金属労協(IMF・JC)が2011年春闘でベースアップを要求せず、賃金カーブ維持分(定昇相当)を確保する方針を決定したことで自動車総連が賃上げの統一要求を掲げないことを決定し、電機の大手労組も賃金改善要求を見送ることを決め、NTT労組もベア要求を見送る方針を決めた。
不況になるたびに既成労組は賃上げを自粛してきたが、その結果日本の現金給与総額は下がり続け、物価も下落したが、雇用は改善しなかったのである。
日本はこうして、デフレ下で「失われた20年」と言われる経済の縮小サイクルを繰り返すこととなった。
日本経済の最終消費の70%が個人消費であるが、この間の賃下げ首切りで個人消費の減少が続き、この消費不況が日本経済の縮小再生産の原因なのである。
国際労働機関(ILO)は昨年末発表した報告書で「企業の賃金抑制競争」が所得の低下による消費の落ち込みを通じて景気全体の悪化を招くことを「合成の誤謬(ごびゅう)」と説明して、日本の例を紹介している。ILOは現在先進国を中心に広がっている賃金抑制の動きに警鐘を鳴らしているのである。
財界が企業内労組幹部を買収によって飼い馴らしたため、欧米以上に賃上げ抑制が行き過ぎて、結果日本は「失われた20年」に突入したのである。
つまり「労組の家畜化」が個々の企業の目先の利益追求となって行き過ぎると、国民経済にとっては重大な打撃になるということである。
何事も行き過ぎてはいけないのであり、それはリストラが個々の企業の利益の向上にはプラスに働いても、国民経済全体から見れば就業労働者数の減少となり、したがって国全体の給与総額のマイナスとなり、結果消費不況を招くことになるのである。
つまり賃金の抑制や賃下げ・消費減少・不況・リストラ・一層の個人消費の減少というサイクルを繰り返すことになる。
終戦直後にGHQの「労働改革」で日本の労働組合が合法化され、その後の賃金の向上が、日本経済の復興・高度成長を生み出したように、一国の賃金政策は、個々の企業の利益というレベルではなく国民経済を発展させる視点で行うべきなのである。
言い換えれば日本経団連の強欲な拝金思想が、企業の目先の賃上げ抑制となって、現在の国民経済の縮小再生産(デフレ)を生み出しているのである。
こうした状況の下では、例えば最低賃金の1時間1200円の法制化と春闘での大幅賃上げが、国民経済のカンフル剤となることを知るべきだ。
つまり現在の日本経済の閉塞状態は、旧ソ連崩壊で革命の心配がなくなり、自由化・民営化・規制緩和の野蛮な搾取化を進め、このことが経営者達の強欲に拍車をかけ、賃上げ抑制・賃下げ・首切りによる人件費総額の切り下げで、目先の利益追求を繰り返すこととなった。
つまり今日の日本経済の「死のサイクル」は、経営者・財界の強欲がもたらした自滅行為なのである。
日本の財界・経営者達は、国民経済レベルでの賃金政策が必要であることを思い知るべきである。
財界の労務対策としての「日経連」を解散したツケが回ってきているのである。
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