問 私は〇〇機器販売を担当している課長です。機器販売の入札仕様書を、私の見落としから入札額を過少に見積した結果、赤字落札となり、会社に約50万円の損害を出しました。
このため上司から損失の全額50万円を分割払いで支払うよう求められています。実はその上司も以前に会社から損失の支払いを求められ応じています。私はミスで生じた損金を支払う義務があるのでしょうか?
答 最近仕事上のミスで会社に損害を与えたとして、損害賠償を要求された、といった相談が増えています。入社時に「会社に損害を与えた場合は賠償します」との誓約書に署名・押印させる事もやられています。しかしどんなにまじめに働いたとしても人間であるかぎり、仕事上のミスは避けられません。したがって仕事上のミスで会社に損害を与えても賠償義務は発生しません。
相談の内容では、職場の慣習として損金を個人に賠償させることが日常的におこなわれているようです。
人間であるかぎり“見落とし”や“錯誤”はさけられません。したがってミスを防止するための見積り作業のマニュアル作成や二重のチェック体制が必要となるのです。つまり、あなたの今回のミスは管理上の問題でもあります。
仕事上のミスの増加は一般的には能力主義・成果主義が導入され、その結果仕事上のノウハウが先輩から後輩に伝承されなくなっていることも原因のようです。
商売で損失や利益は日常的な問題であり、損失は労働者の負担というのは行過ぎです。
相談内容であれば、仕事上のミスは事実であること、しかも課長という管理職であり、管理上の問題の責任もあります。しかしだからと言って損金全額を本人に賠償させることは通常はありません。
このような「罰金」とも言える労働者賠償制度を国家権力でもない一企業が強要するのは間違っています。
ささいな不注意(軽過失)による損害発生は日常的に一定の確率で生れることはさけられず、使用者としても当然それを予見(推察)できるものであります。会社が労働者を使って利益を上げている以上、理屈の上では本来リスクは会社(使用者)が甘受すべきものです。
事業の請負でもないのに、損失をすべて労働者に賠償させるのであれば利益は会社が、リスクは労働者が総て負うことになり、損失が巨大になれば、労働者は賠償で生活ができなくなります。
しかし相談者の場合は課長であり、管理上の責任者でもあります。
ミスがあったことも事実であるのなら半額の賠償(役職手当の枠内での分割払い)で済ましてくれるよう上司と交渉して下さい。
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