労働相談を受けていると、相談者が会社の意図を早のみこみしていることが意外に多いことに気がつきます。
例えば、小売業のフルパートで働きながら転職のため「面接で休む」ことを繰り返していた人が、会社から「これ以上求職活動を続けるというなら仕事からはずす、年内にどうするか返事しろ」と言われて「この解雇理由は正当ですか?」と聞いてくるのです。この人の場合は解雇ではなく会社が働き続ける意志があるかどうか打診しているということです。
また、社長から「辞めたらどうか」「辞めてくれ」と言われて「解雇された」と思いこんで相談してくる人も少なくありません。多くの場合は退職勧奨、もしくは雇用契約の合意解約の申し入れです。
この場合は応じる義務はなく「辞める気はありません」と答えればよいのです。
退職勧奨が正当性を認められるのは
(1)雇用調整の必要性が認められること
(2)組合および本人と十分意見交換と説明すること
(3)勧奨対象者を決定するための合理的基準を設けること
(4)その基準を公平に提供して人選をすること
(5)勧奨が節度を保っていること
(6)退職を拒否したことを持って不利益な取り扱いをしないこと
(7)女性であることのみを理由にした差別的取り扱いをしないこと
などの要件を満たしている必要があります。
この要件を満たしていない時、あるいは「辞めません」と言っているのに何回も繰り返す場合は「退職強要」となります。
解雇には、懲戒解雇と普通解雇があります。懲戒解雇とは就業規則に列挙されている懲戒自由に基づく解雇であり、普通解雇とは
(1)整理解雇
(2)病弱や勤務成績不良・労働能力が著しく劣るなど「本人に理由がある」とする解雇
の二つがあります。
解雇の場合は解雇理由を記入した解雇通知書が手渡されます。解雇通知書が渡されない口頭での「解雇」あるいは「辞めろ」という通告は「退職勧奨」もしくは「合意解約の申し入れ」であると思ってください。
勤続の意思打診なのか、退職勧奨なのか、退職強要なのか、それとも解雇なのかを冷静に検討する必要があるのです。
この意味を取り違えると対応を間違えることになります。
退職勧奨なのに「解雇を撤回せよ」という内容証明を送っても意味をなさないのです。
退職勧奨とは、雇用調整のための勧奨行為に過ぎず、法的な拘束力も特別の法的な効果も持たない単なる行為です。しかしこれが執拗に繰り返されると、使用者と労働者の力関係から、労働者は将来への絶望感と大きな精神的苦痛を味わうことになります。
会社の方はこの精神的苦痛で退職に追い込もうとさらに繰り返すことになります。そうなるとこれは「退職強要」と言ってもいいのです。
つまり「退職勧奨」とは、労働者に雇い主が自発的な退職意志の形成を促す説得行為に過ぎず、その行為が社会通念上適当なものでなければなりません。
度を超した退職勧奨で本人が精神的な病気になっているにもかかわらず、本人に経営上の必要性の説明もせず退職強要を続けることは社会通念上から見て不当・違法と言えるのです。
企業が退職強要を繰り返すのは、労働者を自己退職に追い込めば退職金も少なくてすみ、解雇予告手当を支給しなくてよいので、安上がりに人員削減がやれるからです。
解雇に関する限り、素人では適切な対応は難しく、問題をこじらせる例が少なくありません。
新世紀ユニオンに早い段階で相談してくだされば適切な対応がとれ、雇用を守る確率は高くなります。
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