最近会社に一方的に賃金を切り下げられた、という相談が増えています。労働条件は労働者と使用者の合意に基づいて決定されるのが原則(労働契約法3条1項)であり、したがって賃金の切り下げも、使用者が一方的にすることはできません。
つまり賃下げには労働者の同意が必要であり、同意のない一方的賃金切り下げは無効です。このような場合には労働者は今まで通りの賃金額での支給を求めることができます。
労働条件の変更は、変更の内容が合理的であることが必要です。使用者が提示する賃金切り下げについて労働者の理解促進措置を十分に取ることが必要です。この場合の話し合いは労使対等な立場でなされなければなりません。(労働契約法1条、3条1項)
労働者が上司から賃金切り下げの同意を迫られた場合でも同意する義務はありません。とくに経営が赤字であるとかの説明がありますが、この場合の経営責任がどう明らかになっているか?会社の役員や役職者の手当が削減もされていないのに労働者の賃金を10%~20%も削減提案する例もあります。
まず経営責任を明確にするよう求めて下さい。
もし会社から賃金の切り下げを提示された場合は、すぐ回答せず「大事な問題であるので持ち帰って考えます」と答え、時間を稼いでユニオンの指導部と相談してから対応するようにして下さい。
次に労働契約法4条1項は「使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について労働者の理解を深めるようにするものとする」と定めていますので、賃下げがなぜ必要なのか、経営状態について詳しく説明を求めて下さい。
もし賃下げを受け入れる場合は経営状態が好転すれば元の賃金に戻す事を書面で確認しておくべきです。賃下げに同意するように使用者側の迫り方が強迫に当たる場合もありますから、交渉時のやりとりはメモと録音をするようにして下さい。
次に会社(使用者)が「賃下げは解雇回避措置であり、賃下げに同意しないと解雇する」と言ってきた時どうするか?ですが、賃下げか解雇か、という二者択一による選択に応じなければならない義務はありません。しかし雇用を守るための譲歩も考慮しなければなりません。
まとめると、賃下げの経営上の必要性、金額が多すぎないか、経営責任は明確になっているか、退職する場合の代償はいくらか、整理解雇を考えているのか、賃下げの合理性はあるのか、他の解雇回避の努力をしたのか、などを検討して下さい。
賃金の切り下げの大原則は、労働条件の不利益変更には労働者の同意がいるという事です。したがって同意を与えるまでに確認すべき事を書面にするよう求めることが重要です。経営状態が好転すれば元の賃金に回復する用意があるのか書面ではっきりさせておくことが重要なのです。
なお賃金の一律切り下げなどの機会は、職場に労働組合(ユニオンの支部)を結成する好機だという事をはっきりさせ、大衆と対応策を討議し、支部結成を成し遂げる機会とすることが重要です。
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