アメリカの直面する経済危機の深刻さは、第二次世界大戦後最大のものである。アメリカ金融資本の不良債権は千数百兆円といわれており、巨額の公的資金の注入とイラク・アフガンの戦費によって双子の赤字は膨れ上がっている。
アメリカは大恐慌以来の国民に我慢を強いる経済的局面を迎えており、それゆえの史上初の黒人大統領なのである。
なぜアメリカのヘッジファンドの経営者達が、こぞってオバマ支持に回り、巨額の政治資金をつぎ込んだのか、それはベトナム戦争後にカーターを必要としたことと同じである。アメリカという国家は産軍複合体の経済であり、戦争を生業(なりわい)としている国家にとって、財政危機、通貨危機、金融危機は、いわば帝国主義の息継ぎのための和平を必要とする時なのである。つまりアメリカの経済的困難が「チェンジ」を掲げ、経済建て直し・国民融和・協調のオバマを必要としたという事なのである。
オバマ新政権にとって気がかりなのは、米国民の期待が過剰に高まり過ぎていることである。過剰な期待は過大な失望に変わる可能性がある。とりわけ経済的困難の長期化が予想される中ではなおさらである。
オバマの大統領就任演説の特徴は、「今回の危機は、市場は注意深く見ていないと制御不能になる恐れがあることを、私たちに思い起こさせた。」として市場経済への監視の必要性を語っている。(注・規制強化ではない!)またオバマは米国民に対し「新たな責任の時代だ」として国民に対し責務を「喜んで引き受けるべきものだ」と求めている。
環境問題では、「影響を考えずに世界の資源を消費することも許されない」と語っている。また労働者に対して「友人が仕事を失うのを傍観するよりは、自分の就業時間を削減する労働者の無私の心」を求めている。これはワークシェアリングの勧めである。
オバマ新大統領は、イスラム世界に対しては「共通の利益と相互の尊敬に基づき、新たな道を模索する」と語っている。したがって彼のアフガンへの兵力増強は、和平交渉の布石である可能性が強い。
重要な事は、アメリカの金融危機が、これから深刻化することである。アメリカが「グリーン・ニューディール」の政策で危機脱出を計る上で、日本と中国にドルの提供を要求し、それが100兆円(1.1兆ドル)規模で実現するかどうかがカギとなる。つまりアメリカの借金を日本と中国が支払うことが求められることになるであろう。
日本の国民は、オバマ時代の対米従属がいかに高くつくかを知ることになる。
ヒラリー・クリントン国務長官は、アメリカ外交が軍事だけではなく、文化などのソフトパワーを含む「スマートパワー」の必要性を強調している。つまりアメリカは一国行動主義から多極化の中での協調外交に転換することになる。日本に対する貢献要求が強まるであろう。
注目すべき点は、不況の長期化が予想される中で、アメリカ国民のオバマへの強い期待が、失望に変わる可能性が高いことである。
オバマが耳障りのいい演説でいつまでアメリカ国民に我慢を強いることができるかである。またオバマが中東で和平を達成できるのか?それと関連して軍事予算の削減に手を付けられるのか?注目すべき点である。
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