最近労働相談で社長に一方的に賃下げされた、とか降格を通告され賃金が2万円下がった、等という相談が増えています。したがっていつ「明日は我が身」となるかわかりません。一方的賃下げに対する考え方を鮮明にしておく必要があります。
(1)労働条件変更の原則は、労働者と使用者(会社)の合意に基づき決定されなければなりません。(労働契約法3条1項)したがって労働者の同意なき賃金の不利益変更は無効です。つまり就業規則の変更によらない賃下げは労働者の同意が必要なのです。また同意をせまられても同意する義務はありません。
(2)労働条件の変更は、その内容が合理的であることが必要です。赤字を口実にしながら、特定の労働者だけ賃下げするのは合理的ではありません。また年棒制を就業規則で定めているのに年に2~3回も査定で賃下げをおこなうのは違法です。
(3)降格による賃下げの場合は、その理由が重要です。
正当な理由か違法な理由かを調べること。
(4)懲戒を理由とする賃下げの場合は就業規則にその懲戒理由が定められているか調べること。
処分の前例があるか、その処分が就業規則にのっとりおこなわれていたかが重要です。
(5)もし上司から賃下げを提案されたら「重要なので家族と相談する」「持ち帰ってよく考えたい」と答えて時間を稼ぎ、ユニオンに相談する。
戦略・戦術を決定した上でICレコーダーを準備し、上司に賃下げの必要性について説明を求める。(労働契約法4条1項は「使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について労働者の理解を深めるようにする」と書いてあるので説明を求める法的な根拠となる)
(6)説明を求めても納得がいかなければ同意できないと答えること。賃下げに配転が伴う場合は、その理由について説明を求めること。配転を拒否すると解雇にしてくるので態度を留保しつつ配転には応じることも検討すること、ただし賃下げについて認めないようにする。
(7)会社が賃下げに同意しないと解雇すると言う場合には、整理解雇の4要件にしたがって考えなければならないので、経営状態について詳しく説明を求めること、この場合の賃下げが全社員一律の賃下げなのか確認する。
特定の人物を退職に追い込む目的でする賃下げは違法であるので拒否する旨メールで通告し、また口頭の場合は録音する。
(8)会社が賃下げを強行してきた時にはユニオンの指導を受け、内容証明郵便で抗議するようにする。
賃下げを通告されたら、その賃下げの狙いを分析する必要がありますので上司にキチンと説明を求め、詳しく質問して下さい。
未払い賃金の時効は2年間なので当面は賃下げを抗議しておいて機会を見て審判や裁判で請求することも可能です。一方的賃下げには、納得していないことを表明しておけば当面は闘わなくてもいいです。しかし一方的賃下げを抗議しておかないと、日本では認めた事になりますから、納得していない証拠を残しておくようにして下さい。この場合の証拠は社内メールや内容証明で十分です。
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