最近の労務管理の特徴は、いとも簡単に解雇することである。
上司のパワハラでうつ病になった労働者を、就業規則の休職期間内に解雇したり、一方で求人広告を出しながら「整理解雇」をしたり、一方的な人事に対し内容証明で質問すると怒って解雇したり、育児休暇中に解雇したり、仕事中のミスを口実に解雇したり、交通違反で免停になった事を口実に解雇したりする。
以前なら始末書や出勤停止にするような些細な事で企業が簡単に労働者を解雇するようになった。
大量失業の時代には需給バランスが崩れ経営側の力が強くなり、結果権力的経営が増えるのである。
そのため口実さえあれば解雇して、賃金の高い労働者を安上がり労働力と入れ替えをたくらむのである。また他の労働者への見せしめを目的としている解雇も増えている。
こうした違法解雇の背景には解雇がヤリ得となっていることがある。日本の労働裁判は「原状回復主義」であるため、敗訴で解雇が無効となっても、会社は未払い賃金を払えばよく、慰謝料まで取られることがないので、解雇がヤリ得となっていることも、違法解雇が多い原因である。
解雇になった労働者が裁判を闘おうとすると、たちまち飢餓に直面する。裁判中はアルバイトでしのぐか、雇用保険の仮給付でしのぐことになる。実際に蓄えがないので裁判を諦める労働者も少なくないのである。
解雇された労働者がいかに精神的、経済的苦痛に直面しようと、日本の労働裁判は慰謝料を認めない。勝ってもただ未払い賃金が支給されるだけなのだ。
つまり経営者は解雇権をいとも簡単に行使し、たとえ裁判に負けても賃金を払えばよく、労働者を苦しめられるのでヤリ得と考えているのだ。
かくして労働裁判が急増する結果となった。
日本の労働裁判は、せめて弁護士の着手金や成功報酬の額ぐらいは慰謝料を認めないと公平とは言えないのである。
経営者にとって解雇がヤリ得であるなら、これは事実上の解雇の自由化である。解雇事案が急増するのは当然なのである。
つまり経営者の違法解雇に裁判所はもっと厳しい判決を出すべきなのだ。
日本の労働裁判の「原状回復主義」を我々は支持できない、裁判所は違法な解雇をおこなった経営者に懲罰的慰謝料を支払わせるべきだ。そうしないと賃金が10万円台の労働者の場合は裁判を争っても未払い賃金から弁護士の着手金や成功報酬を払えばわずかしか残らないのである。つまり違法解雇の泣き寝入りが多い理由はこの点にあるのだ。
何もアメリカのように億の単位で慰謝料を出せと言うのではない。せめて未払い賃金と同額の慰謝料を認めるべきなのだ。
お金を盗んで見つかったら返金すれば許されるのか?許されないのである。同様に経営者の違法解雇に懲罰的慰謝料を科すのが当然というのが我々の主張である。
日本の裁判所の経営者への態度は寛大過ぎると言うべきだ。
民主社会であるなら違法行為がヤリ得となることを許してはいけないと思うのである。
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