今年の5月26日に厚生労働省の発表した2008年の重大労働災害の発生件数が281件だった。重大労災とは一度に3人以上が死傷したことである。
昨年は不況であったにもかかわらず過去10年間で3番目の高水準だった。重大労災が高止まりしているのが特徴である。08年の重大労災での死傷者は1678人(うち死亡は60人)であった。
業種別に見ると建設業の93件、製造業の58件である。労災で1年間に一千数百人も死に、12万人以上が負傷する。しかも、この数字すらも労災隠しで正確ではない現実がある。
派遣労働者の死傷者数は5631人(うち死亡は31人)である。
労災事故が減少しないのはなぜか?それは以下の理由が考えられる。
(1)能力主義やリストラで事故防止のノウハウが継承されなくなった。
(2)原価低減のため安全・保安要員が削減されている。
(3)労組が家畜化した結果、職場の点検力が低下している。
(4)生産性を重視するための安全投資も抑制されている。
(5)減員、労働強化、賃下げで労働意欲が低下している。
(6)正社員、派遣、請負、パートや外国人が混在し、安全・保安面の意思疎通ができにくくなっている。
(7)効率重視・ノルマが厳しくなった分安全が軽視され無理な作業が増えている。
全体として利益第一の経営の行きすぎで安全面がおろそかにされている。これらを我々は野蛮な資本主義と呼んでいる。
また以前はほとんどの労働者が正社員であったが、今は非正規労働者が増加し、外国人までいる。そのため作業の意見や指示がスムーズに伝わらない中で安全教育も軽視されている。睡眠時間も十分にとれないほどの長時間労働が行われている。
人が一人殺すと殺人犯だが経営者が労災で何人殺そうと刑事罰が問われない。鉄道事故で107人を殺しても、経営者が逮捕されることは無いのである。つまり責任が問われないのだから重大事故が減少するはずがないのである。
会社の「○万時間無事故」の裏で労災であるのに会社の指示で健康保険で病院に行くよう指示される現実があるのだ。
企業が労働者に無断で加入する団体生命保険で労災が発生すれば企業が生命保険金を手に入れることも、労災防止意識が低下する原因といえる。
問題にすべきは重大労災が発生しても工場の操業を停止させられない労働組合の無力にある。企業内組合が家畜のように飼いならされたために、安全のために経営陣に苦言を呈することもできなくなっていることを指摘しなければならない。
ベテランの現場労働者には労災事故を予見する能力がある。だがその熟練労働者が、給与が高いという理由でリストラの対象となった。また対象となっていない場合でも熟練労働者の声が経営まで届かない現実があるのだ。
重大労働災害発生の高止まり傾向が示しているのは厚労省の無策の結果である。労災事故の隠蔽が広がっているのは厚労省の責任と言うべきだ。野蛮な資本主義を容認し、規制緩和を進めた結果利益第一・安全軽視の経営がはびこっているのである。
重大労災を発生させた経営者に刑事罰を問うべきである。それによって経営者に労災に対する責任の重大性を認識させるべきである。
重大労災事故高止まりの責任は挙げて政治にあると言える。働く者の安全を経営者も政治も重視するように訴えたい。
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