最近は入社に当たって「私が会社に損害を与えた場合損害を賠償いたします」という念書を署名・押印させる会社が増えてきました。とくに営業職の社員はほとんどの人が念書を取られています。
新世紀ユニオンに最近次のような内容の相談がありました。
(1)営業の仕事で、取引先会社から手形による掛売りを求められ、それに応じた結果その手形が不渡りとなり、総額3800万円が回収できなくなりました。会社は、相手の会社は倒産していないのに、販売した営業マンに損害賠償を求め、200万円を支払わされ、残金を払うよう求められ、払わないと懲戒解雇すると言われている、というものです。
(2)以前仕事のミスで出版した名簿の電話番号が違うという理由で、名簿の再発行の費用40万円を会社から支払えと言われているという女性労働者の相談もありました。労働者に対する仕事上のミスを理由とする損害賠償が広くおこなわれるようになっているので注意してください。つまり、労働者が仕事上のミスを理由とする会社の損害賠償請求に対する正しい法律的知識をもつことが重要になっているのです。
一般的には労働者が仕事上のミスで会社に損害を与えたとしても賠償義務は発生しません。
例えば(1)の損害賠償は筋違いです。債権・債務関係は掛売りをした会社と、手形を発行した会社の間にあり、相手の会社が倒産していないのですから営業マンに損害賠償を全額求め、払わないと懲戒解雇するというのは違法です。
次に(3)の問題では、出版社内の校正ミスに対するチェック体制・管理体制の問題であり、これも労働者に損害賠償の責任はありません。
しかし、仕事上のミスが意図的であったり、労働者側に重大な過失がある場合、賠償義務が発生する場合があります。しかしこの場合でも労働者の収入などの諸事情を考慮して損害金額の一部を支払うことになります。
それでは会社から、ミスを理由に損害賠償を求められた場合、どう対応すればいいのでしょうか! まずミスの内容と損害額を具体的に聞きだすこと、賠償には絶対に応じないこと、給料との相殺(天引き)にも同意してはいけません。
もし、ミスが事実であっても、会社の労働者に対する教育・訓練の度合いや労働条件の劣悪さやチェック体制が問題であり、ミスはその結果であることを主張してください。また損害賠償しなければ解雇するとか、自己退職させるとかいうのも、ミスを口実とした違法な退職強要・もしくは解雇といえるものであり、断固拒否してください。
以上の会社とのやり取りは全て記録(ICレコーダーで隠し録り)するようにしてください。
なお会社が損害賠償についての公正証書に印鑑を押すように求めてきても絶対に応じてはいけません。「印鑑を押さないと会社に訴えられる、そうなると背任行為で刑務所に入らないといけななくなる」などのたぐいの“ウソ”にだまされないようにしてください。
仕事上のミスで背任行為になるはずがありません。
仕事上のミスを口実に経営者が詐欺まがいの“ウソ”で労働者から金を巻き上げた上で退職させる新手の“リストラ”が増えているのです。
会社から、なれない仕事を押し付けられた時は要注意です。充分な訓練・教育期間を要求してください。またあらかじめICレコーダーを用意して証拠を残すようにしてください。
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