菅首相が消費税10%の論議を呼びかけたことで回復していた民主党の支持率は急降下した。これでは鳩山・小沢辞任で回復していた支持率を菅がつぶしたようなものである。
このため参院選の結果は民主党が参院で過半数を失い、ねじれ国会となった。マスコミの敗因分析を見ていると「消費税が否定されたものではない」との主張が展開されている。しかし民主の支持率は鳩山・小沢辞任時には60%以上に回復していたのだから、民主党の「4年間は、消費税は上げない」との先の総選挙の公約から見て、国民が菅を「ウソつき」と言うのは当然なのである。
菅は自民党が消費税10%への増税をマニフェストで主張していたので、これに民主党の主張をそろえれば、消費税増税については自民と民主の共犯関係になり、批判は出ないと考えたのである。恐らく菅の後ろに財務官僚がいるのであろう。
菅首相は、その後民主党の看板であった「政治主導」の司令塔である「国家戦略室」を局にする方針を捨て、位置付けを首相の知恵袋的なものへと転換した。
予算のムダをなくする鳩山・小沢路線からの脱却を画策した陰謀的政変で生まれたのが菅政権であり、その本質は消費税増税路線なのである。これは前政権の反官僚的政策からの転換であり、アメリカの意思の反映でもある。
IMF(国際通貨基金)が7月14日に日本に対する年次審査で、来年度から消費税率を引き上げるべきだと提言したことと合致している。
消費税率を来年にも10%に上げるとどうなるだろうか?現在日本の国債発行残高は世界一だが同時に日本は世界一の債権国である。日本の国債は95%が国内で消化されている。したがって円はドルやユーロより安全と見られて、世界の投資家が円を買っている。このため現在円高(1ドル86円)となって、日本の輸出産業の収益悪化が心配されている。こうした状況の下で日本が来年にもIMFの勧めで消費税率を10%とすると、円高は一層急速に進み、日本の輸出産業は大打撃を受けることになる。それだけではなく消費税率アップは市場を縮小させるので、日本の経済は一転して不況となるであろう。
アメリカや官僚やマスコミが、日本経済が大打撃を受けるようなことを、なぜ進めようとしているのかを、見なければならない。
菅首相が官僚に屈服し、民主党を裏切ったことは間違いないであろう。アメリカは鳩山・小沢路線を放置すれば、日本の対米依存が減少し、日本経済が回復し対米自立するのを恐れ、菅を起用し、脱小沢政権に取って換えたのである。
鳩山・小沢おろしは、アメリカと官僚とマスコミの結託による陰謀的政変なのである。これは従属国に特有の政変と言うべきだ。
ギリシャの国家的金融危機は、アメリカの投資会社がギリシャ国債を売りあびせて引き起し、EUのユーロはこれで暴落した。同様に、アメリカは日本経済を破綻に追い込み、アメリカの世界覇権を守ろうとしているのである。
アメリカと並ぶ経済国であるのがEUと日本を中心とする北東アジアである。アメリカは自分達をこれらの経済圏が追い越すことは絶対に許さないのである。
消費税増税は、不況と円高を招かないタイミングでやらないと日本経済は大打撃を受けるであろう。
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