最近の労働相談で、会社に損害を与えたとして損害賠償を請求されたり、解雇されたりする例が増えています。なかには損害を理由に給料や退職金から一方的に損害賠償金を差し引く例もあります。
労働者の機械の操作ミスや、自動車運転中の事故は日常的に発生しており、仕事上のミスは人間である限り避けられないものです。
問題は労働者の仕事上のミスにより生じた損害の全てについて、労働者が賠償しないといけないかと言うことです。この点では基本的に労働者が労働のなかで通常求められる注意義務を尽くしている場合には損害賠償義務は発生しないことを知っておいてください。
またささいな不注意から損害が発生しても、そのミスが一定の確率で発生する性質のものであれば損害賠償義務は発生しません。
ただし労働者に重大な過失や故意がある場合には、損害賠償義務を負うことになります。この場合でも労働者が発生した損害の全てを負担しなければならないという事ではありません。
労働者の過失の割合や管理上の責任があるなどによって損害の分担はちがってきます。
仕事上のミスに対し、すでに懲戒処分が課せられている場合、その上に損害賠償まで課すことは権利の濫用となる場合があります。
仮に労働者の側に重大な過失があり、損害賠償請求権が会社にあったとしても、一方的に賃金(給与)から差し引くのは違法です。(労基法24条、17条)つまり賃金から天引きすることはできません。
ただし労働者が賃金からの天引きについて同意した場合は有効とされますので損害賠償の天引きについては断固拒否して下さい。
労働者の過失について言えば、そのミスが労働過程に内在する性質のものであるのか、それとも会社が労働者の教育訓練をきちんとやっていなかったためか、あるいは労働条件が劣悪であったためか、さらにはミスを防止する管理上の措置がとられていたかなどで賠償義務の有無がちがってきます。つまりはケースバイケースだということです。
これまでの相談の中には印刷会社が、お客の電話番号が間違っていたことを口実に損害賠償を求めた例もありました。この場合は会社が校正担当者を置いて二重のチェック体制を取れば防止できたのであり、管理上のミスと言えるものでした。
また会社が賠償を求めないかわりに退職せよと主張したり、損害賠償として月々給与から一定額を天引きする、それが支払い終わるまで退職させないと主張する場合もあります。このような場合でも不当な賠償請求として拒否して下さい。
仕事上のミスを理由とする損害賠償はそれぞれのケースで取るべき対応がちがってきますので、不明なことがあれば新世紀ユニオンに相談して下さい。
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