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出産・育児に関する労働者の権利

 リーマンショック後の不況の中で「派遣切り」ということばが新聞紙上をにぎわしましたが、「育休切り」「産休切り」といういやなことばがネット検索するといくらでもヒットします。それだけたくさんのトラブル、相談などが存在するということです。
 政府は少子高齢化への対応策としてあれこれの法的な手当てを進めていますが、残念ながらまだまだ労働現場ではこれらの権利を労働者が主張すると簡単に解雇されたり、いじめにあったりする不利益取り扱いが後を絶ちません。
 これらの法律には罰則規定がないことが多いなど法的整備が不十分なことが多いことに加え、特に中小企業の経営者を中心に子育てなどで会社を休むことが多い女性労働者の採用を「経営上のリスク」と考えてしまうような傾向もこうした状況を生み出しているといえます。
 大企業ではキャリアを積んだ女性が出産・育児によって退社してしまわないような手当てをしているところが増えてきており、育児休業を取得する女性の割合は全体で90%を超えてきているのですが(男性の取得率は1%強、)育児休業の規定の整備がなされている事業所の割合は66.4%に過ぎません。
 中小企業ではまだまだ規定そのものが存在していない状況もこの数字から見えてきています。(数字はいずれも2008年度雇用均等基本調査)
 そうなると育児休業の取り扱いの根拠は法律そのものとなり、事業主のさじ加減で「育休切り」「産休切り」などが現実のものとなってしまう可能性があるといえます。
 これらのことを踏まえ、出産・育児をめぐる女性労働者の保護規定を洗い出して検討を加えてみることにします。そのことでどのように権利を主張し、必要な休みを取りつつ働き続けることができるのかという上での問題点も見えてくるでしょう。
 まず、女性が妊娠してから出産、育児にいたる法的保護の概略を順を追って見てみることにします。
 女性の妊娠が判明した時、一番に保護されるのは過酷な労働についている女性です。坑内労働、危険有害労働、船内での労働が本人の意思にかかわらず禁止されます。船員の場合は直ちに出産手当金の支給が始まります。船員以外の労働者の出産手当金は出産予定日の42日前(多胎妊娠は98日)から出産日後56日までです。
 事業主は労働者の妊娠以後、産前産後にわたって医師や助産婦による保健指導、健康審査を受けるのに必要な時間をするための措置を講じなければなりません。
 また妊娠中の労働者が請求した場合は変形労働時間制を実施している場合も、1週間(原則40時間)、1日(8時間)の法定労働時間を超えて労働させてはなりません。また請求により時間外、休日、深夜労働につかせてはならず、他の軽易な業務に転換させなければならないという規定もあります。
 妊娠中、出産後1年を経過しない女性労働者の解雇は無効となっていますが、妊娠出産が理由でないことを事業主が証明するとこの規定の適用はないことになってしまいます。
 また、婚姻、妊娠、出産などを退職理由とする就業規則などは作成できないことになっており、そうした不利益取り扱いは禁止されています。しかしこの男女雇用機会均等法の無効規定にはそのこと自体への罰則規定はありません。
 産前産後休業期間及びその後30日間は天災事変などのやむをえない事情がない限り、事業主は労働者を解雇することができません。この規定には懲役を含む罰則規定があります。
 産前産後休業期間に仕事ができない労働者には健康保険から出産手当金が支給されます。出産には出産育児一時金が支給されます。市町村の行う国民健康保険の場合は出産手当金は支給されない場合がほとんどです。
 労働者は出産前の6週間(42日、多胎妊娠は14週間=98日)は休業を請求することができます。出産後の8週間は原則的には就業は禁止されますが、6週間経過後は本人が請求し、医師の認めた時は就労が可能となります。産後の労働時間などの制限規定は妊娠中と違い相対的なものが多くなってきます。
 産後休業終了後1歳までは事業者に申し出れば育児休業を取得することができます。一定の要件のもとでは1歳2カ月まで(パパ・ママ育休プラス)、また保育所が見つからない場合などの理由がある場合は1歳6カ月までの育児休業期間の延長が可能となる規定もあります。
 この育児休業中は雇用保険から育児休業給付金が休業前の賃金の最大50%(当分の間の暫定措置)まで支給されます。1カ月に10日を超えて働いた場合や賃金が休業前の8割を超える場合は支給されません。
 またこの育児休業中は最大3年間健康保険料や厚生年金保険料が免除されます。これらの保険料は育児休業終了後は新たに支払われることになる賃金(出産前より低くなることが多い)に基づいて徴収されることになりますが、厚生年金保険の標準報酬月額(のちに年金が支払われる際の計算の基礎となる金額)は3歳までは出産前の高い額のままで記録されることになります。
 育児休業期間後は小学校入学までの間、子供1人につき5労働日の看護休暇が取れる規定があり、育児休業や始業時刻変更、所定外労働時間の制限や短縮などを要求することができる等の措置を講じることなどを努力義務とする規定などが置かれています。したがって、社内規定としては最長小学校入学まで育児休業と同等の規定を置くことができることになります。
 次回からそれぞれの規定を少し詳しく見ていくことにします。
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