重要となる。
また定年直前に会社都合の配転で一方的な降格・減給は違法であり、この結果退職金が減額される場合は、減額分を請求すべきである。こうした退職金の減額は仕事上のミスを口実におこなわれるので泣き寝入りしがちであるが、中には計画的な退職金減額工作と見られる例もあるので注意が必要である。
退職金についてはほとんどの会社が自己都合退職の場合の支給額が減少するようになっている。したがって配転や降格などで退職に追い込みながら、本人に退職届を書かせて、自己都合退職にして退職金を減額する会社も多いのである。
この場合の問題点は、何を持って自己都合退職と会社都合退職を区別するかで、これについては退職に至る具体的事情を結合的に判断して決めることになる。
労働者が勤務を継続することに障害があったか否か、その障害が使用者、労働者いずれの支配領域内で起きた事情によるものか?
労働者の自由な判断を困難にする事情が使用者側に認められるか、といった点を考慮して判断することになる。つまり大幅な賃下げや通勤不能な場所への配転などで、経営上の理由による労働契約の本質的な変更により退職に至った場合には退職金について会社都合による解雇と同様な扱いを求めるべきである。したがって退職金の減額に対しては黙認せず支払いを要求すべきである。
退職金制度は近年企業年金制度への転換もおこなわれており、中途退職などの場合の退職金がわかりにくいものになりつつあるので注意が必要である。
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