退職金制度は終身雇用とセットになった制度である。
退職金の支給や支給基準が、労働協約や就業規則や労働契約で定められている場合は「賃金の一部後払い」としての性格を持っており、使用者には支払い義務があり、労働者には退職にあたり退職金を請求する権利がある。
最近では松下のように、退職金制度を選択するかそれとも退職金をやめ、その分を賃金に上乗せする制度を選択させる企業も出ている。
一般的に退職金は自己都合退職には低く、会社都合の場合支給額が多くなる。また懲戒解雇の場合は退職金が減額もしくは不支給になる場合が多い、つまり退職金は「賃金の一部後払い」としての性格とともに、功労への報奨としての性格も合わせて持っていることを知っておく必要がある。
就業規則などに退職金の定めがない場合でも、慣行や個別の合意として退職金が支給されその支給額も明確に定まっている場合は、労働契約の内容になっていると言え退職金請求権がある。
退職金は、労働者(もしくはその遺族)の請求があってから7日以内(労基法23条1項)に支払わなければならない。ただし就業規則で支払い時期が定められている時は、その定めによる。
退職金の支払いが遅れると、遅延損害金が発生する。営利企業の場合年6%、使用者が営利企業や「商人」でない場合は5%の法定利率となる。
退職金支払請求権の消滅時効期間は5年間(労基法115条)である。
ちなみに賃金支払請求権の時効は2年である 退職金の不支給・減額は、退職金規定や就業規則に明記しており、かつその内容に当てはまる場合のみ行うことができる。しかしこの場合でもそれまでの勤続の功を消し去るほどの、労働者の側に著しく信義に反する行為があった場合に限られる。
安上がりに人員削減を進めようとして、嫌がらせやいじめで自己都合退職に追い込む例が多く見受けられる。例えば遠隔地に配転を命令して自己退職に追い込む例がある(これら退職強要との闘い方については、当ユニオンのリストラ対処法を参照) こうして退職する場合の退職金について言えば、自己都合か会社都合かの判断基準が重要となる。
例えば賃金の切り下げや遠隔地への配転でやむなく退職させられた場合は、使用者(会社)側の都合による解雇と判断すべきである。なぜなら会社は、労働契約上の付随義務として労働者の職業生活・職業能力に対する配慮義務があるにもかかわらず、遠隔地への配転命令によって退職に到ったからである。
したがって、このような経営上の理由による労働契約の本質的変更により、やむなく退職に到った場合は会社都合の退職と同様として退職金の100%支給を請求すべきである。
企業が正社員を削減し、パートや派遣社員等の不安定雇用への切り替えを進めているのは、退職金や各種社会保険に要するコストを削減するためである。
今日では退職金制度は終身雇用制度と同様「労働力の流動化」とともに消え去る制度となりつつある。
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