最近賃金の未払い、あるいは賃金の遅配、手当の一方的削除、賃下げなどの相談が急増しています。
残業代を払わない会社、有休を取るのが気にくわないと手当を一方的に削除したり、仕事のミスがあったと主張して給料と損害額を相殺する会社、更には処分を口実に賃下げをする例が増えています。
そこでもう一度賃金支払いの法律上の原則を確認しておきます。
(1) 通貨支払いの原則商品や自社株での支払いは無効です。
(2) 直接払いの原則代理人や親などへの支払いの禁止。
(3) 全額払いの原則使用者はミスがあったとして損害賠償を口実に賃金と相殺することは許されません。
(4) 毎月1回以上、定期日払いの原則賃金を意識的に遅配とし、退職強要の手段とすることは違法です。
賃金未払いの対応策について<証拠を確保する> 賃金未払いに対する対処で重要なのは、裏付けとなる資料、タイムカードのコピー、業務記録、給与明細、給与規定等を確保した上で請求することです。この請求時のやり取りを記録(録音)することも重要。
<未払い賃金額を算定する> 賃金の消滅時効期間は2年間です(退職手当は5年間)。従って残業代は2年間分しか請求できません。
遅延損害金の利率は6%です(商事法定利率)、退職金の場合は14.6%です。
裁判所に未払い賃金の請求の提訴をする時は、未払い額と同額の付加金を合計した金額を請求できます(労基法114条、37条)。
<労働基準監督署の利用> 賃金の未払いは労基法違反ですので労基法120条1号の罰則が適用されます。
労基署に申告しますと、労基署が調査し、会社に賃金の支払いを勧告します。これで支払われる場合もありますが、会社が支払わない時は、労組の団交、もしくは裁判所を利用することになります。
<労組の団体交渉での解決> 裁判所を利用する前に労働組合として内容証明で未払い賃金を請求します(内容証明郵便は裁判の証拠になります)。それでも支払わない場合は、団体交渉の申し入れをおこないます。交渉で解決できない場合は裁判所を利用することになります。
<裁判所の利用> 未払い賃金の請求額が60万円以下の場合は小額訴訟を利用し、それ以上の場合はユニオンの指導で本人訴訟の裁判を闘うことになります。
未払い賃金の訴訟の場合、裁判所が強引に和解を求めてくることがほとんどであると思ってください。
裁判所で和解する場合には和解文書に会社の不履行時の遅延損害金を定めておくよう求めてください。経営者の中には労働者があきらめることを狙って、とことん賃金を払わない愚劣な人間が多いので遅延損害金の定めは必要です。
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なお、最近は、残業代を払わずに役職手当や営業手当でごまかす経営者も増えています。この場合、その手当額を上回る残業代は請求することはできますから、毎日の残業時間を手帳に記録しておくことが重要です。
残業代を支払う必要のない労基法上の管理・監督者とは部長以上と思ってください。
人事権もない労働者に店長・マネージャーなる肩書きを付けて管理職だから残業代は払わないという違法行為を行う企業が多いのです。
賃金をわざと遅配して、自己退職をうながす手口もあります。
遅配に対しては内容証明郵便で理由を問いただし、即時支払いを求め、定期日払いを守るよう要求します。次に内容証明と給与明細と印鑑を持って労基署に行き、支払いを指導してもらうようにします。
なお有休を取得したこと、サービス残業を拒否したことをもって賃下げ、降格をおこなう事は違法です。
有休の取得を賃金や一時金を減額することも無効です。つまり労働法上の権利を行使した労働者に対する賃金上の不利益扱いは許されないということです。
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